21世紀初頭、日本では高齢者が急激に急増することが当時予想されたことから、介護を要する高齢者への施策を保険で行うことを我々は選択した。
それから20年が経過し、さらに20年後の日本の高齢者の姿は今以上に長生きする人が多くなることを示した。
この事象が示すことは、だれでも高齢者になることがすべての人に認識されること、そしてその高齢者のなかには要介護状態となることとその介護に公的保険の利用が欠かせないことも承知される。
この高齢者が大量にして急激に増加することの対策を保険制度でまかなう社会保障においては、保険者と被保険者による保険であって保険者は被保険者から支払われる保険料で運用し被保険者に介護にまつわる事故が発生した際には保険給付を支給する。被保険者は保険料を支払うことで保険給付の資格を獲得して介護上の事故が起こったときに事故を支弁する給付を受給する権利を獲得する。
保険のこのような権利義務の構造から、事故にあったとき被保険者は支払ってきた保険料に見合った給付を要求する構造になり、一方、保険者は保険制度の運営と維持にために適正な給付に努めるよう意識が働く。
この保険者被保険者の関係からはより多くの保険給付を要求する被保険者と給付を抑制したい保険者の利害は対立、悪意ある被保険者に備える制度を設計することになる。その保険運用のなかに軽微な事故は保険給付を免責する事項を盛り込む。
公的な介護保険制度でも、保険者被保険者の利害の対立の構図を解消する仕組みは難しい。
日本における公的介護保険制度では、保険の適正な利用を促す役割を介護支援専門員という資格を創設して彼らに担わせた。保険の給付を実施する際にこの保険給付実施に欠かせない介護支援専門員は介護の事故となっている被保険者に事故の内容確認で被保険者と対面しその事情を把握する行為から介護支援専門員は被保険者の利益を確保する保険給付を支給する方向に働く。
常に保険者被保険者の関係であれば介護支援専門員は保険者の代理の立場に立つと同時に被保険者を代弁する立場に立たされ、この構図が介護支援専門員に苦悩をもたらす。
これを保険者から行政の立場に、被保険者を利用者の立場ととらえ直すとき、行政は住民への行政サービスの提供となり、利用者は介護状態の解消や負担を軽くする方向に導くようになり、対立構図に立たされていた介護支援専門員は行政の住民サービス提供による住民の幸福の実現のために働き、利用者の介護の解消のために努力するという両者の共通の利益を実現する立場にたつ。
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