<金曜は本の紹介>
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この「体が若くなる技術(太田成男)」という本は、特に「活性酸素」と「ミトコンドリア」という観点から老いる仕組みや若返る仕組み等について分かりやすく説明が書いてあります。
ミトコンドリアの量を体内で増やしさえすれば、体の機能は向上し、健康的に暮らし、代謝が活発になれば美容への効果も少なくないようです。
そして、よいミトコンドリアを増やす方法は以下の4つとのことです。
(1)持久力のトレーニング
(2)背筋を伸ばすこと
(3)寒さを感じること
(4)空腹になること
この本は健康で長寿な生活をおくるための参考になる本で、とてもオススメです!
以下はこの本のポイント等です。
・ミトコンドリアは、私たちの細胞の中にあるひとつの器官で、細胞全体の10~20%を占めています。細胞によって100個から3000個もの数が含まれる器官で、さまざまな役割を担っています。その中でももっとも重要なはたらきが、体を動かしたり基礎代謝を促したりするための「エネルギー」をつくり出すことなのです。
・最近の研究によって、パーキンソン病は、古くなったミトコンドリアを除くことができなくなったことで起こる病気だということがわかってきました。古いミトコンドリアばかりになってしまうと、ミトコンドリアがはたらかなくなってエネルギーがつくれなくなり、さらに、活性酸素を放出しやすくなってしまいます。エネルギーが足りなくなって、活性酸素の害が強まり、神経細胞を殺してしまうのです。ミトコンドリアをリフレッシュするメカニズムがもっとよく理解できるようになれば、パーキンソン病の克服も可能です。
・私たちの体は、エネルギーを溜めておくことができません。必要に応じて、その都度つくっています。ですから、いつでもたくさんエネルギーをつくれる健康な体でいるためには、コンスタントに運動して、「これくらいのエネルギーがいつも必要です」と、体にオーダーをかけることが必要なのです。疲れるから、体力がないからと、体を休めてばかりいると、ミトコンドリアが極端に減り、エネルギーのつくれない「老いた体」になってしまいます。そうすると「老いと不健康の悪循環」に陥ります。
・脳のミトコンドリアが増えると、脳が使えるエネルギー量が増えるので、認知症を防止するだけでなく、集中力が増したり、発想力が豊かになったり、脳の機能全体がよくなります。頭脳労働者や受験生などは、ついつい頭ばかりを使って体を動かすことが少なくなる傾向がありますが、本当に脳の機能を高めたいなら、適度な運動を行い、体を動かすことで脳を刺激することが大切なのです。
・ここでは、がんが、遺伝子の中の特定の場所が傷つくことによって起こる病気だということを覚えておいてください。この傷の蓄積ががん遺伝子に生じるかどうかは、宝くじが当たるかどうかと同じことです。つまり、運よく、がん遺伝子やがん抑制遺伝子に傷がつかなかった人は老化し、運悪く、がん遺伝子やがん抑制遺伝子が傷ついてしまった人はがんになるということです。ただ、確率の問題として、年を経れば経るほど傷は蓄積していきますので、がん遺伝子やがん抑制遺伝子が傷つくリスクは高くなります。がんになるかならないかはあくまで運ですが、遺伝子損傷の原因である活性酸素が放出されないミトコンドリアを増やし、常にエネルギーをつくる能力を高くすれば、それだけ体の老化を防ぐ活動も盛んになるのです。そうなると、遺伝子を十分に修復して、過度な老化を防ぐことはできます。その点では、運の「よし悪し」は変えられませんが、生活を変えることによって、運の悪さを最低限に抑えることはできるのです。
・ミトコンドリアががんの発症を防ぐのは、それだけではありません。じつhもうひとつ、ミトコンドリアにはがんを防ぐための重要な「システム」があります。その鍵を握っているのが、「ミトコンドリア遺伝子」です。ミトコンドリア遺伝子とは、文字どおりミトコンドリアに含まれ遺伝子のことを指します。私たちは細胞に「核」を持っており、その中に遺伝子を持っていますが、じつは私たちはもうひとつ、ミトコンドリアにも別の遺伝子を持っているのです。そのミトコンドリア遺伝子が傷ついてしまうと、がんにおいて、大きなマイナスをもたらすことになります。それは、「アポトーシス」の抑制です。アポトーシスとは、遺伝子に組み込まれた細胞の自滅システムのことです。「自滅」というとなにやら怖いことのように思うかもしれませんが、体にとって不必要な細胞を取り除き、生体を守るためにとても大切なシステムです。このアポトーシスを起こす命令はミトコンドリアから発せられます。さらに、ミトコンドリアには、アポトーシスを途中で止める役割もあるのです。
・私たちの遺伝子は日々傷ついては修復されています。でも、それでも修復しきれないものは必ず出ます。その修復できなかった傷が蓄積し、やがて老化やがんの引き金になるわけですが、このとき、傷が溜まった細胞は、アポトーシスで死ぬことでがんになるのを防いでいるのです。細胞の修復機能は加齢とともに衰えていくので、アポトーシスが起きることは、がんになるのを防ぐうえでとても大切な、「体を若く保つ機能」です。もしも、傷ついた細胞でまったくアポトーシスが起こらなかったら、おそらく人間は100%がんになるでしょう。いえ、がんだけではありません。インフルエンザに代表されるウイルス性の病気が重症化することも間違いありません。つまり、アポオトーシスという細胞の自滅システムは、私たちの体をさまざまな病気から守ってくれている、とても重要なシステムであり、その命令を下すミトコンドリアが正常にはたらくかどうかが、将来の健康を大きく占っているのです。アポトーシスが起きるためには、やはりエネルギーが必要です。がんを予防するためにも、エネルギーが必要ということなのです。しかもそれだけではありません。ミトコンドリア遺伝子に大きな傷があると、がんは転移しやすくなり、死亡率が非常に高くなります。がんは、手術でとってしまえばよいのですが、全身に転移してしまうと、完治が難しくなる病気です。最近は、がんは不治の病ではなくなり、半分くらいの人は治りますが、ミトコンドリア遺伝子の傷が大きいがんは治りにくく、死亡率がぐんと高いのです。さらに、ミトコンドリア遺伝子に傷が多いと、抗ガン剤や放射線治療の効果も低くなってしまうのです。がんの予防にも、がんの治療にも、正常なミトコンドリアが必要なのです。
・じつは、「事故の起きやすい42歳」は私たちの体にとって、ひとつの転機になっていることが科学的にもわかったのです。いろいろな年齢の方々のミトコンドリアを調べてみると、この42歳を境にエネルギー生産の能力が急激に落ちているのです。年齢とともに少しずつ衰えていく場合は、少しずつ頭の中で修正できるのですが、急にエネルギー生産が落ちては、体がついていかないので、自分ができるはずと思ったことができなくて、転んでしまうことにつながるのです。
・効率よくエネルギーをつくり出すたえに酸素はとても有用なので、進化の結果、酸素を利用することになりました。ところが、体内に取り込まれた酸素の一部はm、エネルギーをつくる過程でどうしても体に有害な物質に変わってしまいます。それが「活性酸素」なのです。活性酸素が体に有害なのは、酸化力が強く、細胞の中のものを、その強い酸化力で傷つけてしまうからです。中でももっとも深刻な被害が、遺伝子を傷つけてしまうことです。遺伝子は生命の営みの設計図なので、遺伝子が錆びついて傷つくということは、それを発端として、健康や美容、そして体内機能のすべてがくるってしまうことを意味します。
