A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

ザ・バースデイ@日本武道館 2012.12.19 (wed)

2012年12月21日 00時22分22秒 | ロッケンロール万歳!


The Birthday  
TOUR 2012 "VISION" FINAL
NIPPON BUDOKAN

ミッシェル・ガン・エレファント(以下TMGE)はフジロックをはじめ何回か観たが、一番印象に残っているのはMTV JAPAN主催の野外イベントである。何処か忘れたが湾岸方面の開発途中の空き地で開催された。野外なのにアルコール禁止で、我々の仲間が何処かからビールを1ダース仕入れてきて救われたが、他の来場者は不満たらたらの様子だった。いくつかバンドが出演したが目当てはシャーラタンズだった。トリのシャーラタンズの前にTMGEが登場、その途端にそれまで酒抜きで盛り上がらず大人しかった観客が一斉に前方へ殺到し猛烈なモッシュが始まった。3rdアルバム「チキン・ゾンビーズ」がブレイク中だったがこれほど熱狂的人気だとは想像していなかったので驚いた。客のノリの凄まじさに肝心の演奏は覚えていない。TMGEが終わると一気に観客が掃けてシャーラタンズは最前列でゆっくり観ることが出来た。

その後豊洲で開催された第2回フジロック・フェスティバルにも出演。彼らの出演は比較的早い時間だったので会場へ向かって歩きながら音だけ聴いた。あとで聞くとモッシュ過多による圧死危険のために何度か演奏が中断されたとのこと。そのフジロックにはブランキー・ジェット・シティ(以下BJC)も出演していた。TMGEとBJCはデビューが同時期だったこともあり比較されることも多くファンが共通していてメンバー同士も仲が良かった。TMGEのチバユウスケとBJCのベンジー=浅井健一はしゃがれ声とハイトーン・ヴォイスと声質は違うがどちらも男っぽい硬派ロッケンローラーの両巨頭だった。同じロッケンロールでも1980年代にデビューしたヒロト&マーシー(当時ザ・ハイロウズ)のサービス精神旺盛なパフォーマンスとは一味違うストイック&クールな佇まいがバブル崩壊後に表舞台に登場したこの2者の特徴である。

両者が共に「タンバリン好き」であることは特筆すべきであろう。

▼TMGEは衣装と同じ黒。



▼BJCは情熱の赤。



▼チバが元BJCの照井利幸と結成したROSSOでも。かなりのタンバリン・フェチである。



他にも歌詞の世界に相似性があり、革ジャン好きでバイクの歌を唄っているというのも共通している。またバンド解散後に元メンバーも交えいくつものバンドの集合離散を経て現在もロケンローの第一線で活躍中、チバがRockin’Blues、ベンジーがSexy Stonesとそれぞれ自主レーベルを立ち上げ、どちらもグレッチのギターを愛用しているという異母兄弟のような二人。奇しくもThe Birthdayの最新アルバムに「PINK PANTHER」という曲があり、ベンジーのシャーベッツの最新作のタイトル&オープニング・ナンバーは「STRIPE PANTHER」という偶然にしては出来過ぎの事実に瞠目。

チバが2006年にTMGEの盟友クハラカズユキらと結成したThe Birthdayは今までザ・クロマニヨンズ、浅井健一、ギターウルフ、モーサム・トーンベンダー、ストレイテナー等との対バンで観たことがある。イカしたロケンロー野郎ばかりの個性派揃いの中でも、チバを核にしたThe Birthdayの縦横無人なロック魂はあたかも黒いダイヤモンドのように燻し銀の輝きを放っていた。

ほぼ1年に1作のペースで順調にアルバムをリリースし、2010年にギタリストの交代はあったもののツイン・ギター4人組の編成は崩していない。作詞はすべてチバが手がけており最新作「VISION」のタイトル通り日常をクールな視点で映像化した世界を描き出す。

『見えてるものはヴィジョンだけど、でも、見えてないものもヴィジョンだから。そこにすごく意味があると思ったからだね。何秒か前に見えてたこともヴィジョンだし、見えないものもヴィジョン。どんどんヴィジョンが増えてくんだよ。そう俺は思ってる。』(NEXUS WEB インタビュー by 鹿野淳より)

個人的に特に好きなのはこのフレーズ♪1984年に何があったんだっけ 俺は忘れちゃったけど それで何か変わったかい?♪from「Kicking You」。チバも40代半ば、ノスタルジーには意味がないと看破しつつも浸ってしまう矛盾。当ブログのように。

『俺が思うには、昔を振り返って「この時代はよかった」って言う人もいるかもしれないけど、その人もその時点では「嫌だ」って言ってたと思うんだよね。みんな嫌いなんだよ、その時その時が。でも、それって、自分を時代に投影しているだけなんだよ。「こんなクソみたいな時代に生まれて」って思ってる人は、自分がクソみたいなことになってるからそう思うだけ。時代なんて、一人一人の考え方次第だと思うよ。』(同上)

全国28ヵ所を廻った「VISION」レコ発ツアーの最終公演は5年ぶりの日本武道館。客層は20~30代中心で革ジャン男子が目につく。ベンジーの客層と似ているがより硬派な印象。武道館クラスだと大抵設置されるスクリーンヴィジョンがない。ステージ真ん中にシンプルな機材が固まって設置されておりライヴハウスのセッティングそのまま。オープニングSEは♪Happy Birthday~♪で始まる60年代USドゥワップグループThe Crestsの「Sixtenn Candles」。ふらっと登場し楽器を構えるとそのまま殆ど定位置から動かずひたすら演奏に没入するステージングに派手さはないが、音が目の前で鳴っているかのようなリアルさで迫ってきてクラブクアトロと違いがない。客が振りを揃える訳でもなく思い思いにノッているのも自由度が高くていい。私の右の若者グループは激しく踊り狂い声援を送っているのに、左のバンドマン風の4人組は腕組みして微動だにせずステージに見入っている。チバもMCで煽るでもなく淡々と歌い続ける。ヒット・ナンバー3連発で締めた100分の本編のあと2度のアンコール。最後になってコール&レスポンスで盛り上げる演出が憎い。25曲2時間半に亘るロケンロー・パーティーで真っ白な灰になれた。エンディングSEはエルヴィス・プレスリー「Love Me Tender」だった。



<Set List>
1. 黒いレディー
2. ゲリラ
3. Buddy
4. ROKA
5. Riot Night Serenade
6. KICKING YOU
7. ホロスコープ
8. YUYAKE
9. SHINE
10. 爪痕
11. Red Eye
12. LOOSE MEN
13. PINK PANTHER
14. SPACIA
15. LOVE SICK BABY LOVE SICK
16. カレンダーガール
17. OUTLAW II
18. なぜか今日は
19. さよなら最終兵器
20. BECAUSE

-encore1-
21. STORM
22. 涙がこぼれそう

-encore2-
23. 泥棒サンタ天国
24. ローリン
25. Ready Steady Go

バースデイ
これが男の
ロケンロー

来年早々ベンジーとザ・クロマニヨンズのニュー・アルバムがリリースされツアーも始まる。このままのスピードでハッピー・ロケンロー・イヤーと行こうか。


コメント (3)
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向井千惠&いとうまく&工藤冬里/蔦木俊二/マヘルetc.@高円寺 ShowBoat 2012.12.18 (tue)

