ある交差点の赤信号で止まった時、一人のおばあさんが運転席の横までやってきた。おばあさんは千円札を差し出しながら「両替はここかねぇ?」と尋ねたので、私は「はい、ここですよ」と答えた。しかし、おばあさんが千円札を両替機に差し込む前に、信号が青に変わってしまったので、私は「発車しますけど、いいですか?」と注意を促した。ところが、おばあさんは金縛りにでも遭ったかのように、その場で立ち尽くしていたので、私は「バスが動きますけど、いいですか?」と再び注意を促した。しかし、おばあさんは私の方を見たまま動かなかったので、私は「ひょっとして耳が遠くて聞こえていないのかな?」と思い、先程よりも少し声を大きくして「バスが動くので、どこかにつかまっていてください」と言った。すると、おばあさんは無言で席に戻っていってしまった。私は「ありゃぁ… 私が怒ったと勘違いされちゃったかなぁ…」と思った。
終点の駅で、そのおばあさんは最後に前の方へやってきて、黙って両替を始めた。私は“仲直りのチャンス(なんのこっちゃ!)”だと思い、「先程はすいませんでしたね。信号が青になっちゃったから…」と声を掛けた。すると、おばあさんは「いやぁ~、年寄りは何をやるのも遅くていかんねぇ…」と言ったので、私は「いえいえ、私もそのうちにそうなるんですから…」と、フォローになってるかどうか分からない返答をしていた。ま、とりあえず、誤解されなくて良かったということで…