・ヒトの細胞は、年齢、個体によって差がありますが、おおよそ1日に、200個に1個の割合(0.5%)で新しいものに入れ替わっています。ですから、昨日の自分と今日の自分は、見た目はまったく同じに見えますが、構成している細胞の0.5%は新しいものに入れ替わっている「昨日とは違う自分」なのです。こうした日々行われる入れ替わりのためには、細胞は自分のコピーをつくらなくてはなりません。ところが、この自分のコピーをつくるときに、コピーミスが起きてしまうのです。人間誰しも失敗をするように、細胞も失敗することがあるのです。エネルギーの製造過程でできてしまう活性酸素と、細胞の入れ替えの際のコピーミス、このふたつ以外にも遺伝子に傷をつけるものがあります。それは、放射線や紫外線、発がん物質などです。私たちの細胞の遺伝子は、こうしたさまざまな要因によって日々傷ついていますが、「遺伝子の傷の蓄積」こそ、老化の正体なのです。つまり、私たちは活性酸素や細胞のコピーミス、そして紫外線や発がん物質んどによって、日々老化を進めているということになります。しかし、なんといっても遺伝子が傷つく一番大きな原因は活性酸素です。いったいどのくらい傷ついているのかというと、何も外的要因がなかったとしても、一日当たり、ひとつの細胞で10万カ所以上も遺伝子は傷つきます。遺伝子が傷つくというと、とても大変な出来事のように思われるかもしれませんが、私たちの遺伝子というのは毎日、しかも相当数傷ついているのです。
・人間のとくに優れている長寿のシステム、それは、大きくふたつあります。ひとつは、活性酸素を取り除く酵素「SOD(スーパー・オキシド・ディスムターゼ)」をたくさんつくることができるということです。SOD自体は、ほかの動物も持っていますが、人間はほかの動物よりSODをつくる能力が飛び抜けて高いのです。たとえば、チンパンジーとヒトのSODの量を比べると、ヒトのほうが倍近いSODを持っています。SODが倍あるということは、単純に考えれば、倍の量の活性酸素を除去することができるということです。
・もうひとつ、人間がほかの動物より優れているのは、「遺伝子の修復能力」です。私たちには、コピーミスや外的要因によって生じる遺伝子の傷を、検知して治せるものは修復し、ダメなものは廃棄するという機能が備わっていますが、人間はこの能力がほかの動物と比べてとても高いのです。この二つのシステムが優れていることが、人間の長寿の理由なのです。つまり鳥が、活性酸素そのものをつくらないミトコンドリアによって長寿を実現したのに対し、人間はできてしまった活性酸素wSODの量を多くすることでより多く除去し、さらに、それでも除去しきれなかった活性酸素が遺伝子を傷つけても、高い修復能力で治すという、二段構えで長寿を実現していたのです。
・なぜ同じ人間でありながら女性のほうが、寿命は長く、老化も遅いのか-その原因は「活性酸素」にあります。男性と女性の大きな違いのひとつに、分泌される「ホルモン」の違いが挙げられますが、主な女性ホルモンとしてエストロゲンがあります。エストロゲンには骨をつくる作用、動脈硬化を抑制する作用など非常に多くの作用があり、エストロゲンのおかげで、女性の健康は維持されていると言っても過言ではありません。閉経後、エストロゲンが少なくなり、骨の密度が低くなることで起こる骨粗鬆症の治療に掘るもん補充療法が施されたこともありました。今では、過剰なエストロゲンはがんを誘発しやすいということがわかったために控えられていますが、それほど健康に密着したホルモンです。このエストロゲンが間接的にではありますが、活性酸素を消去する役割を果たしているのです。しかも、ここが重要なところですが、活性酸素が少なくなるとエストロゲンの作用もなくなるような仕組みになっているので、活性酸素を全部なくしてしまうことはしません。つまり活性酸素を少なくして、しかも完全になくしてしまうことはないという「調節機構」がそなわっているのです。活性酸素は全部なくしてしまったほうがいいと思うかもしれませんが、じつはそれは大きな間違いです。少量の活性酸素を残しておくことで、活性酸素を消したり、発生しなくしたりするようにして、活性酸素の害に対抗する「対抗手段」がはたらきます。活性酸素をまったくなくしてしまうと、活性酸素に対抗するシステムが弱くなって、かえって活性酸素の害を受けやすくなってしまうのです。女性ホルモンはこのバランスをうまく保ってくれます。老化の最大の原因である活性酸素に対して調節機能が備わっているかどうか-その仕組みの有無が男女で7歳もの平均年齢の差となってあらわれているのです。
・この加齢臭、具体的にその正体をお伝えすると、ノネナールという物質の臭いです。どのような成分かというと、過酸化脂質が分解したものになります。過酸化脂質とは、脂肪が過度に酸化した状態のものをいい、活性酸素が脂質に作用することから生じるものです。私たちの研究でも、過酸化脂質の量を計って活性酸素の発生量を推定しているほど活性酸素とは密接につながっています。古くなった油からもノネナールは発生するのですが、私たちの体からも酸化した古い油に似た臭いが出ていると言わなければなりません。さらに不潔にしていると皮膚に常在している細菌の作用によって、臭いはより強くなります。皮膚に常在している細菌の種類はさまざまで、個人個人が少しずつ異なる細菌を持っていますので、微妙に臭いも違ってきます。また加齢臭の強さはいつも同じとは限りません。体調が悪いときは活性酸素が多く発生するので、その分だけ臭いにも反映されます。つまり、体調のよし悪しによっても臭いは変わります。もし、いつもよりも「臭う」なら、体調が悪いときと言えます。「臭い」はその人の活性酸素の状態、ひいては健康状態を意外にも正確に反映してくれる、身近な仕組みでもあるのです。加齢臭を抑えるためには今のところ、活性酸素を出さない、もしくは減らす生活をするしかありません。
・食事をすると消化酵素が胃や腸に大量に分泌されます。胃からは1日で1.5~2.5リットル、膵臓から約1リットル、腸からは1.5~3リットルの消化液が分泌されます。消化酵素をつくるにもエネルギーが必要ですが、それは消化液を分泌する細胞に蓄えておきます。それよりも大変なのは、一度にたくさん食べたときです。食物が胃や腸に到達すると、急いで消化液を分泌することになりますが、消化管のミトコンドリアにしてみれば、50mを全力で走りきるほどのエネルギーをすぐに供給しなければいけません。それほど、この分泌には非常に多くのエネルギーが必要になります。急激な運動は活性酸素を生みますが、消化管でも同じことが起きてしまいまs。つまり、最初からたくさん食べてしまうと、それだけ急速にエネルギーを必要とし、活性酸素が発生してしまうということです。運動も食事も同じです。運動はゆっくりとスタートすることで活性酸素を抑えることができますが、食事もおなかが空いたからといって早食いをするのではなく、ゆっくり食べることで、活性酸素の発生を少なくすることができるのです。食事は、ゆっくりとあわてずに食べること。その心のゆとりが「老いる仕組み」から私たちを遠ざけてくれるのです。
・運動によるストレスにはプラス面も大きいのですが、心理的ストレスによる臨戦態勢にはメリットはほとんどありません。さらに悪いことに、心理的ストレスは活性酸素を発生させるだけでなく、免疫機能も低下させてしまうという特徴があります。そのため、多くの病気の引き金になっているのです。少しのストレスは人間にとって必要な要因なのかもしれませんが、長期にわたる肉体的ストレスを解消するには休息しかありません。プロローグでは「休んでばかりいてはダメ」とハッパをかけましたが、ストレスが長期にかかっているときは、話は別です。心理的ストレスの解消には休息が一番です。好きなことをしてリラックスすることが大切だと思います。少なくとも「老いの仕組み」から離れるためには、急いでばかりいない「ゆったりとした生活」がいいことは確かです。
・ミトコンドリアは、「エネルギーをつくる工場」だとお話ししました。でも、ミトコンドリアでつくられているのは、正確に言うとエネルギーそのものではなく、「ATP」と呼ばれるエネルギーを放出する物質です。これは、私たちの身近なものでたとえるなら、花火の火薬のようなものです。火薬は、それ自体はエネルギーではありませんが、点火して大きなエネルギーを出すことができます。「ATP」の正式名称は、「アデノシン三リン酸」といいます。ミトコンドリアでは、私たちが日々の食事から取り込んだ食べ物と、呼吸によって取り込んだ酸素を使ってATPという物質を合成しているのです。ATPからは決まった量のエネルギーが得られるうえ、体の中で必要とされるあらゆるエネルギーと交換することができるので、ATPは「エネルギー通貨」とも呼ばれています。何をするにも必要で、どんなものとも交換できる-そんなお金ととてもよく似たATPですが、ひとつだけ、お金とは大きく違った特徴があります。それは、お金は貯めておいて必要なときに使うことができますが、ATPは蓄えておくことができないということです。各々の細胞の中のミトコンドリアでつくられたATPは、その細胞の中だけで使われます。そのため、筋肉や神経などエネルギーをたくさん必要とする場所では、ミトコンドリアも多く、ATPもたくさんつくられています。そうでなければその場所で必要なエネルギーを供給できません。ATPはつくられてからわずか1分ほどで消費されてしまうため、私たちの体では、生きている限り24時間休みなくATPがつくられつづけます。そして、そのATPが、絶えず使われつづけることで体の機能は止まることがなく、命が保たれているのです。