2012年12月20日 01時39分48秒 | 素晴らしき変態音楽


Stoned Soul Picnic Vol.50
向井千惠&いとうまく&工藤冬里/蔦木俊二/Maher Shalal Hash Baz/ソルジャーガレージ with しまりえ子

Stoned Soul Picnicは伊藤まく(現いとうまく)主宰ジャパノイズ・ネット独自企画ライヴとして2003年3月にスタートした。Vol.1は横浜駅近くの美術予備校の駐車場(!)が会場だった。出演は伊藤まく(g)+Novko(さとうのぶこ、舞踏)+長久保(B,ex.C.C.C.C.、宇宙エンジン)+あだち麗三郎(Per)等。Vol.2は今はなき代官山クラシックスで、まく+タバタミツル他の共演に加えイギリスからCindy Talkが出演。Vol.3はマリア観音(木幡東介)等。以来9年半も続きこの日で50回目の開催を誇る長寿イベントである。ノイズ~ポップを自由に泳ぎ廻る伊藤まくの様々なユニットを中心に若手からベテラン、海外アーティストが多数出演している。パンクやノイズ・オンリーのイベントは他にもいくつか開催されているが、ジャンルを限定せず現代日本カルチャーの地下水脈を掘り起こし個性的な音楽家や舞踏家を紹介するこのイベントの意義は大きい。私は灰野さんが出演した同イベントに何回か参戦したことがある。灰野さんとまく氏のデュオは2008年12月のStoned Soul Picnic Vol.19から「沙無座」というユニットになり今年11月の青山ノイズVo.4で3回目の出演。灰野さんの多彩な活動の中でもまくのコアに偏らない演奏が独特のアヴァンポップ・ワールドを現出するユニークなユニットである。因みに「青山ノイズ」は2010年8月から始まったジャパノイズ・ネット企画イベントでStoned Soul Picnicシリーズの拡大版といえる。

記念すべきVol.50 には正に現代を代表する個性派アーティストが出演した。イベント告知ビデオをご覧いただきたい。こうした小規模なイベントの告知ビデオを作成すること自体、一部のマニアではなく幅広いリスナーにアピールしようというまく氏の基本姿勢が伺える。



平日の夜にも関わらずShowBoatにはなかなかの賑わい。
トップはイラストレーターでもあるギターインプロヴァイザーの清水沙=ソルジャーガレージとダンサーしまりえ子のデュオ。ソルジャーガレージについては知人から「灰野さんに似た若手アーティストがいる」と勧められいつか観たいと思っていた。ルックスは灰野さんとは対極の短髪ベースボールキャップのDJ風。ギターは最初ジャズマスターかと思ったらテスコのヴィンテージだった。このギターのクリアトーンの音が素晴らしい。深いリバーヴは確かに灰野さんっぽいが、その演奏には情念性とは逆の無機的な即物性が感じられる。歪ませても透明感溢れるサウンドは昨日のバニビじゃないが北欧の風が吹くようだ。ECM系北欧ジャズやポストロック/音響派に近い感触。共演のしまのダンスは身体のしなやかさを十二分に発揮した滑らかな動きで解き放たれるギターの深いリバーヴの海の中を泳ぎ回る。極めてストイックでクールな空間を産み出し30分間夢想の旅に誘ってくれた。


(撮影・掲載に関しては主催者・出演者の許可を得ています。以下同)

続いて工藤冬里率いるマヘル・シャラル・ハシュ・バズ。観るのは久々だが、6月の新宿シアターPOOのライヴでは演奏はほとんどせず寸劇めいたナンセンスなパフォーマンスに終始したと聞いていたから一体どんなステージなるのか不安かつ楽しみだった。彼らのライヴに何か期待や先入観を持って挑むと必ずはぐらかされることになる、ということは身をもって体験してきた。音合わせだと思ってたらそれが本番だったり、途中で練習が始まったり、突然不可解な行動に出たり、冬里氏の演奏姿勢は常に観る者を戸惑わせることを狙っているのでは?と思っていたら、配布されたフライヤーの紹介欄に「劇団としてのバンドを率いる」と書かれており妙に納得した。噂に聞いた新宿公演に比べればこの日のマヘルは30分間一応ちゃんと曲を演奏しただけでもまともなパフォーマンスだったといえる。6人のメンバーは譜面を見て演奏、冬里氏はパソコンに映し出される詩を朗読する。3.11以来冬里氏のパフォーマンスはメロディーではなく言葉の洪水に変わった。ソロやセッションでも詩の朗読が大きな比重を占める。「地震」「津波」等震災をイメージさせる言葉も出てくる。震災の影響について話を聞きたいものだ。たぶんはぐらかされるだろうけど。



3番手は青山ノイズにも出演した突然段ボールの蔦木俊二の弾き語りソロ。前回「酔っ払っている」と言っていたがこの日もライヴ前に焼酎の瓶が4分の1に減っていた。青山ではケヴィン・エアーズやビートルズ等のカヴァーも歌ったが今回はオリジナル曲のみ。突段の既発曲や新曲をアコギ弾き語りで披露。前のめりの性急な歌い方がフリクションやミラーズ等東京ロッカーズを思わせる。当時の突段は東京ロッカーズとは次元の違う別格の存在だと思っていたが、30余年経ってみて逆に80年代初頭のスタイルを継承している感じなのが面白い。



最後にスペシャル・セッション=向井千惠&いとうまく&工藤冬里。元々は「いとう向井」に冬里を迎えるという趣旨だったらしい。ステージにはエレピ、ドラムス、マイクスタンド2本がセットされる。全員がマルチプレイヤーなので誰が何をいつ演奏するか予測不可能である。SEが鳴ってるうちに冬里氏がアコギをポロポロ弾き始める。例によって音合わせかと思ったらそのままセッションに突入。向井がドラムをまくがテレキャスを演奏しヴォイスを被せるが我関せずとアブストラクトなフレーズを奏で続ける冬里に支配されたようにベクトルが定まらない演奏。纏まらないまま向井がエレピ~胡弓に移るが方向性は見えない。結局アコースティック版アモンデュールといった風情の混沌が40分続きそのまま終了。メンバー紹介でまく氏が「工藤さんは橋下に似ている」と言うと冬里氏が「あいつ嫌いなんだよね」と返すオチがついた。即興本来の原初の形と考えればこんなセッションも充分あり。よくあるフリージャズ崩れのモードを引き摺った即興やただのメチャクチャ似非インプロとはレベルの違う演奏だった。まく氏によるとリハでは「歌モノ」だったとのこと。共演者にとっても予定調和が通用しない冬里氏の本領発揮だったようだ。



繰り出そう
イカれた魂
ピクニック

<孤高のギターインプロ2作>
ソルジャーガレージ「赤い星」


蔦木俊二「ソロ&デュオ インプロヴィゼーションズ」

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バニラビーンズ/バンドじゃないもん!@新宿LOFT 2012.12.17 (mon)

