ヒトラーがどのようにして政権を掌握し、どのように独裁体制を構築していったのか、これは安倍支持をみていると誰しも思うことだろうと思う。
特に、安倍政権が「緊急事態」条項、「国会緊急権」を、日本国憲法上に規定すべきだと主張しているからだ。ヴァイマール憲法にあった国家緊急権が濫用され、それがヒトラー政権成立に貢献したことは知られている。ヒトラーのように、思い込みで国全体の政治を推進する志向を持った安倍首相と、ヒトラーとの相似も指摘されている。ヒトラー的な安倍と、国家緊急権とが結合したときに何がおきるか、それを歴史の教訓から引き出そうと思ってこの本を読んだ。
その期待に十分応えてくれる本だ。今まで、アウトバーン建設は、ナチス政権が発案し、確かにドイツ人の失業を減らしたと説明してきたが、そうではなく、アウトバーンはすでに20世紀初頭に計画されていて、ヒトラー政権誕生前にすでに20キロメートルが開通していたこと、そして失業対策にはあまり貢献しなかった(224~5頁)のだ。
そう思い込まされたのは、まさにナチスの宣伝が巧妙にかつ熱心に行われたからなのである。
もちろん、ナチス政権をつくりあげたのは、当時のドイツ国民でもある。なぜナチスを支持したのか、その背景もきちんと記されている。
現在の安倍政権の危険性に対して、ドイツ現代史にその教訓を得るという目的は、本書で十分果たされる。発売は昨年5月、しかしすでに第六刷。よく読まれている証拠だ。読む価値ありである。
同時に、永井幸寿『憲法に緊急事態条項は必要か』(岩波ブックレット)も、必読である。この本は今年3月発売。
現代社会がもつ危険をしっかりと見つめるためにも、読んでほしい。
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