・ミトコンドリアでATPをつくるには、たいへん多くのステップが必要です。そのすべてを一言で説明するのはとても難しいことですが、そのひとつひとつのステップはどれもノーベル賞に値するほど重要なものばかりです。実際、ミトコンドリアの中でどのようにしてATPをつくり出しているかという研究では、7回、合計で9人のノーベル賞受賞者を出しているほどなのです。その中でも、誰もが想像さえしていなかったことは、ミトコンドリアにはいったん、栄養素のエネルギーが「電気」として蓄えられ、その電気エネルギーを使ってATPをつくり出すということです。このミトコンドリアの電気エネルギーに関する研究では、同じ分野の研究であるにもかかわらず、2回もノーベル賞が与えられました。そのくらい驚くべきことだったのです。
・遺伝的に全く同じと言える一卵性双生児で、運動習慣の違いが老化の進み具合にどのくらい影響を与えるかを調べた調査がありまs。2400組もの双子の運動生活の状態と老化の程度を調べたという大規模な調査でした。すると、週に3時間以上運動する人は、週15分以下しか運動しないもう一方の双子に比べて、老化の進み具合が遅かったのです。その結果、運動は健康によく、老化を遅くす効果があることが実証されたのです。
・メタボの解消・予防を目指すには、ミトコンドリアによる代謝を上げて、内蔵脂肪を減らせばよい-これが健在わかっている唯一の方法です。決して内臓脂肪だけが問題なのではありませんし、内臓脂肪を減らせばいいというのも正確ではありません。ミトコンドリアが生み出すエネルギーと食事の量=「代謝のバランス」といった根本要因を健康な状態に保つことが、「万病のもと」を回避する万全の策なのです。
・脂肪細胞には大きな特徴があります。それは、脂肪が増えたからといって、蓄積される脂肪細胞の数はほとんど変化しないということです。これは大きな特徴です。脂肪細胞の数は一生変化しないわけではありませんが、乳児期と思春期にほとんど決まってしまいます。ですから、乳児期や思春期に栄養過多になってしまうと、その栄養を蓄えようとして、脂肪細胞の数が増えてしまいます。
・国立がんセンターの疫学調査によって、もっとも寿命が長いのはBMO値が25~27の軽度肥満の人だということがわかったのです。しかも、体にいいと考えられていた、やせている人(BMI18.9以下)たちの死亡率は、なんとBMI30以上の肥満の人と同じだったのです。具体的な数値で言うと、身長160cmの人なら、もっとも寿命が長いのは体重64~69kgで、体重48kg以下のやせている人は、体重77kg以上の太りすぎの人と同じぐらい寿命が短くなるということです。やせすぎは重度の肥満と同じぐらい体には悪いのです。国立がんセンターは、この調査結果についてはっきりした理由はわからないとしていますが、やせすぎの人の寿命が短くなるのは、脂肪だけではなく、筋肉の量も極端に少ないことが原因なのではないかと私は考えています。
・ジムに定期的に通っているのであれば、バイク運動やランニング運動をゆっくりと行うのがいいでしょう。ただし、ランニングやバイク運動では息が切れるほどの運動は必要ありません。私たちの体は、あせらずゆっくりとした運動さえすれば、赤筋が発達し、ミトコンドリアが増えるようにできているのです。長く運動が続けられるのは、その人が持つ限界の60%程度の運動量です。運動量の60%と言われてもピンとこない人もいるでしょう。ランニングやバイク運動など、トレーニングの運動量の「ほどよさ」を測る基準がひとつあります。それが「心拍数」です。「ほどよさ」の運動量がわかりにくければ、最大心拍数の60%になるように抑えながら行うとちょうどいい具合になります。
・ミトコンドリアは体の機能を動かすエネルギーをつくる、とても大切な場所です。それだけに、ミトコンドリアを増やすのには1年、少なくとも1ヶ月くらいはかかるのではないかと思われる方が多いようです。ところが、ミトコンドリアの変化は、意外と短時間で起きます。どのくらいかと言うと、ミトコンドリアは1週間もあれば増えてくれるのです。60%の運動量のバイク運動を毎日2時間ほど続ければ、わずか1週間で1.3倍、1ヶ月後には2倍にまでミトコンドリアが増えるという結果もあるくらいです。
・瞬発的な力を鍛えると思われがちな「筋トレ・ウエイトトレーニング」も、やり方を間違えなければ立派な持久力のトレーニングになります。むしろ、一番効率的にミトコンドリアを増やすにいあ、少し強めの力、筋肉の80%くらいの力を出すことです。1分間くらいでいいですから、80%の強さの力を出し、それを1日10回繰り返すだけで、1~2週間もすれば、効率よくミトコンドリアが増えてくれます。赤筋はとにかく長時間運動をすれbあ効果的と誤解してしまうかもしれませんが、ミトコンドリアを増やすには短時間で少し強めの力を出すほうが効果的なのです。
・じつはミトコンドリアは、筋肉の中でも姿勢を保つための筋肉、もっと具体的に言うと、「背筋」と「太ももの筋肉」にたくさん含まれています。ですから、背すじを意識すれば体は健康になり、見た目にも内面的にも自然と若くなるのです。スクワットなどが健康にいいのも、中腰の姿勢になると太股の筋肉が使われるためと言えますし、背すじをのばすことを重視する社交ダンスは、社交やスポーツとしてだけでなく、健康法としても優れているのです。
・マウスには体毛があり、人間には体毛がないので単純に比較するのは難しいのですが、マウスの例を人間にあてはめると、摂氏12度の水の中に10分いるだけでミトコンドリアが増えると考えられます。「12度の水の中に10分も!?」そう思うかもしれませんが、これはあくまで「水の中」というデータです。ちなみに、実際私たちは古くから「体を寒いところに置く習慣」を続けています。その代表的な例が「寒中稽古」です。剣道や柔道などの武芸スポーツでは寒中稽古をよく見かけますが、古い知恵なのでしょう、実践したことがある人であればわかると思いますが、寒中稽古を1週間続けると、体がポカポカしてきます。また、寒中水泳を毎年続けていらっしゃる方もいると思いますが、その水温は初級者でも約12度で、運動後は同じように体がポカポカしてきます。これはミトコンドリアが活発化しているためです。そのまま寒い状態が続けば、体は機能できず死んでしまいますから、一生懸命ミトコンドリアを増やして、エネルギーの量産態勢に入るのです。ですから、「寒いところで運動をする」ことがミトコンドリアを効果的に増やす方法のひとつと言えます。でも、寒いところで運動をするのは少し骨が折れる、という人も多いと思います。そんな人にはもっと手軽な方法もあります。それが「サウナに入った後に水風呂に入ること」です。
・実験の結果、70%にカロリー制限をしサルではしわや白髪が少なく、体毛も抜けていなかったのです。目の輝きも違います。カロリー制限の食事をしていたサルは精悍な顔つきですが、一方で普通のサルはボーッとした感じです。人間ですと若いか年配かは一目見れば誰でもわかります。これはサルでも同じことで、一目見れば若々しいか、老けているかは一目瞭然なのです。さらに、カロリー制限をしたサルでは、生活習慣病や老年病で亡くなる数が3分の1にまで激減したのです。当然、平均寿命もカロリー制限をしたサルのほうが長くなっています。サルは人間ともっとも近い動物ですので、人間も70%のカロリー制限で長寿になると考えられます。