2012年12月19日 00時54分14秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


「バニラビーンズ5周年対バン企画 風は吹くのか!? Vol.1 ~バニビ、バンドでやるもん!~」
出演:バンドじゃないもん!/バニラビーンズ

今年の夏の「アーバンギャルドの病めるアイドル五番勝負!!!!!」ツアーでアイドル戦国時代の現場を体験して以来、新世代アイドルの魑魅魍魎の森に踏み込んでしまった。様々なライヴイベントでアイドルと遭遇する機会も増え自らYouTubeやCDで音と映像を視聴してみた。ハロプロ系アイドル・AKB48関連・ももクロ等をテレビで観る分には悪くないし、インディーズ・アイドルのライヴはヲタ芸爆発のアゲアゲ状態が楽しいが、正直言ってCDで聴いて面白いかというと難しいところ。

その中でリスナーとして大きな興味を惹かれたのがレナとリサの二人組バニラビーンズ、通称「バニビ」である。北欧の風にのってやってきた、清楚でイノセンスな雰囲気を持つ“オシャレ系ガールズユニット”。2007年結成、3枚のアルバムと7枚のシングル、2枚のDVDをリリースしている彼女たちはアイドル五番勝負で観たが音楽的に80'sネオアコ・90's渋谷系の要素が強く、ノリノリのダンスビートではなくオシャレトロな歌とポージング(モデル風振付け)で魅惑するパフォーマンスが印象的だった。観客がヲタノリではなく手拍子で盛り上がるのも新鮮だった。掟ポルシェのプロデュース、ピチカートファイヴ「東京は夜の七時」やスピッツ「おっぱい」のカヴァー、さらにはミッシェル・ガン・エレファント「世界の終わり」、レッド・ツェッペリン「天国への階段」のカヴァーまでやる音楽性の豊かさ。キノコ頭担当レナが166cm、外はね頭担当リサが173cmというモデル並みのスタイルの良さと美脚。他のアイドルが"会いに行ける等身大の女の子"をテーマにしているのに比べ、バニビの完成されたパフォーマンスと少しハイソな佇まいは逆に80年代以前の"憧れのアイドル像"を受け継いでいる。

今年デビュー5周年を迎え初のバンド演奏による3rdアルバム「バニラビーンズIII」をリリースし、生バンド編成ライヴも開催された。月曜日のイベントは集客が難しいがさすがバニビだけありロフトは大勢のファンで熱気溢れる。年代も他のアイドルよりひと回り上の世代が目立つ。ライヴ後のファンサービス目当に物販を覗いたら特典はなしとのこと。その代わりモバイル会員用のバニビポイントや特典画像のダウンロードサービスがありスマホ時代の恩恵に預かる。

対バンはみさこ(神聖かまってちゃん)とかっちゃんによるツイン・ドラム・ユニット、バンドじゃないもん!、通称「バンもん」。出自からして異色のアイドルだが、フワフワのアイドル衣装でドカドカドラムを叩きながら歌うスタイルは、ボアダムズのYOSHIMIやあふりらんぽを思わせる。ヤリ過ぎハチャメチャなパフォーマンスやアイドルコールをパロッたMCが反感を買うかと思ったが、リスナーは快く受け入れているようだ。この変わり種デュオを容認するところにアイドル界の懐の深さを感じる。






バニビはg,key,b,dsの4人組バンドを率いての演奏。オシャレサウンドだからラウンジ風コンボかと思ってたらバリバリのロックバンド。セットリストはすべて3rdアルバムから。過去の代表曲「ニコラ」や「LOVE & HATE」さらに「天国への階段」のバンド・ヴァージョンが聴けるかと期待したがそれは次回のお楽しみ。1時間強のステージは、時にパフィ風、時にピチカート風、時にインディーポップ風と表情豊かな曲調、生バンドでもいつも通りの完璧なポージング(この日は「振付け」と言っていた)に感動する。アンコールはバンもんの二人を交えてTMGE「世界の終わり」。身長とスタイルの良さの違いが歴然としていて改めて感動。





本人たちが一番楽しんだと言っていたが観ている方も、特にアイドル門外漢にはとても楽しいロッキンアイドルライヴだった。来年春に予定されている2回目が楽しみでならない。


バニビには
ロック魂
溢れてる

北欧の風といえばこのアニメが大好きだ。

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百鬼夜行の回想録~フリージャズ編:ICP BOXとICP オーケストラ

2012年12月18日 00時33分22秒 | 素晴らしき変態音楽


オランダのICP=Instant Composers Poolの45周年記念BOXがリリースされた。1967年にミシャ・メンゲルベルク、ハン・ベニンク、ウィレム・ブロイカーにより結成された即興音楽集団である。1969年にジョスト・ゲバーズ、ペーター・ブロッツマン、ペーター・コヴァルト、アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハが設立したドイツのFMP Free Music Production、1970年にデレク・ベイリー、エヴァン・パーカー、トニー・オクスリーにより設立されたイギリスのIncus Recordsと並びヨーロッパ・フリーミュージック・シーンを牽引してきた組織/レーベルである。ICP全カタログと未発表音源52CD+2DVD、ポスター、分厚い写真集が入った重厚なBOXはハン・ベニンク自身のペイントが施された限定盤。死ぬまでに全部聴き通せるかどうか判らないが、一家に1セット家宝にすべき歴史的集大成である。しかしFMP BOX、Incus BOXがリリースされたらどうするんだろう.......。




初めて観た洋楽アーティストは誰だろう。中学の時金沢市観光会館で観たアメリカン・ミュージック・レビューとかいうミュージカルを除けば再結成キング・クリムゾンかアート・アンサンブル・オブ・シカゴかと思っていたがこれらは1984年であり、1982年5月のICPオーケストラが最初かもしれない。「地球を吹く」で幅広く知られるトランぺッターの近藤等則は当時世界的に活躍するバリバリの即興音楽家で欧米の前衛ミュージシャンの招聘を熱心に行っていた。

▼デレク・ベイリー&カンパニー@東京増上寺 with 近藤等則、高木元輝、吉沢元治、土取利行
Derek Bailey company Tokyo1981


近藤が手がけた最大のプロジェクトがミシャ・ベンゲルベルクとICPオーケストラの初来日ツアーである。ミシャ・メンゲルベルグ(p)、ハン・ベニンク(ds)、ペーター・ブロッツマン(sax)、マイケル・ムーア(sax)、ケシャバン・マスラク(sax)、ユープ・マーセン(tb)、ウォルター・ビアボス(tb)、ラリー・フィシュキン(tuba)、モーリス・ホルストハウス(viola)、近藤等則(tp)の総勢10名からなるビッグバンド。最初の3人と近藤以外は初めて聞く名前だった。会場は日本教育会館一ツ橋ホール。超満席だった。それまでレコードやテープでフリージャズやインプロを聴いてきて、シリアスで冷徹な世界こそ「前衛」であると思い込んでいたがそれを見事なまでにぶち壊す衝(笑)撃的な演奏だった。テクニックや音のでかさも凄いが何よりも視覚的に面白い。何度も会場が爆笑の渦に巻き込まれた。



ベニンクの床叩きとおもちゃパフォーマンス、常軌を逸した酸素欠乏ロングトーン、犬の遠吠えとへんてこアカペラコーラス、スタンダード~激烈インプロ~ワルツ~パンクと猫の目のように変化する曲調。聴いて楽しい観て楽しい最高のエンターテイメント。「前衛=難解」である必要はないということを実感し目から鱗の体験だった。大学の軽音研でフリージャズ好きが高じて村八分状態だった私に勇気と希望を与えてくれた記念碑的コンサートだった。

