<金曜は本の紹介>
「新宿歌舞伎町駆けこみ寺 解決できへんもんはない(玄 秀盛)」の購入はコチラ
この本は、今まで私が読んできた本の中で一番衝撃的な内容でした!!玄 秀盛さんの自伝及び新宿救護センターでの活動内容を綴ったものです。
玄 秀盛さんは、大阪は西成で、密入国した韓国人の父と在日韓国人の母の間に生まれ、成人するまでに「4人の父」と「4人の母」のもとを漂流します。
親からの虐待は日常茶飯事で、小・中学校時代は転校を繰り返し、家出も数えきれないほどします。
中学時代からグレ始め、補導歴8回、逮捕歴も5、6回はあります。
幼い頃から「食う」のに精一杯で、自分の食費を稼ぐために小学校時代から新聞配達を始め、経験したアルバイトの数は30以上で、成人後は建設・不動産・サラ金・スナック・レストラン・居酒屋・探偵調査会社・健康食品会社など、自ら経営者となり次々と事業を起こします。
生き抜くためならなんでもやり、ヤクザとの抗争も絶えなかったようです。
30代、知人の紹介で比叡山に通うことになります。「生き仏」と言われる天台宗僧侶・阿闍梨(あじゃり)さんのもと、32歳で「得度」をして出家します。
平成7年には、阪神・淡路大震災を神戸のど真ん中で体験し、未曾有の天災をこうむった被災者を目の当たりにし、半年間テント村で活動します。
そして、平成12年10月31日、献血結果からHTLV-1という、白血病のウイルスの一種の保有者であることがわかります。千人に1人の割合で発症し、「発症すれば1年以内に死亡する身」と知ります。
失意、絶望、苦悩、深く死生観と向き合った末、「自分の生きた証」を残すために、それまでの生活を全て捨てます。
そして、
NPO法人日本ソーシャル・マイノリティ協会http://www.jsma.jp/を立ち上げます。
社会的弱者が、なんら差別を受けることなく、平等に自己の権利を主張することができ、自らも社会人としての責任を果たすことのできる、フリーで、フェアで、健全な社会秩序の建設を目指すものです。その具現化が24時間、365日、相談を受け付ける「新宿救護センター」という名の駆け込み寺、創設でした。
この本を読むと、若いうちに苦労した方が、やはりより良い人生を過ごすことができるのかなぁと思います。また様々なシチュエーションでの対処法を身につけることができる良い本だと思います。とてもオススメな本です。
以下は、この本でポイントと思った箇所です。
・私のケンカの基本は「時間をかけないこと」である。相手に顔を覚えられる前に、鉛筆や箸で目をつくか、腹を刺して逃げた。通常3秒、長くても5秒で勝負をつけた。逃げ足はめっぽう速く、相手に捕まることはほとんどなかった。4年間、新聞配達をしたおかげで脚力がついていたのである。
・業を煮やした私は、母に切り出した。「もう、たいがいにしとかな。ものの1年以内にな。男3人も変わったら、もうここらでええやろ。子どもと男と、どっち取るのん?」母の出した答えは、小学校1年生の梅雨の日に私に突きつけたものと同じだった。「男取る」あれほど恋焦がれた産みの母との生活は、わずか8ヶ月で終焉を迎えた。17歳の私は再び母に捨てられ、一人、神戸の家を出た。
・人の仕事を盗むのは早かった。必死で親方の仕事を頭と体に叩き込み、なんでも1回で覚えた。思えば、昔からそうだった。寿司屋時代も、例えば先輩職人がひらめをおろしているのを見れば、仕事が終わった後、自分でおろし方を図に描き、包丁を45度にして、中ビレから背開きにするなどと、詳しく書き込みをした。割烹では、一品一品、料理の段取りから調味料の量にいたるまで、ことこまかに書いて、自分流のアンチョコを作った。
・創意工夫も忘れなかった。いかに効率よく作業をするか。研究し、工夫するのがもともと好きだった。寿司屋の頃もそうだった。シャリを握り、サビをつけ、ネタをのせるという手順。先輩職人が10秒かかるところを、無駄を省いて、最速5秒で握る方法をあみだし、習得した。