・ここで言う必要な栄養とはミネラル、ビタミン、アミノ酸です。ではどのようなバランスで食事をすればいいのかと言うと、カロリー源としての炭水化物とタンパク質と脂質を「3:1:1」くらいの割合で摂ればいいのです。カロリーを減らすからといって、脂質を完全に除いてはバランスがよくありませんので注意してください。
・動物を用いた最近の研究でも、総カロリー量を減らすというよりも、空腹感を与えるほうが、寿命をのばすことができるという結果が出ています。空腹になると体はもっとエネルギーをつくらなければいけないと認識するため、ミトコンドリアを増やしてエネルギーをつくろうとするのです。一日断食し、その次の日は思う存分食べても、効果があります。
・ミトコンドリアを増やすならば、運動前に食べ物を口にしてはいけません。むしろ、積極的におなかを空かせて運動することでミトコンドリアを増やすことができるのです。
・内臓脂肪をため込んだメタボが生活習慣病を引き起こすのは間違いありませんし、カロリー制限によって、生活習慣病を予防できるのも本当です。一方、やせすぎの人、コレステロールの少ない人の死亡率が高いのも本当です。このふたつの比較は、じつは「病気になりやすい」か「死亡率が高い」かの違いだったのです。そしてその違いは年齢によってはっきりと分かれています。メタボにより糖尿病になる平均年齢は約50歳、一方、やせすぎにより死亡率が高くなるのは、男性で70歳から、女性で75歳-ということなのです。私たちは65歳を境に、血液中のコレステロール濃度が自然に下がってきます。ですから、65歳以下では、食べ過ぎないことで内臓脂肪をため込まないようにし、生活習慣病にかからないようにする必要があります。そして65歳を過ぎたら、無理に食べる必要はありませんが、栄養たっぷりの食事をとって体力をつけ、やえすぎによって筋肉が衰えないようにすべきです。コレステロール濃度が下がると免疫機能が低下して、がん、脳血管疾患、呼吸器疾患の死亡率がいずれも高くなってしまうのです。
・食事と生活の質について、大変興味深いことがわかりました。血液中のカロテンの量が多い高齢者は生活の質が高い、つまり介護なしで元気に生活ができていたのです。血液中のカロテン量の多い人は、カロテンを多く食べている傾向があるので、カロテンをたくさん食べるほど老化の割合が少なく、元気に暮らしているという証明がなされたのです。カロテンはにんじんや赤ピーマンの色のもとにもなっている抗酸化物質です。ちなみに抗酸化物質とは、活性酸素を減らし、遺伝子を守ってくれる物質を総称した言葉で、ミトコンドリアを活性化させる役割もあります。ビタミンをはじめ、トマトに含まれるリコピン、鮭のピンク色のもととなっているアスタキサンチンなども同じ抗酸化物質です。なぜ野菜や果物が体にいいのかというと、植物には多くの抗酸化物質が含まれているからなのです。
・同じようにほかの抗酸化ビタミンもサプリメントで摂りすぎると、がんになりやすいなどの弊害が出ることがわかってきましたので、摂りすぎには気をつけてほしいと思います。以前まで、ビタミンCはいくら摂っても害はないあと信じられていたので、これ以上摂取すると体にyくないという上限値は定められていなかったのですが、現在は、一日1グラムを上限値として定めています。一日1グラム以上摂ると体に害があるかもしれないという基準です。風邪をひいたときなど、免疫機能を上げなくてはならないときは、ビタミンCをたくさん摂る必要はあります。しかし、必要以上に摂れば、ビタミンCでも害が生じてしまうのです。
・もっとも重要なことは、普段の生活をどのような気持ちで送るかということなのです。活性酸素が生まれる場面をひとつひとつ読み返してみれば、あることに気がつきます。
○活性酸素がつくられるのは、ストレスが多いとき
○活性酸素がつくられるのは、エネルギーが急に必要となったとき
○活性酸素がつくられるのは、急に酸素が入ってきたとき
○活性酸素がつくられるのは、早食いのとき
おわかりでしょうか。急な変化を生んだとき、また、心に余裕がないときに活性酸素は生じてしまうのです。そうではなく、ゆっくりとしたときこそ、豊富なエネルギーをつくるように私たちの体はできています。「ゆっくり」「ゆったり」とした生活が、活性酸素を少なくし、ミトコンドリアを増やすのです。ただし「ゆっくり」という言葉に甘えてなにもしなければ、活性酸素の発生は抑えられるかもしれませんが、ミトコンドリアを増やすことはできません。ミトコンドリアを増やすには、「エネルギーが必要だ」と感じさせることです。それは、「心のエネルギー枯渇状態」をつくればいい、ということです。人生を楽しんでいる人はエネルギーがあるから若く見える・・・ように感じますが、じつはそうではありません。人生を楽しむことによって、心に「エネルギーが足りない」と感じさせるからこそ、体がエネルギーをつくろうとし、その結果、若くなるのです。つまり好奇心をもって、とにかく人生を楽しんでみる。その姿勢を忘れないでほしいと思います。本書の最後の総仕上げとして、焦らず急がず、ゆっくりとした生活を送ること、そして、心に「エネルギーの必要性」を訴えかけるべく、もっと人生に「欲張り」になって生きることを実践してほしいと思います。
<目次>
プロローグ
第1章 健康で長寿の人ほど「体内」が若い
なぜ「鶴は千年、亀は万年」なのか
マラソン選手の体は限りなく「鳥」に近い
「ファイト一発!」は仕事の後で役に立つ
食用油は「中鎖脂肪酸入り」を使いなさい
人間の寿命は、はるか昔から120歳と決まっている
元ヘビー級チャンピオンのモハメド・アリが受けた誤解とは
老いは「体を休めた人」からやってくる
お酒に強くなった人は「食道がん」に気をつけなさい
ミトコンドリアは「認知症」も予防する
「がん」の原因と「老化」の原因はまったく同じ
最後の防衛本能「アポトーシス」のはたらきとは
男性の大厄は、科学的にも「42歳」である
第2章 「老いる仕組み」と「若返る仕組み」
浦島太郎は「おじいさん」ではなく、「病人」になっていた!
私たちの遺伝子は「1日に10万カ所」も傷ついている
人間は生まれつき老化しないようにできている!
地獄の沙汰も金次第、体のことはエネルギー次第
なぜ女性は男性よりも長生きするのか
「加齢臭」は健康状態を知らせるサインである
正座をした後、すぐに立ち上がってはいけない
なぜ脳梗塞は2時間以内の治療が必要なのか
早食いは「老いる仕組み」への第一歩と心得よ
ストレスが活性酸素を発生させる
香さんが告白したバセドウ病の症状とは
エネルギーとは「貯金のできないお金」である
90歳からでも基礎代謝を増やすことはできる!
体にとって食べ物は「電気の素」である
「運動をすると短命になる」というウワサは本当か?
呼吸で取り込んだ酸素は、1~2%が活性酸素となる
マイルド・カップリングが活性酸素の発生を防止する
ミトコンドリアの「量」が「質」をつくり出す
第3章 メタボはエネルギー代謝の病気である
内蔵脂肪を減らす「唯一の方法」とは
「やせ体質」か「太め体質」かは、思春期までに決まっている
なぜ三谷幸喜さんは徹夜仕事で「げっそり太る」のか
メタボは体によくないが、「やせすぎ」はもっと悪い
脂肪細胞はやせている人の味方をする
食事は30分以上を目安に食べなさい
満腹ホルモンも、体内時計で動き出す!
糖尿病も「ミトコンドリアの不調」からはじまる
第4章 ミトコンドリアを増やす運動習慣
まずは「マグロトレーニング」をはじめなさい
最大心拍数は60%がちょうどいい
「筋肉痛にならない」は、体が衰えきった証拠である
「短時間」で効果を出す有酸素運動とは
「社交ダンス」に隠された超健康法の秘訣とは
古来より伝わる動きほど健康にいい
「不自然な姿勢」を習慣化すれば若くなる
確実にやせて、確実にリバウンドのない方法とは
高齢になったら、ちゃんと「少量の活性酸素」を出しなさい
サウナに入った後は、水風呂に入りなさい
第5章 おなかを空かせて若くなる
不老長寿の極意は「摂らないこと」にある
長寿の研究は、「パン酵母」からはじまった
寿命をのばす「長寿遺伝子」とは
サルもひと目見れば「若い」か「年配」かがわかる
栄養バランスは「3:1:1」で摂りなさい
「週末断食」が眠っていたミトコンドリアを呼び覚ます
運動はおなかを空かせてはじめなさい
「やせないこと」と「空腹になること」はどう使い分けるのか
緑・赤・黄色の野菜を食べなさい
ビタミンCの摂りすぎはがんになる!?