▼2009年制作ICPオーケストラのPV。ミュージシャン総出演のドラマ仕立ての展開が楽しい。



それ以降即興演奏する時は常にエンターテイメント性に則りを突飛なパフォーマンスやガラクタ演奏をするようになったのには彼らの影響が多大にあるのは間違いない。その精神は現在極たまに演奏するときにも変わっていない。

▼1982年に結成したインプロユニットOTHER ROOMの吉祥寺Gattyでのライヴ音源。



▼今年参加したセッションライヴ音源。



ICPオーケストラ2006年2008年に再来日公演を行っている。何故観に行かなかったのか誠に悔やまれる。

ICP
AEOC
ECM

坂田明がCMに出演し話題になったのも1982年だった。フリージャズがお茶の間に最接近した幸福な季節だった。

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灰野敬二+庄田次郎/灰野敬二セッション/KIRIHITO/ねたのよいetc.@新大久保EARTHDOM 2012.12.15 (sat)

2012年12月17日 00時33分18秒 | 灰野敬二さんのこと


「雑煮音鍋セッション祭vol.3」
BIGスパゲティ企画

出演:
セッション:
1st set:灰野敬二(g,vo)+松居徹(g/DMBQ)+HIKO (ds/GAUZE)+平野イサム (ds/exマリア観音) +岩見継吾 (b/exミドリ) +池田ゴッホ(銅羅/BIGスパゲティ)
2nd set:灰野敬二 (g,vo)+庄田次郎(tp.sax...)

バンド出演者:BIGスパゲティ/KIRIHITO/ねたのよい/スギムラリョウイチ

BARスペースでの演奏:JON(犬)/ひしょちの穴 ● ひしょち (ぱやよしsax) + 濁朗 (syn)/渡邊知樹(似顔絵描きます)

DJ:川口雅巳(川口雅巳ニューロックシンジケイト)
司会:てっちゃん+コマツ(デアデビル、我々)

雑煮音鍋(ザツニオトナベ)セッション祭はバンドBIGスパゲティが企画するその名の通りお祭りセッション・イベントである。2011年8月から開催され1Vol.1はダモ鈴木、Vol.2は巻上公一をゲストに迎えた。今回のVo.3は灰野さんを迎えてのセッション。

このイベントを知ったのはメイン企画者の池田ゴッホのブログだった。今年5月下旬に次回イベントのゲストとして灰野さんに出演依頼しようと思いついた時から灰野さんのライヴに通い交渉、許諾を得てから他の出演者のセレクション、イベントの内容・告知、実施まで心のトキメキや緊張を事細かに描いたブログは心底面白い読み物になっている。イベント企画者の夢と苦労の生々しいドキュメントである。これを読んで感動し連絡を取りFBの友達になった。通っているライヴが重なっていて何度かニアミスしたのだが、ある11/29ライヴで初めてお会い出来た。レゲエっぽい風貌がファンキーだがブログの文章通り誠実で一途な熱血青年だった。

実は私も数年前に灰野さんのライヴ企画を打診したことがある。灰野さん自身もOKと言ってくれたが、当時の灰野さんのブッキング・マネージャーから「今までの"ファンとアーティスト"の関係から"企画者と出演者"の関係に変わり、会場・機材の手配やギャラの支払い等責任が生じることになるが覚悟は出来てるか」とのメールが届き正直ビビってしまい不安に苛まれた。そのことを灰野さんに伝えると「誰かが無理するならやらない方がいいんだよ」と諭され肩の荷が下り企画は諦めた。以来好きな音楽に対してはあくまでファンの立場を貫くことにした。

だからイベントを企画する方には心から敬服する。音楽好きが高じて"自分が観たい"ライヴを企画するようになったのだろう。イベントを成功させるために一生懸命考えて告知や宣伝に精を出すが必ずしも成功するとは限らない。持ち出しの場合もあるかもしれない。しかしお金の問題ではなく理想のライヴの実現への夢が彼らの原動力なのだろう。私がブログに賭ける情熱に近いが彼らは金銭面以上にアーティストとの関係性の逆転というリスクを背負っている分、大きな尊敬に値する。

今回のイベントの出演者は雑煮音鍋常連もいれば初参戦組もいる。その経緯についてはゴッホ氏のブログに詳しい。タイトル通り様々なスタイルごちゃ混ぜのワンナイト・ロック・フェスといった趣だが、よくぞここまでユニークな面子を集めたものだと感心する。誤解を覚悟で言えばキーワードは「トライバル&サイケデリック」だろうか。灰野さんが嫌煙家なのでBARスペース以外禁煙との告知が会場内の掲示・アナウンスで何度も繰り返される。お陰でホールでは気持ちよく観戦出来た。


EARTHDOMに着くと既に最初のスギムラリョウイチが演奏していた。フォークギターの弾き語り。オープニングにはいい感じ。続いてねたのよい。高円寺周辺の地下ロック・シーンでは有名なバンドでいつか観たいと思っていた。全員腰までのロングヘアーと仲屋むげん堂風衣装はBO NINGENや下山(Gezan)、小さいテレーズの系譜に繋がるが彼らならではの強力なオリジナリティを持っている。サウンド的には村八分を思わせる土着ロック。MCで「ガンジャは吸っちゃダメですか?」と言うのも納得出来るラリったロックが気持ちいい。UFO CLUBあたりで長髪ロックイベントをやったら面白い。


(撮影・掲載に関しては主催者・出演者の許可を得ています。以下同)

ホール(メイン・ステージ)とBARステージで交互にライヴが進行する。次はBARでひしょちの穴 =ひしょち (sax) + 濁朗 (syn)。フリーキーなサックスが浮遊する電子音と絡み合っていい感じだがいかんせんBARスペースは喫煙可なのでタバコの煙が耐えられず途中で退散。



ホールではKIRIHITO。会場にP-VineのTADZIOのディレクター氏がいたので久しぶりと挨拶。KIRIHITOも担当とのこと。この二人組は何度か観たことがある。TADZIOやガガキライズ、最近ではチャットモンチーまでベースレス・デュオが増えているのには低音離れの傾向があるのだろうか?KIRIHITOの変態ハードコアが炸裂、前列ではパンクの革ジャン・Tシャツを着た若者が盛り上がっている。活動歴20年を誇る演奏力はタダ者じゃない。たまの石川浩司似のドラマーのパフォーマンスが楽しい。



BARでJON(犬)。煙を我慢して最初だけ観る。彼女も何度も観ているベテランだがそのほのぼのした不思議な世界は唯一無二。アングラ系イベントの常連だが幼稚園などで幼児の前で演奏したら大ウケに違いない。



企画者池田ゴッホ率いるBIGスパゲティ。g,b,sax,dsの4人組。皆一癖ありそうなルックスなのにドラマーだけふつうのおっさん風なのが可笑しい。しかしこのおっさんのドラミングはなかなか凄かった。基本的にお祭りビートのアゲアゲバンド。ゴッホ氏は飛び跳ねながら歌い客席に乱入してくる。ぐいぐい客を引っ張っる祭りだワッショイ精神がバンドだけじゃなくこのイベントの本質なのだと実感。