・こちらで話がつけば、またこちらと、ヤクザの脅し、すかしがやむことはなかった。言いがかりをつけられ、トラブルを吹っかけられるのも日常茶飯事だった。3日間軟禁されてあり、「ピストル、用意したろか」と、殺されかけたこともあった。車のトランクに詰められて六甲山まで連れていかれ、丘の上から投げ落とされた経験もある。それでも、私は全然、怖くはなかった。なぜかと言えば、私の根底にあるのは、あの小学校の時の苦しさだったからである。生きるのに必死だった。食うのに精一杯だった。生活のすべてが大人の力で左右され、自分では何一つ選ぶことができなかったあの頃。それに比べれば、なんでも自分で選べる。これ以上のぜいたくはないと思っていた。だからどんな脅しにもひるむことはなかった。
・困ったのは「十善戒」である。出家にあたって、以下のことを誓わなければならない。
1 不殺生戒 殺生してはならない。自殺・他殺・依頼殺。
2 不偸盗戒 盗んではならない。
3 不邪淫戒 邪淫してはならない。社会で認められないもの。
4 不妄語戒 嘘をついてはならない
5 不両舌戒 二枚舌の嘘(矛盾したこと)を言ってはならない。
6 不悪口戒 他人の悪口を言ってはならない。
7 不綺語戒 おべんちゃら、事実と違う賛辞を言ってはならない。
8 不貪欲戒 貪欲にむさぼってはならない。
9 不瞋恚戒 怒ってはならない。
10 不邪見戒 邪見をもって観察してはならない。
人の道をはずすなという戒律と、外道で生きている私。十カ条とすべて相反する生き方をしている私には、とても承諾できる代物ではなかった。
・エイズウイルスに感染したと思い込んだ私は、通知を受け取ってから2日間、ろくなことを考えなかった。まだ40代半ば。当然のように、これから50年は生きるつもりでいた。明日があるのが当たり前だと思った人間が、今日しかないと切羽詰まった瞬間。<明日死ぬんやったら、やり残したことなんやろ?>そう考えた。<こいつら5人、殺らなあかん>最初に思ったのは、家族のことでも会社のことでもなかった。どうしても許せない5人の名前が次々と頭に浮かんだ。普通なら、こんな時、まずは家族のことを考えるのだろうが、私にはその発想がなかった。
・DVで警察に行く時は、必ず2人以上で行くこと。両親でも兄弟姉妹でも友達でもいい。1人の場合だとあしらわれることもある。2人なら警察の対応が違う。複数で来たら、警察も無視できない。被害者が娘さんだった場合は、両親が付き添うことを勧める。警察でも女性センターでも、被害を訴えるのは「大きな声で」が鉄則だ。多少、オーバートークで言うくらいでちょうどよい。警察に訴える前に、女性センターや福祉事務所に相談したことがあれば、それも伝える。警察と女性センターで連絡を取り合い、記録をリンクさせる。あとは、警察の判断により、状況によっては警察が間に入り、加害者に直接「警告」をしてくれる。この警告で、おおむね暴力が収まるケースが多い。万が一、警告にしたがわず、相手がさらに暴力行為に及べば、逮捕、起訴となる。
・昨今の子供の世界は携帯電話でつなっがている。携帯がすべての情報の発信源であり、受信元となる。あえて携帯を持たすのであれば、親名義で契約し、子どもには黙って、通信履歴を電話会社から取り寄せておく。それさえあれば、万が一、子どもが行方不明になっても足跡は残る。こそこそ子供の引き出しを調べるより、携帯の通信履歴のほうがよほど確かな情報が入手できる。
・救護センターには、毎日のように家出捜索の相談がある。警察に家出人捜索の届出を済ませていない場合は、まずその手続きをするようアドバイスする。家出人の絶対数が多いため、届出をしたからといって、警察が全国をくまなく歩いて探し回ってくれるわけではない。ただし、届出をする際に少し「コツ」がある。家出人の中でも「特異家出人」という枠がある。これは事件性があると認められたケースを指し、警察も本腰を入れて捜索に当たってくれる。それから「公開手配、お願いします」そう言えば、公開捜査の手続きを取ってもらえる。名前と顔を公表し、チラシを作って、全国の警察、交番に張り出してもらうのだ。チラシ作成費は個人もちである。ちなみに、業者で1万7千枚のチラシを印刷するには約10万円かかるが、救護センターの場合は、ボランティアの輪転機を使うため、5万円で済む。