「生殖能力」を招くカロリー制限の危険とは
もっとも理想的な食生活は「感謝」によってつくられる
ミトコンドリアは「ゆっくり」の先にあらわれる
エピローグ
面白かった本まとめ(2011年下半期)
<今日の独り言>
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この「体が若くなる技術(太田成男)」という本は、特に「活性酸素」と「ミトコンドリア」という観点から老いる仕組みや若返る仕組み等について分かりやすく説明が書いてあります。
ミトコンドリアの量を体内で増やしさえすれば、体の機能は向上し、健康的に暮らし、代謝が活発になれば美容への効果も少なくないようです。
そして、よいミトコンドリアを増やす方法は以下の4つとのことです。
(1)持久力のトレーニング
(2)背筋を伸ばすこと
(3)寒さを感じること
(4)空腹になること
この本は健康で長寿な生活をおくるための参考になる本で、とてもオススメです!
以下はこの本のポイント等です。
・ミトコンドリアは、私たちの細胞の中にあるひとつの器官で、細胞全体の10~20%を占めています。細胞によって100個から3000個もの数が含まれる器官で、さまざまな役割を担っています。その中でももっとも重要なはたらきが、体を動かしたり基礎代謝を促したりするための「エネルギー」をつくり出すことなのです。
・最近の研究によって、パーキンソン病は、古くなったミトコンドリアを除くことができなくなったことで起こる病気だということがわかってきました。古いミトコンドリアばかりになってしまうと、ミトコンドリアがはたらかなくなってエネルギーがつくれなくなり、さらに、活性酸素を放出しやすくなってしまいます。エネルギーが足りなくなって、活性酸素の害が強まり、神経細胞を殺してしまうのです。ミトコンドリアをリフレッシュするメカニズムがもっとよく理解できるようになれば、パーキンソン病の克服も可能です。
・私たちの体は、エネルギーを溜めておくことができません。必要に応じて、その都度つくっています。ですから、いつでもたくさんエネルギーをつくれる健康な体でいるためには、コンスタントに運動して、「これくらいのエネルギーがいつも必要です」と、体にオーダーをかけることが必要なのです。疲れるから、体力がないからと、体を休めてばかりいると、ミトコンドリアが極端に減り、エネルギーのつくれない「老いた体」になってしまいます。そうすると「老いと不健康の悪循環」に陥ります。
・脳のミトコンドリアが増えると、脳が使えるエネルギー量が増えるので、認知症を防止するだけでなく、集中力が増したり、発想力が豊かになったり、脳の機能全体がよくなります。頭脳労働者や受験生などは、ついつい頭ばかりを使って体を動かすことが少なくなる傾向がありますが、本当に脳の機能を高めたいなら、適度な運動を行い、体を動かすことで脳を刺激することが大切なのです。
・ここでは、がんが、遺伝子の中の特定の場所が傷つくことによって起こる病気だということを覚えておいてください。この傷の蓄積ががん遺伝子に生じるかどうかは、宝くじが当たるかどうかと同じことです。つまり、運よく、がん遺伝子やがん抑制遺伝子に傷がつかなかった人は老化し、運悪く、がん遺伝子やがん抑制遺伝子が傷ついてしまった人はがんになるということです。ただ、確率の問題として、年を経れば経るほど傷は蓄積していきますので、がん遺伝子やがん抑制遺伝子が傷つくリスクは高くなります。がんになるかならないかはあくまで運ですが、遺伝子損傷の原因である活性酸素が放出されないミトコンドリアを増やし、常にエネルギーをつくる能力を高くすれば、それだけ体の老化を防ぐ活動も盛んになるのです。そうなると、遺伝子を十分に修復して、過度な老化を防ぐことはできます。その点では、運の「よし悪し」は変えられませんが、生活を変えることによって、運の悪さを最低限に抑えることはできるのです。
・ミトコンドリアががんの発症を防ぐのは、それだけではありません。じつhもうひとつ、ミトコンドリアにはがんを防ぐための重要な「システム」があります。その鍵を握っているのが、「ミトコンドリア遺伝子」です。ミトコンドリア遺伝子とは、文字どおりミトコンドリアに含まれ遺伝子のことを指します。私たちは細胞に「核」を持っており、その中に遺伝子を持っていますが、じつは私たちはもうひとつ、ミトコンドリアにも別の遺伝子を持っているのです。そのミトコンドリア遺伝子が傷ついてしまうと、がんにおいて、大きなマイナスをもたらすことになります。それは、「アポトーシス」の抑制です。アポトーシスとは、遺伝子に組み込まれた細胞の自滅システムのことです。「自滅」というとなにやら怖いことのように思うかもしれませんが、体にとって不必要な細胞を取り除き、生体を守るためにとても大切なシステムです。このアポトーシスを起こす命令はミトコンドリアから発せられます。さらに、ミトコンドリアには、アポトーシスを途中で止める役割もあるのです。
・私たちの遺伝子は日々傷ついては修復されています。でも、それでも修復しきれないものは必ず出ます。その修復できなかった傷が蓄積し、やがて老化やがんの引き金になるわけですが、このとき、傷が溜まった細胞は、アポトーシスで死ぬことでがんになるのを防いでいるのです。細胞の修復機能は加齢とともに衰えていくので、アポトーシスが起きることは、がんになるのを防ぐうえでとても大切な、「体を若く保つ機能」です。もしも、傷ついた細胞でまったくアポトーシスが起こらなかったら、おそらく人間は100%がんになるでしょう。いえ、がんだけではありません。インフルエンザに代表されるウイルス性の病気が重症化することも間違いありません。つまり、アポオトーシスという細胞の自滅システムは、私たちの体をさまざまな病気から守ってくれている、とても重要なシステムであり、その命令を下すミトコンドリアが正常にはたらくかどうかが、将来の健康を大きく占っているのです。アポトーシスが起きるためには、やはりエネルギーが必要です。がんを予防するためにも、エネルギーが必要ということなのです。しかもそれだけではありません。ミトコンドリア遺伝子に大きな傷があると、がんは転移しやすくなり、死亡率が非常に高くなります。がんは、手術でとってしまえばよいのですが、全身に転移してしまうと、完治が難しくなる病気です。最近は、がんは不治の病ではなくなり、半分くらいの人は治りますが、ミトコンドリア遺伝子の傷が大きいがんは治りにくく、死亡率がぐんと高いのです。さらに、ミトコンドリア遺伝子に傷が多いと、抗ガン剤や放射線治療の効果も低くなってしまうのです。がんの予防にも、がんの治療にも、正常なミトコンドリアが必要なのです。
・じつは、「事故の起きやすい42歳」は私たちの体にとって、ひとつの転機になっていることが科学的にもわかったのです。いろいろな年齢の方々のミトコンドリアを調べてみると、この42歳を境にエネルギー生産の能力が急激に落ちているのです。年齢とともに少しずつ衰えていく場合は、少しずつ頭の中で修正できるのですが、急にエネルギー生産が落ちては、体がついていかないので、自分ができるはずと思ったことができなくて、転んでしまうことにつながるのです。
・効率よくエネルギーをつくり出すたえに酸素はとても有用なので、進化の結果、酸素を利用することになりました。ところが、体内に取り込まれた酸素の一部はm、エネルギーをつくる過程でどうしても体に有害な物質に変わってしまいます。それが「活性酸素」なのです。活性酸素が体に有害なのは、酸化力が強く、細胞の中のものを、その強い酸化力で傷つけてしまうからです。中でももっとも深刻な被害が、遺伝子を傷つけてしまうことです。遺伝子は生命の営みの設計図なので、遺伝子が錆びついて傷つくということは、それを発端として、健康や美容、そして体内機能のすべてがくるってしまうことを意味します。