お待ちかねの灰野敬二セッション。第1部は選りすぐりのメンバーのロック・セッション。のっけから灰野さんの気合いの入ったギターが爆発、混沌とパワーに満ちた演奏が展開される。KIRIHITOで最前列で踊っていた革ジャン青年は元マリア観音の平野だったが今度はChaos UKのTシャツを着て切れ味鋭いドラムを聴かせる。DMBQの松居はアームを駆使したハイトーンのフレーズを奏で、岩見はミドリ時代のトレードマークのアップライトベースで柔軟かつ重厚なビートを繰り出す。素晴らしいカオスが10数分続いたところでトラブル発生。突然灰野さんのギターの音が出なくなったのだ。エフェクターの電源プラグが抜けたのにスタッフが気がつき直すがまた切断。それが3回続きキレた灰野さんはアンプを蹴り倒して退場。ステージは勿論客席にも緊張が走る。そのまま演奏放棄かと焦ったがさすが百戦錬磨の灰野さん、数分後に手ぶらで再登場し激烈なヴォイス・パフォーマンスを展開。演奏もテンションが高まり嵐のような激しいセッションに発展。まさに怪我の功名の迫真ライヴだった。



第2部はニュージャズ・シンジケートの庄田次郎とのセッション。ニュージャズ~は1970年代に庄田、原尞(p)、宇梶昌二(ts)が中心になって結成された組織でプロからアマチュアまで多くのフリージャズ・ミュージシャンが参加した。阿部薫や近藤等則もよく参加していたらしい。その中心人物が庄田で現在でも毎年夏に伊豆下田でフリージャズ&アートイベント「スピリッツ・リジョイス」を主催している。灰野さんとの共演は30数年ぶりとのこと。トライバルなメイクをした庄田のトランペットに灰野さんは微音ギターで応える。微に入り細に入ったプレイは第1部とは打って変わった静寂演奏。岩見と平野が加わり徐々にグルーヴを産み出す。後半は轟音ギターとサックスが泣き叫ぶ爆撃ハードコアジャズ・セッションに突入。祭りに相応しい盛り上がりで終了。後で聞いたら岩見と平野の参加はサウンドチェック後に「イベントの最後が静かなジャズじゃ収まらない」と灰野さんが提案したとのこと。灰野さんの閃きが見事に当たり恍惚の嵐が会場を吹き荒れた。



アクシデントはあったもののライヴ演奏にハプニングはつきもの。結果良ければ全て良しとは言わないが充実した祭りをどうもありがとう。

スパゲティ
食べて踊って
銅鑼鳴らせ

雑煮音鍋セッション祭vol.4のゲストは遠藤ミチロウとJOJO広重に決まりそうとのこと。80年代を象徴する過激派パンクとノイズの激突にどんなハプニングが起きるか楽しみだ。

<灰野敬二ライヴ情報>
12.21(金) 六本木SuperDeluxe SDLX十周年記念ワンマンLIVE 不失者
12.24(月・祝) 秋葉原CLUB GOODMAN 「静寂」 Last Live ブラック・クリスマス
12.30(月) 高円寺ShowBoat 灰野敬二 ワンマンライブ
2013.1.27(日)東高円寺U.F.O. CLUB U.F.O.CLUB 17周年記念 灰野敬二ワンマンライブ
LIVE:灰野敬二 [ゲストミュージシャン; 菊地成孔, やくしまるえつこ]

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とんがっちゃったロックファイアー~ザ・クロマニヨンズ「炎」

2012年12月15日 01時41分24秒 | ロッケンロール万歳!


運命の輪廻転生に翻弄されてクタクタになって帰宅するとamazonからザ・クロマニヨンズのニュー・シングルが届いていた。「炎 c/w とがってる」2曲入り計4分47秒のコンパクトなシングルである。こんがらがった現実をスパッと一刀両断にしてくれるカミソリソング。もやもやした気持ち悪さを一瞬で粉々に吹き飛ばす疾走ファイアー。アラフィフのヒロト&マーシーだがその瞳には永遠の夢の炎が宿ったまま。「どんどん行くぜー!」と叫ぶライヴの勢いそのままのとがって光るロッカーの素顔はアニメ・特撮戦隊ヒーローモノ好き&野球とカレー好きの少年だったりする。コドモの心で歌うエイトビートのロケンロー。

♪永遠の夢を見る 炎のように♪
♪すげえ光る とがってる とがってる♪ 




来年2月には7thアルバム「YETI vs CROMAGNON」をリリース、そのまま5ヶ月に亘る全国ツアー「ザ・クロマニヨンズ ツアー 2013 イエティ 対 クロマニヨン」に突入する。ロケンロー稼業には終わりがない。

吹き飛ばせ
運命なんて
信じない

頭を抱えて考え込むのは辞めて前のめりに歩いて滑って転んでみようじゃないか。
明日は明日の風が吹く。





































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DCPRG@新宿BLAZE 2012.12.12 (wed)

2012年12月14日 00時22分08秒 | 素晴らしき変態音楽


DCPRG
DCPRG YAON 2012 追加公演
出演:DCPRG(ゲスト: SIMI LAB, 大谷能生)、SIMI LAB

DCPRG:菊地成孔(cond, CDJ, key), 坪口昌恭(key), 丈青(key), 大村孝佳(eg), アリガス(eb), 千住宗臣(ds), 田中教順(ds), 大儀見元(perc), 津上研太(sax), 高井汐人(sax), 類家心平(tp)

Impulseからの最新スタジオ・アルバム「SECOND REPORT FROM IRON MOUNTAIN USA」リリース後、4月新木場Studio Coast~10月日比谷野音とワンマン・ライヴを重ねてきた菊地成孔率いるDCPRGの追加公演。アルバム&ライヴでコラボした菊地一押しのヒップホップユニットSIMI LAB(シミラボ)ジャズ・ドミュニスターズの大谷能生がゲスト参加。ニコニコ生放送でDCPRG初のネットLIVEストリーミング配信された。会場の新宿BLAZEは歌舞伎町のど真ん中にあるキャパ800人の大型ライヴハウスで来るのは初めて。こんないいハコを知らなかったとは…。スケジュールを見たらヴィジュアル系とアイドル中心なので無縁だったのも仕方ないか。

先週の八八以来【1:2 Days公演3本被り】【2:殺戮=マサカー繋がり】と偶発現象が重なり妙な気分の1週間だが、この日も偶然性に玩ばれる数奇な運命が続いた。30年前に私が衝撃を受けたマサカーの1st「キリング・タイム」の2006年リマスター盤の日本盤の解説が何と菊地成孔だったのだ!!!私が所有しているのは1992年初CD化のJIMCO盤で解説は別の人なので気付かなかったこの偶然。前日にもしやと思って吉田達也、鬼怒無月と菊地成孔の関係を調べたら数度共演した程度でそれほど深い繋がりは無かったのでやっと”偶然性の無間地獄”から解放されると安堵していたところだったのに、蜘蛛の糸がぷっつり切れてまた地獄へ逆戻り。世代が同じだし、大友良英と共に新世代ジャズの先鋭として活躍した彼だから当然1970年代後半~80年代のNYアンダーグラウンドの動向に惹かれたのはわかる。大友とはGROUND ZERO~ONJQさらに初期DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENで共演。NYシーンと深いつながりのある大友からの影響も多大にあるに違いない。さらに探るとヘンリー・カウ、アート・ベアーズ解散後にクリス・カトラーが結成したカシーバーの2枚組ライヴ盤「Live in Tokyo 1992」のDisc 2がGROUND ZEROによるリミックス盤でそこに菊地も参加していることを発見。もはや逃れられない”ヘンリー・カウの呪い”。奇しくも2012年12月12日は「トリプル・トゥエルヴ」、百年に一度巡って来る年月日が同じ数字になる因縁の日でもあり、星占いの十二宮では12は「宇宙の秩序」を表す数でもある。それと関係あるかどうか、Impulseの2作のアルバムがこの日一斉に海外60ヶ国のiTunes Storeからリリースされたという奇蹟。