<目次>
はじめに
第1章 運命
4人の母と4人の父のはざまで/実母に捨てられた梅雨の日/なんやの、この子/異母弟妹の子守りと内職に明け暮れた少年期/韓国から来た海女のおかあちゃん/韓国人転校生への悲痛な洗礼/ひんぱんに繰り返した家出と放浪/産みの母との5年ぶりの再会
第2章 孤独
養父に熱湯を浴びせられて/家族に見捨てられた一人暮らしの中学生/カツアゲ、シンナー、婦女暴行ざんまい/3秒勝負がケンカの鉄則/職場はシンナー吸い放題の自動車修理工場/さらば西成。明石で始めた実母との新生活/思春期の182錠服薬自殺/母の男に翻弄された日々への決別
第3章 流転
さすらう17歳の住み込み修行/同級生と21歳で結婚/初めて手に入れた自分の城/背水の陣を切り抜けるかまし一発と創意工夫/極悪非道・人夫出し稼業に挑戦/3年でビルが建つ、あこぎな商売の秘訣/破綻と繁栄の人間模様/母と息子の決定的絶縁
第4章 混沌
会社を作るのが趣味/うたかたの女遊びと幻の一家だんらん/ヤクザと抗争する一匹狼/孤独な男の捨て身の強さ/戸籍に秘められた3つの真実/初めて出会ったルーツ韓国
第5章 戦慄
坊主の世界って、どんなもんやろ?/生き仏・酒井大阿闍梨との出会い/誓うに誓えない十善戒/いい加減な在家出家修行/一日一生という言葉に導かれて/ひたすら歩き続けた運命の東北地方巡礼/自分に勝ったと実感できた瞬間/行の果てに宿った半端な仏心
第6章 震撼
平成7年1月17日、午前5時46分/テント村での喜怒哀楽/被災地で痛感した金のありがたみと人のぬくもり/夜の街の驚異的ネットワーク/裏切られたのも女、助けてくれたのも女/神戸から来たトラブル・ネゴシエーター/会社解散と家族喪失で関西時代に幕引き
第7章 怒濤
大学臨時講師から弁当屋まで複数の顔を使い分ける/死と背中あわせの日々/突然訪れた不治の病の宣告/発症すれば余命1年/俺の人生なんやったんやろう/治療法はありません/本屋で巡り合った「NPO」の3文字/生きた証を残したい
第8章 発心
歌舞伎町からの自己再生始動/色あせて見えた金もうけの世界/弱者のための駆け込み寺構想/金もない、事務所もない/自宅と生命保険を担保に勝負に出た/新宿救護センターが産声を上げた日/誹謗中傷を全身全霊で受け止める覚悟
第9章 葛藤
半年間に寄せられた2500件の悲鳴/実例◎バタフライナイフで脅す同棲相手(DV)/傾向と対策◎DV被害からのより賢い逃げ方/傾向と対策◎配偶者間暴力と恋人間暴力の違い/傾向と対策◎DV被害の訴え方/実例◎老親を包丁で襲う30代の娘(家庭内暴力)/傾向と対策◎家庭内暴力の特徴/傾向と対策◎幼児虐待と介護虐待の実情/実例◎出会い系サイトとナンパの危ういワナ(家出)/傾向と対策◎理由なき家出とその予防法/傾向と対策◎家出人捜索のしかた/実例◎援助交際に端を発したわいせつ写真送付(ストーカー)/傾向と対策◎ストーカー被害は早期発見・早期治療/傾向と対策◎ストーカー被害の訴え方/実例◎えじきにされた雪だるま式借金のカラクリ(金銭トラブル)/傾向と対策◎金銭トラブルにケリをつける法
第10章 烈烈
救護センターは「DV・家出・家庭内暴力」の3原則/行政にできないこと、救護センターだからできること/井の中の蛙・NPOの現状と課題/カウンセリング我流10カ条/今日の己に明日は勝つ/全国へ、全世界へと広げたい駆け込み寺の輪
面白かった本まとめ(2006年)
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<今日の独り言>
初めての人間ドッグへ行ってきました。胃と大腸の内視鏡の検査の辛さを認識しました^_^;)脳のMRI検査ってあんなにうるさいとは知りませんでした^_^;)結果は・・・です^_^;)