ドラマのとびら

即興の劇や身体表現で学ぶ、教える、浮き沈みの日々とその後

韓国映画『パラサイト』と日本映画『万引き家族』

2020-02-11 08:44:49 | 芸術およびコミュニケーション


『パラサイト』がアカデミー賞作品賞! すばらしい!

受賞に先立って、観に行った。
カンヌで賞を取ったことや、『弁護人』『タクシー運転手 約束は身を越えて』のソン・ガンホ出演ということで、ぜひ映画館で見たいと思った。

おもしろかった!
すぐに思ったのは、ポン・ジュノ監督は是枝監督の『万引き家族』を見ているのではないかと。

『万引き家族』は深くしみじみと後に残る映画だった。
善悪とは何か。生きるとはどういうことか。
『万引き家族』では、亡くなったおばあさんを床下に埋めて年金を受け取ろうとする。
あの暖かく結ばれている家族が生きていくために、そういう選択をせざるを得なかったことに打ちのめされる。

『パラサイト』では、経済的下層階級の半地下家族が、貧しいながらも楽しく暮らしている。
一方で経済的に上流階級の山の手の家庭は、お互いに思いやりがないわけではないのに、家族の間に距離があり、冷えたものを感じさせる。
この二家族を対比することで、より大勢の人にこの映画が自分事に感じられたに違いない。

そしてこの二家族が出会うことで展開されるストーリーの面白さ。
さらにもう一家族が意外な形で絡み、予想外のところへストーリーが転がっていく。
いや、もう、これは面白いでしょう。
韓国映画の監督、脚本、役者、セット、美術、音楽その他の質の高さ。

韓国映画には暴力や血みどろがつきもののようで、正直私はそれを好きではない。
『万引き家族』のほうがはるかに深く考えさせられ、後に残る映画ではないかと思う。
けれど、世界中の人に見てもらうということを意識した時、どちらが受け入れやすいかは明白だ。

諸事情あって、映画館にぎりぎりに到着。
でも、客席はガラガラだった。
日本の映画界も興行収入が過去最高になったというが、主な映画は子ども向けの(もちろん大人が見てもおもしろいが)アニメ中心だ。
こういう映画がガラガラとは…!

『パラサイト』にも韓国ならでは事情もいろいろ出てくる。
その点でハッとしたのは「北朝鮮の核攻撃にたいする対策で、金持ちの家にはたいてい地下にシェルターをつくっている」という韓国の事情を知ったこと。
このことが今回の物語の大きなポイントとなっている。北との緊張関係がなければ、生まれにくかった映画だともいえる。

それにしても、原発が大爆発を起こしてその処理の方向も見えないどこかの国は、いまだに原発を動かし続けている。金持ちはすでに地下にシェルターをつくっているのだろうか。
私が知らないだけで。
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