・・・・・・・・・・・・しばし放心状態・・・・・・・・・・・・・・

都合でオープニングのSIMI LAB単独ライヴには間に合わず会場に入ったら丁度DCPRGが始まるところだった。川崎Club Cittaや渋谷AXを小振りにしたようなホールはひと癖ありそうな若者で一杯。ステージが高いので観やすい。メンバーがゾロゾロ登場。菊地は粋なハットを被ったお洒落さん。3人のパーカッションの乱打と太いベースがファンキーなグルーヴを産む。その上を自在に飛び回る管と鍵盤。前半3曲はエレクトリック・マイルスmeetsアフリカ・バンバータ的なサウンドで観客を踊らせる。時折菊地が派手なアクションでブレイクを入れると大きな歓声が上がる。ゴングのティム・ブレイクを想わせるシンセのキュルル~ンという電子音が脳に心地よい。いい感じでノッテいたら4曲目に大谷能生が参加、12(じゅうに)と「自由に」をかけたラップが炸裂。凄まじい勢いで溢れ出るライムの奔流に唖然としていると、菊地がCDJでボーカロイド兎眠りおんをドロップ。大谷とりおんの掛け合いが下手なインプロよりもずっとスリリングなバトルを繰り広げる。バンドはリズムレスな自由空間音響を鳴らし続ける。思い切り実験的な世界だが観客がところどころで沸くのはラップバトルやDJバトルに通じるからだろう。続けてSIMI LABが登場、DCPRGのフリー・ダンスビートに乗せて♪普通って何/常識って何/そんなもんガソリンぶっかけ火点けちまえ♪というメッセージ色あるラップで煽る。客席は横ノリで波のように揺れる。そんな彼らを観る度に思うのは「ジャンルって何/カテゴリーって何/そんなもんガソリンぶっかけ火点けちゃった」というジャンルレスな感性の豊かさである。どんなサウンド/リズムでも踊っちゃおうというクラブ・ピープルの姿勢は音楽の新たな存在意義のひとつのステイトメントに違いない。もう一方にアイドルヲタのどんな曲でもコールしちゃえというスタイルがあるのは言うまでもない。

▼ジャンルって何?



アンコールの定番DCPRG「Mirror Balls」+SIMI LAB「The Blues」のマッシュアップまで2時間新鋭DCPRGにしか創造し得ない近未来の音楽風景をたっぷり堪能した。

▼お時間のある方はフルコンサートをご覧下さい。




▼お忙しい方はコチラをどうぞ。



<Set List>
1. PLAYMATE AT HANOI
2. Circle/Line
3. 殺陣
4. Catch 22 feat. MC YOSIO*O
5. Microphone Tyson feat. SIMI LAB
6. Uncommon Unremix feat. SIMI LAB
7. 構造 I
8. Duran
-Encore:
Mirror Balls x The Blues feat. SIMI LAB & MC YOSIO*O

以上、レポートはオオギミ・ゲンがお送りしました。

クラブ↑には
昔行ったが
クラブ↓には
行ったことなし

終演後トイレでばったりノイズ友達のK氏に遭遇。まさかデートコースで会うとはねぇ~とお互いに驚く。まだ続くか偶然の輪廻。


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ユミ・ハラ・コークウェル+浅野淳+吉田達也+鬼怒無月@荻窪ルースター 2012.12.11 (tue)

2012年12月13日 00時42分55秒 | 素晴らしき変態音楽


現代音楽の夕べ
ユミ・ハラ・コークウェル(pf) 浅野淳(b) 吉田達也(ds)/鬼怒無月(g)

"吉田達也をドラムスとヴォーカルに迎えて制作したユミのソロアルバム「ステートメント・ヒールズ」のなんと全曲!プラス、アルバムに収録しきれなかった未発表曲までをもおおくりする怒涛のライヴ、しかもアルバムでは吉田パート以外全部ユミが多重録音した上物の一部を鬼怒無月が演奏!! 鬼怒ソロコーナーもあります。"
ユミ・ハラ・コークウェル ブログより)

今年6月に初来日したアルトー・ビーツ(元ヘンリー・カウ)のユミ・ハラ・コークウェルさんの12/7~25に亘る単独来日ツアー。東京ではワークショップを含め7公演行われる。どれに行くか考え、アルトー・ビーツのワークショップに参加した思い出の荻窪ルースターで是巨人の2/3=吉田+鬼怒との共演、しかも即興ではなく作曲された作品を演奏するというので興味が惹かれ予約した。そしたらまさかのマサカー(しつこい)来日発表の日と重なった。吉田達也氏はフリス、ラズウェル、ヘイワードとそれぞれ共演歴がある。この偶然に痺れたのは昨日書いた通り。半年ぶりに訪れたルースターの入口には写真の通り「現代音楽の夕べ」とのイベント・タイトルが。バルトーク弦楽四重奏団じゃないんだけどなぁと思ったが、この店のスケジュール表には「70年代昭和歌謡の夕べ」「ラテンジャズナイト」「BLUES大回転NIGHT」「ジョン・レノン・トリビュート・ナイト」といったタイトルが付いている。ルースターの流儀なのだと納得。でもせめて「プログレ殺戮ナイト」とでもして欲しかったところ。謎のベーシスト浅野氏は前回のワークショップで共演した方だった。20人くらいの客席には同じくワークショップで知り合ったギタリスト吉本裕美子嬢もいたし、隣の男性はお客さんで観に来ていて私のことを覚えていた。常連でもないのに何だかアットホームな雰囲気。マサカー来日のニュースは吉田氏も鬼怒氏も知らなかった。

前回同様、生データをユミさんに提供することとの条件付きで録音撮影OK(シャッター音のするカメラは禁止)という方針。「どうせなら隠し撮りの悪い音・画質ではなく堂々と奇麗に録音・撮影してもらった方がいい」というユミさんの考えは正に理に適っている。そうやって6月の来日時に各地で録音・録画された素材から50セット限定CDR+DVD12枚組「アルトー・ビーツJapan Tour 2012 Archive Box」を制作・販売。この売り上げが来年のアルトー・ビーツの来日資金になるというからバンドにとってもファンにとっても一石二鳥。