・ヒトの細胞は、年齢、個体によって差がありますが、おおよそ1日に、200個に1個の割合(0.5%)で新しいものに入れ替わっています。ですから、昨日の自分と今日の自分は、見た目はまったく同じに見えますが、構成している細胞の0.5%は新しいものに入れ替わっている「昨日とは違う自分」なのです。こうした日々行われる入れ替わりのためには、細胞は自分のコピーをつくらなくてはなりません。ところが、この自分のコピーをつくるときに、コピーミスが起きてしまうのです。人間誰しも失敗をするように、細胞も失敗することがあるのです。エネルギーの製造過程でできてしまう活性酸素と、細胞の入れ替えの際のコピーミス、このふたつ以外にも遺伝子に傷をつけるものがあります。それは、放射線や紫外線、発がん物質などです。私たちの細胞の遺伝子は、こうしたさまざまな要因によって日々傷ついていますが、「遺伝子の傷の蓄積」こそ、老化の正体なのです。つまり、私たちは活性酸素や細胞のコピーミス、そして紫外線や発がん物質んどによって、日々老化を進めているということになります。しかし、なんといっても遺伝子が傷つく一番大きな原因は活性酸素です。いったいどのくらい傷ついているのかというと、何も外的要因がなかったとしても、一日当たり、ひとつの細胞で10万カ所以上も遺伝子は傷つきます。遺伝子が傷つくというと、とても大変な出来事のように思われるかもしれませんが、私たちの遺伝子というのは毎日、しかも相当数傷ついているのです。
・人間のとくに優れている長寿のシステム、それは、大きくふたつあります。ひとつは、活性酸素を取り除く酵素「SOD(スーパー・オキシド・ディスムターゼ)」をたくさんつくることができるということです。SOD自体は、ほかの動物も持っていますが、人間はほかの動物よりSODをつくる能力が飛び抜けて高いのです。たとえば、チンパンジーとヒトのSODの量を比べると、ヒトのほうが倍近いSODを持っています。SODが倍あるということは、単純に考えれば、倍の量の活性酸素を除去することができるということです。
・もうひとつ、人間がほかの動物より優れているのは、「遺伝子の修復能力」です。私たちには、コピーミスや外的要因によって生じる遺伝子の傷を、検知して治せるものは修復し、ダメなものは廃棄するという機能が備わっていますが、人間はこの能力がほかの動物と比べてとても高いのです。この二つのシステムが優れていることが、人間の長寿の理由なのです。つまり鳥が、活性酸素そのものをつくらないミトコンドリアによって長寿を実現したのに対し、人間はできてしまった活性酸素wSODの量を多くすることでより多く除去し、さらに、それでも除去しきれなかった活性酸素が遺伝子を傷つけても、高い修復能力で治すという、二段構えで長寿を実現していたのです。
・なぜ同じ人間でありながら女性のほうが、寿命は長く、老化も遅いのか-その原因は「活性酸素」にあります。男性と女性の大きな違いのひとつに、分泌される「ホルモン」の違いが挙げられますが、主な女性ホルモンとしてエストロゲンがあります。エストロゲンには骨をつくる作用、動脈硬化を抑制する作用など非常に多くの作用があり、エストロゲンのおかげで、女性の健康は維持されていると言っても過言ではありません。閉経後、エストロゲンが少なくなり、骨の密度が低くなることで起こる骨粗鬆症の治療に掘るもん補充療法が施されたこともありました。今では、過剰なエストロゲンはがんを誘発しやすいということがわかったために控えられていますが、それほど健康に密着したホルモンです。このエストロゲンが間接的にではありますが、活性酸素を消去する役割を果たしているのです。しかも、ここが重要なところですが、活性酸素が少なくなるとエストロゲンの作用もなくなるような仕組みになっているので、活性酸素を全部なくしてしまうことはしません。つまり活性酸素を少なくして、しかも完全になくしてしまうことはないという「調節機構」がそなわっているのです。活性酸素は全部なくしてしまったほうがいいと思うかもしれませんが、じつはそれは大きな間違いです。少量の活性酸素を残しておくことで、活性酸素を消したり、発生しなくしたりするようにして、活性酸素の害に対抗する「対抗手段」がはたらきます。活性酸素をまったくなくしてしまうと、活性酸素に対抗するシステムが弱くなって、かえって活性酸素の害を受けやすくなってしまうのです。女性ホルモンはこのバランスをうまく保ってくれます。老化の最大の原因である活性酸素に対して調節機能が備わっているかどうか-その仕組みの有無が男女で7歳もの平均年齢の差となってあらわれているのです。
・この加齢臭、具体的にその正体をお伝えすると、ノネナールという物質の臭いです。どのような成分かというと、過酸化脂質が分解したものになります。過酸化脂質とは、脂肪が過度に酸化した状態のものをいい、活性酸素が脂質に作用することから生じるものです。私たちの研究でも、過酸化脂質の量を計って活性酸素の発生量を推定しているほど活性酸素とは密接につながっています。古くなった油からもノネナールは発生するのですが、私たちの体からも酸化した古い油に似た臭いが出ていると言わなければなりません。さらに不潔にしていると皮膚に常在している細菌の作用によって、臭いはより強くなります。皮膚に常在している細菌の種類はさまざまで、個人個人が少しずつ異なる細菌を持っていますので、微妙に臭いも違ってきます。また加齢臭の強さはいつも同じとは限りません。体調が悪いときは活性酸素が多く発生するので、その分だけ臭いにも反映されます。つまり、体調のよし悪しによっても臭いは変わります。もし、いつもよりも「臭う」なら、体調が悪いときと言えます。「臭い」はその人の活性酸素の状態、ひいては健康状態を意外にも正確に反映してくれる、身近な仕組みでもあるのです。加齢臭を抑えるためには今のところ、活性酸素を出さない、もしくは減らす生活をするしかありません。
・食事をすると消化酵素が胃や腸に大量に分泌されます。胃からは1日で1.5~2.5リットル、膵臓から約1リットル、腸からは1.5~3リットルの消化液が分泌されます。消化酵素をつくるにもエネルギーが必要ですが、それは消化液を分泌する細胞に蓄えておきます。それよりも大変なのは、一度にたくさん食べたときです。食物が胃や腸に到達すると、急いで消化液を分泌することになりますが、消化管のミトコンドリアにしてみれば、50mを全力で走りきるほどのエネルギーをすぐに供給しなければいけません。それほど、この分泌には非常に多くのエネルギーが必要になります。急激な運動は活性酸素を生みますが、消化管でも同じことが起きてしまいまs。つまり、最初からたくさん食べてしまうと、それだけ急速にエネルギーを必要とし、活性酸素が発生してしまうということです。運動も食事も同じです。運動はゆっくりとスタートすることで活性酸素を抑えることができますが、食事もおなかが空いたからといって早食いをするのではなく、ゆっくり食べることで、活性酸素の発生を少なくすることができるのです。食事は、ゆっくりとあわてずに食べること。その心のゆとりが「老いる仕組み」から私たちを遠ざけてくれるのです。
・運動によるストレスにはプラス面も大きいのですが、心理的ストレスによる臨戦態勢にはメリットはほとんどありません。さらに悪いことに、心理的ストレスは活性酸素を発生させるだけでなく、免疫機能も低下させてしまうという特徴があります。そのため、多くの病気の引き金になっているのです。少しのストレスは人間にとって必要な要因なのかもしれませんが、長期にわたる肉体的ストレスを解消するには休息しかありません。プロローグでは「休んでばかりいてはダメ」とハッパをかけましたが、ストレスが長期にかかっているときは、話は別です。心理的ストレスの解消には休息が一番です。好きなことをしてリラックスすることが大切だと思います。少なくとも「老いの仕組み」から離れるためには、急いでばかりいない「ゆったりとした生活」がいいことは確かです。
・ミトコンドリアは、「エネルギーをつくる工場」だとお話ししました。でも、ミトコンドリアでつくられているのは、正確に言うとエネルギーそのものではなく、「ATP」と呼ばれるエネルギーを放出する物質です。これは、私たちの身近なものでたとえるなら、花火の火薬のようなものです。火薬は、それ自体はエネルギーではありませんが、点火して大きなエネルギーを出すことができます。「ATP」の正式名称は、「アデノシン三リン酸」といいます。ミトコンドリアでは、私たちが日々の食事から取り込んだ食べ物と、呼吸によって取り込んだ酸素を使ってATPという物質を合成しているのです。ATPからは決まった量のエネルギーが得られるうえ、体の中で必要とされるあらゆるエネルギーと交換することができるので、ATPは「エネルギー通貨」とも呼ばれています。何をするにも必要で、どんなものとも交換できる-そんなお金ととてもよく似たATPですが、ひとつだけ、お金とは大きく違った特徴があります。それは、お金は貯めておいて必要なときに使うことができますが、ATPは蓄えておくことができないということです。各々の細胞の中のミトコンドリアでつくられたATPは、その細胞の中だけで使われます。そのため、筋肉や神経などエネルギーをたくさん必要とする場所では、ミトコンドリアも多く、ATPもたくさんつくられています。そうでなければその場所で必要なエネルギーを供給できません。ATPはつくられてからわずか1分ほどで消費されてしまうため、私たちの体では、生きている限り24時間休みなくATPがつくられつづけます。そして、そのATPが、絶えず使われつづけることで体の機能は止まることがなく、命が保たれているのです。