二部構成の最初は鬼怒無月氏のギターソロ。ソロは久々だと言う。私も鬼怒氏の演奏を観るのは5年前の灰野さんとのデュオ以来。1曲目はディレイを活かしたアンビエントなナンバー、2曲目はディストーションを深くかけたハードロック風ソロ。よくあるメタル系のライトハンド奏法を一切なしに全てピッキングする速弾きが素晴らしい。30分のソロの後、4人で「ステートメント・ヒールズ」再現ライヴ。いきなりサムラ・ママス・マンナ風の激烈変拍子ナンバーに驚愕。ユミさんらしい大らかなヴォーカルと吉田氏のオペラチック・ヴォイスの絡むナンバーやアルバムでは12声重ねたという曲を披露。このアルバムは1999~2006年主にクラシックのアーティストに提供した曲を吉田氏のドラムとヴォイス以外の全楽器とヴォーカルをユミさんの多重録音で演奏したものだが、それをバンドで生演奏するのだから原曲とは全く違うものに生まれ変わっている。

▼この曲を演奏する前に衣装を着替えるという凝りよう。



後半はユミさんと吉田氏のデュオ~ソロ~カルテットで1時間たっぷりYumi’s Worldに浸る。吉田氏のプレイは何度も観ているがRUINS Alone以外は殆どが即興に近いセッションだったので、譜面のある曲をバンドで演奏するのを観るのは初めてかもしれない。ドラムの傍の席だったせいもあるがその凄まじいドラミングに打ちのめされた。鬼怒氏はストラトなのにフリップ風のサスティーンの効いた音を出すので不思議だったが、ギターのピックアップはハムバッカーだった。デヴィッド・クロス(元キング・クリムゾン)、ヒュー・ホッパー(元ソフト・マシーン)、ジェフ・リー(元ヘンリー・カウ)、スティーブ・ハウ(イエス、エイジア)と共演してきたユミさんの作る曲だから本質的にプログレッシヴ・ロックの芳醇な香りが滲み出てきて、2時間の間荻窪がカンタベリーにワープした。

▼アンコール・ナンバー。ソロ・アルバムのタイトル曲で元は2台のピアノのために書かれた曲。2006年British Composer Awards最終候補曲でもある。



▼2007年ヒュー・ホッパーとのデュオHUMIの映像



溢れ出る
詩情に染まる
サテンの夜

マサカーとアルトー・ビーツ両方が来日することになったら2013年は面白い。
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まさかの惑星直列的チャンス・オペレーション~マサカー初来日決定!

2012年12月12日 01時20分39秒 | 素晴らしき変態音楽


昨日のブログで上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクトの演奏を”殺戮行為”と書いたら、翌日その名も「殺戮」トリオの来日が発表になり不思議なシンクロニシティに驚いた。元ヘンリー・カウのメンバーによるアルトー・ビーツ(ユミ・ハラ・コークウェル+クリス・カトラー+ジェフ・レイ+ジョン・グリーヴス)、チャールズ・ヘイワードV4VICTORYの来日に続いてコアなプログレ/アヴァン・ロック・ファンが待ち望んだのがフレッド・フリスの来日だった。それがマサカー(Massacre)=フレッド・フリス(g)+ビル・ラズウェル(b)+チャールズ・ヘイワード(ds)という最高のトリオでの来日。まさに狂喜乱舞である。

1981年フレッド・フリスの初来日公演を観た。以前も書いたように1980年代初頭「Fool’s Mate」愛読者にとってヘンリー・カウ及びフレッド・フリス&クリス・カトラーはまさに神だった。初期の「靴下」シリーズを始めとする諸作が「ヴァージン・オリジナル・シリーズ」として廉価盤で再発され入手しやすくなったこともあり、マニアックなロック・ファンの間ではイエスやフロイド、クリムゾン以上にシンパシーとリスペクトを集めたバンドがヘンリー・カウだったのである。そのシリーズの中にフリスの「ギター・ソロズ」というアルバムもあった。芝生に立ってギターを構えるフリスの英国の香り漂うポートレイトが印象的だったが高校生の限られた小遣いではソロまでは買えなかった。だからフリスのギタープレイといえばヘンリー・カウの2nd「不安(Unrest)」の一曲目「Bittern Storm Over Ulm」の室内楽の中をのたうつ粘っこいソロやレジデンツのラルフ・レコードからリリースされた「グラヴィティ」「スピーチレス」でのレコメン系アーティストとの遊び感覚に溢れたユーモラスな共演が心に刻まれていた。

▼必殺ギタープレイ



神様=フレッド・フリス初来日のニュースはロック/サブカル系を超えて朝日新聞等一般メディアでも紹介されるほどの話題になった。その割には会場は数百人キャパの日仏会館だったので超満員で窒息気味だった覚えがある。で、肝心のフリスの演奏はというと・・・ギター2台をテーブルに並べそれに向けて豆を投げたり麺をぶちまけたりして一向にギターを弾く気配がない。受験勉強で疲れていた私は不覚にも居眠りしてしまい後半は覚えていない。後日雑誌でのライヴレポを読むと”豆撒き”への戸惑いと共にプリペアード・ギターの即興がデレク・ベイリーに通じると称賛していた。肝心な”演奏”を見逃した訳である。当時来日ライヴLPが発売されたが購入せず。昨年28年ぶりにCD化されたが完全な即興音響なので音だけ聴いても如何なものか、という気がする。

▼お暇だったら聴いてみれば?



同じ1981年にフリスがNYの実験派ファンク・バンド、マテリアルのビル・ラズウェル(b)とフレッド・マー(ds/当時はマーと呼んでいたが後にマハーやメイハー、メイヤーと呼ばれる。誰か本当の読み方を確認して欲しい)と結成したのがマサカーだった。Fool’s Mate主宰のレコメンデッド・レコード・ジャパンからリリースされたデビュー作「キリング・タイム」は一聴してぶっ飛んだ。のんきに豆撒きしていたフリスが鬼の形相(想像)でギターを掻きむしっている。ラズウェルとマーのリズム隊もマテリアルのファンクとは全く違う偏執的変拍子ビートで突っ走る。正に「アヴァンギャルド(プログレ)meets ポップ(パンク)」なサウンドは同年リリースされたディス・ヒートの2nd「偽り(Deceit)」と並んで前衛とポップの両方を愛する者が探し求めた答えでもあった。この2作は今でもiPodに収められことある毎に聴き返すが飽きることはない。

▼殺戮的前衛ポップ必殺ナンバー



その異常なまでのテンション故に崩壊も早くこの1作で解散。フリスはスケルトン・クルーやジョン・ゾーンのネイキッド・シティ、ビルはソロ、ラスト・イグジット、ペインキラー等様々なバンドのメンバーそして売れっ子プロデューサーとして、マーはスクリッティ・ポリティやルー・リード・バンドのメンバー兼プロデューサーとして別々の道を歩む。日本贔屓のフリスは1981年以来何度か来日、1990年に映画「ステップ・アクロス・ザ・ボーダー」が話題になりテレビにも出たが、当時は興味は薄れていた。

▼越境セヨ、とフリスは言った



1998年にディス・ヒートのチャールズ・ヘイワードをドラムにマサカー再結成。現在までに3枚のアルバムをリリース、地元NYを中心にアメリカやヨーロッパをツアー。再結成後のマサカーはちゃんと聴いたことがない。ラズウェルはTokyo Rotation(東京回転)として近年毎年のように来日し日本のミュージシャンと共演、ヘイワードも新バンドV4VICTORYで来日を観た。フリスは直近では2009年に来日したが見逃した。YouTubeで観るフリスはだいぶ肥ってしまい昔の面影は薄いが相変わらず変態的な演奏をしている。