・ミトコンドリアでATPをつくるには、たいへん多くのステップが必要です。そのすべてを一言で説明するのはとても難しいことですが、そのひとつひとつのステップはどれもノーベル賞に値するほど重要なものばかりです。実際、ミトコンドリアの中でどのようにしてATPをつくり出しているかという研究では、7回、合計で9人のノーベル賞受賞者を出しているほどなのです。その中でも、誰もが想像さえしていなかったことは、ミトコンドリアにはいったん、栄養素のエネルギーが「電気」として蓄えられ、その電気エネルギーを使ってATPをつくり出すということです。このミトコンドリアの電気エネルギーに関する研究では、同じ分野の研究であるにもかかわらず、2回もノーベル賞が与えられました。そのくらい驚くべきことだったのです。
・遺伝的に全く同じと言える一卵性双生児で、運動習慣の違いが老化の進み具合にどのくらい影響を与えるかを調べた調査がありまs。2400組もの双子の運動生活の状態と老化の程度を調べたという大規模な調査でした。すると、週に3時間以上運動する人は、週15分以下しか運動しないもう一方の双子に比べて、老化の進み具合が遅かったのです。その結果、運動は健康によく、老化を遅くす効果があることが実証されたのです。
・メタボの解消・予防を目指すには、ミトコンドリアによる代謝を上げて、内蔵脂肪を減らせばよい-これが健在わかっている唯一の方法です。決して内臓脂肪だけが問題なのではありませんし、内臓脂肪を減らせばいいというのも正確ではありません。ミトコンドリアが生み出すエネルギーと食事の量=「代謝のバランス」といった根本要因を健康な状態に保つことが、「万病のもと」を回避する万全の策なのです。
・脂肪細胞には大きな特徴があります。それは、脂肪が増えたからといって、蓄積される脂肪細胞の数はほとんど変化しないということです。これは大きな特徴です。脂肪細胞の数は一生変化しないわけではありませんが、乳児期と思春期にほとんど決まってしまいます。ですから、乳児期や思春期に栄養過多になってしまうと、その栄養を蓄えようとして、脂肪細胞の数が増えてしまいます。
・国立がんセンターの疫学調査によって、もっとも寿命が長いのはBMO値が25~27の軽度肥満の人だということがわかったのです。しかも、体にいいと考えられていた、やせている人(BMI18.9以下)たちの死亡率は、なんとBMI30以上の肥満の人と同じだったのです。具体的な数値で言うと、身長160cmの人なら、もっとも寿命が長いのは体重64~69kgで、体重48kg以下のやせている人は、体重77kg以上の太りすぎの人と同じぐらい寿命が短くなるということです。やせすぎは重度の肥満と同じぐらい体には悪いのです。国立がんセンターは、この調査結果についてはっきりした理由はわからないとしていますが、やせすぎの人の寿命が短くなるのは、脂肪だけではなく、筋肉の量も極端に少ないことが原因なのではないかと私は考えています。
・ジムに定期的に通っているのであれば、バイク運動やランニング運動をゆっくりと行うのがいいでしょう。ただし、ランニングやバイク運動では息が切れるほどの運動は必要ありません。私たちの体は、あせらずゆっくりとした運動さえすれば、赤筋が発達し、ミトコンドリアが増えるようにできているのです。長く運動が続けられるのは、その人が持つ限界の60%程度の運動量です。運動量の60%と言われてもピンとこない人もいるでしょう。ランニングやバイク運動など、トレーニングの運動量の「ほどよさ」を測る基準がひとつあります。それが「心拍数」です。「ほどよさ」の運動量がわかりにくければ、最大心拍数の60%になるように抑えながら行うとちょうどいい具合になります。
・ミトコンドリアは体の機能を動かすエネルギーをつくる、とても大切な場所です。それだけに、ミトコンドリアを増やすのには1年、少なくとも1ヶ月くらいはかかるのではないかと思われる方が多いようです。ところが、ミトコンドリアの変化は、意外と短時間で起きます。どのくらいかと言うと、ミトコンドリアは1週間もあれば増えてくれるのです。60%の運動量のバイク運動を毎日2時間ほど続ければ、わずか1週間で1.3倍、1ヶ月後には2倍にまでミトコンドリアが増えるという結果もあるくらいです。
・瞬発的な力を鍛えると思われがちな「筋トレ・ウエイトトレーニング」も、やり方を間違えなければ立派な持久力のトレーニングになります。むしろ、一番効率的にミトコンドリアを増やすにいあ、少し強めの力、筋肉の80%くらいの力を出すことです。1分間くらいでいいですから、80%の強さの力を出し、それを1日10回繰り返すだけで、1~2週間もすれば、効率よくミトコンドリアが増えてくれます。赤筋はとにかく長時間運動をすれbあ効果的と誤解してしまうかもしれませんが、ミトコンドリアを増やすには短時間で少し強めの力を出すほうが効果的なのです。
・じつはミトコンドリアは、筋肉の中でも姿勢を保つための筋肉、もっと具体的に言うと、「背筋」と「太ももの筋肉」にたくさん含まれています。ですから、背すじを意識すれば体は健康になり、見た目にも内面的にも自然と若くなるのです。スクワットなどが健康にいいのも、中腰の姿勢になると太股の筋肉が使われるためと言えますし、背すじをのばすことを重視する社交ダンスは、社交やスポーツとしてだけでなく、健康法としても優れているのです。
・マウスには体毛があり、人間には体毛がないので単純に比較するのは難しいのですが、マウスの例を人間にあてはめると、摂氏12度の水の中に10分いるだけでミトコンドリアが増えると考えられます。「12度の水の中に10分も!?」そう思うかもしれませんが、これはあくまで「水の中」というデータです。ちなみに、実際私たちは古くから「体を寒いところに置く習慣」を続けています。その代表的な例が「寒中稽古」です。剣道や柔道などの武芸スポーツでは寒中稽古をよく見かけますが、古い知恵なのでしょう、実践したことがある人であればわかると思いますが、寒中稽古を1週間続けると、体がポカポカしてきます。また、寒中水泳を毎年続けていらっしゃる方もいると思いますが、その水温は初級者でも約12度で、運動後は同じように体がポカポカしてきます。これはミトコンドリアが活発化しているためです。そのまま寒い状態が続けば、体は機能できず死んでしまいますから、一生懸命ミトコンドリアを増やして、エネルギーの量産態勢に入るのです。ですから、「寒いところで運動をする」ことがミトコンドリアを効果的に増やす方法のひとつと言えます。でも、寒いところで運動をするのは少し骨が折れる、という人も多いと思います。そんな人にはもっと手軽な方法もあります。それが「サウナに入った後に水風呂に入ること」です。
・実験の結果、70%にカロリー制限をしサルではしわや白髪が少なく、体毛も抜けていなかったのです。目の輝きも違います。カロリー制限の食事をしていたサルは精悍な顔つきですが、一方で普通のサルはボーッとした感じです。人間ですと若いか年配かは一目見れば誰でもわかります。これはサルでも同じことで、一目見れば若々しいか、老けているかは一目瞭然なのです。さらに、カロリー制限をしたサルでは、生活習慣病や老年病で亡くなる数が3分の1にまで激減したのです。当然、平均寿命もカロリー制限をしたサルのほうが長くなっています。サルは人間ともっとも近い動物ですので、人間も70%のカロリー制限で長寿になると考えられます。
・ここで言う必要な栄養とはミネラル、ビタミン、アミノ酸です。ではどのようなバランスで食事をすればいいのかと言うと、カロリー源としての炭水化物とタンパク質と脂質を「3:1:1」くらいの割合で摂ればいいのです。カロリーを減らすからといって、脂質を完全に除いてはバランスがよくありませんので注意してください。
・動物を用いた最近の研究でも、総カロリー量を減らすというよりも、空腹感を与えるほうが、寿命をのばすことができるという結果が出ています。空腹になると体はもっとエネルギーをつくらなければいけないと認識するため、ミトコンドリアを増やしてエネルギーをつくろうとするのです。一日断食し、その次の日は思う存分食べても、効果があります。
・ミトコンドリアを増やすならば、運動前に食べ物を口にしてはいけません。むしろ、積極的におなかを空かせて運動することでミトコンドリアを増やすことができるのです。
・内臓脂肪をため込んだメタボが生活習慣病を引き起こすのは間違いありませんし、カロリー制限によって、生活習慣病を予防できるのも本当です。一方、やせすぎの人、コレステロールの少ない人の死亡率が高いのも本当です。このふたつの比較は、じつは「病気になりやすい」か「死亡率が高い」かの違いだったのです。そしてその違いは年齢によってはっきりと分かれています。メタボにより糖尿病になる平均年齢は約50歳、一方、やせすぎにより死亡率が高くなるのは、男性で70歳から、女性で75歳-ということなのです。私たちは65歳を境に、血液中のコレステロール濃度が自然に下がってきます。ですから、65歳以下では、食べ過ぎないことで内臓脂肪をため込まないようにし、生活習慣病にかからないようにする必要があります。そして65歳を過ぎたら、無理に食べる必要はありませんが、栄養たっぷりの食事をとって体力をつけ、やえすぎによって筋肉が衰えないようにすべきです。コレステロール濃度が下がると免疫機能が低下して、がん、脳血管疾患、呼吸器疾患の死亡率がいずれも高くなってしまうのです。
・食事と生活の質について、大変興味深いことがわかりました。血液中のカロテンの量が多い高齢者は生活の質が高い、つまり介護なしで元気に生活ができていたのです。血液中のカロテン量の多い人は、カロテンを多く食べている傾向があるので、カロテンをたくさん食べるほど老化の割合が少なく、元気に暮らしているという証明がなされたのです。カロテンはにんじんや赤ピーマンの色のもとにもなっている抗酸化物質です。ちなみに抗酸化物質とは、活性酸素を減らし、遺伝子を守ってくれる物質を総称した言葉で、ミトコンドリアを活性化させる役割もあります。ビタミンをはじめ、トマトに含まれるリコピン、鮭のピンク色のもととなっているアスタキサンチンなども同じ抗酸化物質です。なぜ野菜や果物が体にいいのかというと、植物には多くの抗酸化物質が含まれているからなのです。
・同じようにほかの抗酸化ビタミンもサプリメントで摂りすぎると、がんになりやすいなどの弊害が出ることがわかってきましたので、摂りすぎには気をつけてほしいと思います。以前まで、ビタミンCはいくら摂っても害はないあと信じられていたので、これ以上摂取すると体にyくないという上限値は定められていなかったのですが、現在は、一日1グラムを上限値として定めています。一日1グラム以上摂ると体に害があるかもしれないという基準です。風邪をひいたときなど、免疫機能を上げなくてはならないときは、ビタミンCをたくさん摂る必要はあります。しかし、必要以上に摂れば、ビタミンCでも害が生じてしまうのです。
・もっとも重要なことは、普段の生活をどのような気持ちで送るかということなのです。活性酸素が生まれる場面をひとつひとつ読み返してみれば、あることに気がつきます。
○活性酸素がつくられるのは、ストレスが多いとき
○活性酸素がつくられるのは、エネルギーが急に必要となったとき
○活性酸素がつくられるのは、急に酸素が入ってきたとき
○活性酸素がつくられるのは、早食いのとき
おわかりでしょうか。急な変化を生んだとき、また、心に余裕がないときに活性酸素は生じてしまうのです。そうではなく、ゆっくりとしたときこそ、豊富なエネルギーをつくるように私たちの体はできています。「ゆっくり」「ゆったり」とした生活が、活性酸素を少なくし、ミトコンドリアを増やすのです。ただし「ゆっくり」という言葉に甘えてなにもしなければ、活性酸素の発生は抑えられるかもしれませんが、ミトコンドリアを増やすことはできません。ミトコンドリアを増やすには、「エネルギーが必要だ」と感じさせることです。それは、「心のエネルギー枯渇状態」をつくればいい、ということです。人生を楽しんでいる人はエネルギーがあるから若く見える・・・ように感じますが、じつはそうではありません。人生を楽しむことによって、心に「エネルギーが足りない」と感じさせるからこそ、体がエネルギーをつくろうとし、その結果、若くなるのです。つまり好奇心をもって、とにかく人生を楽しんでみる。その姿勢を忘れないでほしいと思います。本書の最後の総仕上げとして、焦らず急がず、ゆっくりとした生活を送ること、そして、心に「エネルギーの必要性」を訴えかけるべく、もっと人生に「欲張り」になって生きることを実践してほしいと思います。
<目次>
プロローグ
第1章 健康で長寿の人ほど「体内」が若い
なぜ「鶴は千年、亀は万年」なのか
マラソン選手の体は限りなく「鳥」に近い
「ファイト一発!」は仕事の後で役に立つ
食用油は「中鎖脂肪酸入り」を使いなさい
人間の寿命は、はるか昔から120歳と決まっている
元ヘビー級チャンピオンのモハメド・アリが受けた誤解とは
老いは「体を休めた人」からやってくる
お酒に強くなった人は「食道がん」に気をつけなさい
ミトコンドリアは「認知症」も予防する
「がん」の原因と「老化」の原因はまったく同じ
最後の防衛本能「アポトーシス」のはたらきとは
男性の大厄は、科学的にも「42歳」である
第2章 「老いる仕組み」と「若返る仕組み」
浦島太郎は「おじいさん」ではなく、「病人」になっていた!
私たちの遺伝子は「1日に10万カ所」も傷ついている
人間は生まれつき老化しないようにできている!
地獄の沙汰も金次第、体のことはエネルギー次第
なぜ女性は男性よりも長生きするのか
「加齢臭」は健康状態を知らせるサインである
正座をした後、すぐに立ち上がってはいけない
なぜ脳梗塞は2時間以内の治療が必要なのか
早食いは「老いる仕組み」への第一歩と心得よ
ストレスが活性酸素を発生させる
香さんが告白したバセドウ病の症状とは
エネルギーとは「貯金のできないお金」である
90歳からでも基礎代謝を増やすことはできる!
体にとって食べ物は「電気の素」である
「運動をすると短命になる」というウワサは本当か?
呼吸で取り込んだ酸素は、1~2%が活性酸素となる
マイルド・カップリングが活性酸素の発生を防止する
ミトコンドリアの「量」が「質」をつくり出す
第3章 メタボはエネルギー代謝の病気である
内蔵脂肪を減らす「唯一の方法」とは
「やせ体質」か「太め体質」かは、思春期までに決まっている
なぜ三谷幸喜さんは徹夜仕事で「げっそり太る」のか
メタボは体によくないが、「やせすぎ」はもっと悪い
脂肪細胞はやせている人の味方をする
食事は30分以上を目安に食べなさい
満腹ホルモンも、体内時計で動き出す!
糖尿病も「ミトコンドリアの不調」からはじまる
第4章 ミトコンドリアを増やす運動習慣
まずは「マグロトレーニング」をはじめなさい
最大心拍数は60%がちょうどいい
「筋肉痛にならない」は、体が衰えきった証拠である
「短時間」で効果を出す有酸素運動とは
「社交ダンス」に隠された超健康法の秘訣とは
古来より伝わる動きほど健康にいい
「不自然な姿勢」を習慣化すれば若くなる
確実にやせて、確実にリバウンドのない方法とは
高齢になったら、ちゃんと「少量の活性酸素」を出しなさい
サウナに入った後は、水風呂に入りなさい
第5章 おなかを空かせて若くなる
不老長寿の極意は「摂らないこと」にある
長寿の研究は、「パン酵母」からはじまった
寿命をのばす「長寿遺伝子」とは
サルもひと目見れば「若い」か「年配」かがわかる
栄養バランスは「3:1:1」で摂りなさい
「週末断食」が眠っていたミトコンドリアを呼び覚ます
運動はおなかを空かせてはじめなさい
「やせないこと」と「空腹になること」はどう使い分けるのか
緑・赤・黄色の野菜を食べなさい
ビタミンCの摂りすぎはがんになる!?
「生殖能力」を招くカロリー制限の危険とは
もっとも理想的な食生活は「感謝」によってつくられる
ミトコンドリアは「ゆっくり」の先にあらわれる
エピローグ
面白かった本まとめ(2011年下半期)
<今日の独り言>
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