▼変態ソロ2006



オリジナルと再結成では別バンドと捉えた方がいいとの声もあるが、マサカーとしての遅すぎた初来日ツアーを見逃すわけにはいかないだろう。

殺戮を
続けておくれ
地獄まで

現在アルトー・ビーツのユミ・ハラ・コークウェルが来日ツアー中で、偶然にもマサカー来日発表のその日に日本のプログレ王=吉田達也+鬼怒無月との共演ライヴを観に行った→明日のブログでレポ予定。

さらに前日"この曲"のPVがYouTubeで公開されたのも惑星直列以上に奇妙な偶然である。来日時はぜひコラボをお願いしたい。

▼コラボよろ


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上原ひろみ@東京国際フォーラム ホールA 2012.12.9 (sun)

2012年12月11日 00時22分41秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト
feat.アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス
『MOVE』 日本ツアー2012

上原ひろみの最新作「MOVE」のレコ発来日ツアーは11/14(水)赤坂BLITZから始まり全国計18公演。その最終公演が国際フォーラム2Days。八八、キノコホテルと2Days公演が3つ重なったのも何かの縁か。結果から言うとひろみちゃんは八八、キノコのいずれにも負けない立派な変態音楽だった(褒め言葉です)。もちろん二日間で動員1万人と一桁以上違うが変態は変態。こんな怪奇骨董音楽箱が1万人も人を集めCDがオリコンアルバムチャートで上位にランクインするというのは八八以上の音楽界の七不思議の筆頭であろう。

何が凄いって終演後の観客の会話が→30代女性(嬉しそうに)「あ~すっごく疲れました」60代男性(満面の笑顔で)「そーだろ。肩が凝っちゃうんだよね」・・・野外オールスタンディングでモッシュの嵐の激しいロックフェスならまだしも室内着席のジャズ・コンサートである。大人しく座って観て何故疲労するのか?かくいう私も2時間極度の緊張に晒され終わった後身体の節々が痛かった。身体のどこかに余計な力が入っていたのだろう。緊張というより緊縛か。一瞬たりとも気を抜けないトリオの超高密度のバトルに精神的亀甲縛りの責め苦を受けている状態なのである。

▼参考図(注:あくまで個人的な妄想でありひろみちゃんとは一切関係ありません)


ひろみちゃんはMCで「今日ここでしか出来ない一度限りの演奏を楽しんで」と語っていたが、まさにその通り。CDやDVDとは全く違う生演奏の迫力は5000人の大ホールを一瞬にして狭いジャズクラブに変えてしまった。というのはどんなにステージから遠くてもトリオの演奏にはあたかも目の前で奏でているかのような血の飛沫と丁々発止の喧噪を肉感出来るのである。脳髄に直腸浣腸されたかの如く前頭葉が痙攣する快感。

▼参考図(同上)


このような責め苦を自ら進んで享受しようという人が1万人、いや全公演でのべ5万人もいるという謎を解明出来たらこの国の抱える諸問題は一気に解決してしまうかもしれない。いやそれは既に起きてしまったという説もある。ジャズ/クラシックはロック/ポップスと違って公に「芸術」としてのお墨付きを得ている。ひろみちゃんも出演したジャズフェス、東京JAZZの後援は東京都、文化庁、千代田区といった政府・地方自治体だし、クラシックの祭典として1985~2009年に開催された<東京の夏>音楽祭は芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した。一方フジロックやサマーソニックなどロックフェスのスポンサーは一般企業だけである。スポンサーなしで頑張っている地方の夏フェスも多い。この差は一体何なのか?最近でこそ政府がゲーム・アニメ等アキバ系カルチャーの輸出に乗り出し海外で国際ゲーム・アニメフェスが開催され、そのアトラクションで日本の若手ポップス・アーティストのショーケースが行われるようになったが、一昔前まではポップ・カルチャーの海外進出に政府が金を出すなんてあり得なかった。少年ナイフや灰野さん、メルツバウ、非常階段など海外で高く評価されるアーティストは皆手弁当で持ち出し覚悟で海外公演に挑んだ。文明の上っ面だけ舐めて悦に入っているお役所は今でもヲタを海外に派遣すればオッケーと思い込んでいる。文化軽視ガバメントには何も期待出来ない。

▼参考図(同上)


それはさておき、アイドル・イベントのヲタ芸、ザ・クロマニヨンズの全員ヒロト状態、綾小路きみまろの「きみまろトランス」に匹敵する「上原ひろみ緊縛の集い」に嬉々として弄ばれる観衆は全員家畜人ヤプーなのであろうか。人類の歴史をSMの歴史として描いた作家が鬼団六でありそのポップ・アイコンが谷ナオミであった。両者の関係は以前本稿で考察した"中田ヤスタカ+きゃりーぱみゅぱみゅ関係論"にも置き換えることが出来る。

▼参考楽曲(同上)



だからといって"ピアノを弾くひとりパフューム"=上原ひろみがサディストという訳ではない。ステージ上には"太鼓を叩くラモス瑠偉"ことサイモン・フィリップスとウクレレの代わりに"ベースを持ったKONISHIKI"=アンソニー・ジャクソンという二人の冷酷な求道家が顔を並べる。ラモスじゃないやサイモンは「ナマチュウ」に加え「辛めのアツカン」と日本語が上達しているそうだし、アンソニーは合羽橋で買った食品サンプルでスタッフを驚かせて喜んでいるという。ふたりとも素顔はお茶目な紳士なのだ。しかしこの3者が一同に会し三つ巴のタッグを組んだ時ステージは修羅場と化す。ひろみちゃんの繰り出す複雑怪奇な変拍子の嵐が二人の鬼により拡張され開示された跡には累々と横たわるフレーズの屍が残されるのみ。その死骸は地に伏すと同時にゾンビのように蘇り聴き手に容赦なく襲いかかる。その間にも三人の死闘は続いているので生きた音塊とゾンビの残響が頭の中で絡み合い反発しあい頭蓋を破壊せんと暴れ回る。恐ろしいのは3人が意気揚々と笑顔で殺戮行為を行っていることである。ここまで厳しくここまで破壊的でここまで生の喜びに満ちたテロリズムが存在しただろうか。













ジャズやクラシックといえば「癒し」「ヒーリング」などと紐づけられ多くのリスナーを惹き付けるものだが、その正反対に位置する"The Art of Hiromi"の極致がこのトリオであり、本来なら、風営法で禁止される「肩が揺れ」「踵が浮いた」肉体動作を実践してマゾヒストの如く享楽に耽りつつ楽しむべきものなのかも知れない。



<Set List>
第1部
1 MOVE
2 Endeavor
3 Brand New Day
4 Delusion
5 Desire

第2部
1 Labyrinth
2 Rainmaker
3 Margarita!
4 Place To Be
-Suite Escapism-
5 "Reality"
6 "Fantasy"
7 "In Between"

Encore 11:49PM

動き(MOVE)出せ
ここにいる(Place To Be)こと
声(Voice)上げて

ラモスじゃなくてサイモンが2バス・ドラムを叩きまくっていたことが、これがジャンルを超えたプログレハードコアであることを象徴していた。






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