浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

ミャンマーのこと

2021-04-11 12:17:16 | 

 月の初めは、購読している雑誌が届く。先ず来るのが『選択』。しばらく経って『世界』と『Journalism』、また『法と民主主義』、そして毎週『週刊金曜日』が届く。特集によっては、『現代思想』も買う。雑誌を読むだけでもなかなかたいへんである。

 『Journalism』4月号も、読ませる記事が並ぶ。ここで紹介するのは、堀潤さんのミャンマー関連の記事である。ミャンマーは軍隊によるクーデタに対して民衆が抗議活動を続けている。国際社会もミャンマー軍事独裁政権に圧力をかけている。

 しかし軍事独裁政権は、抵抗する民衆をなぎ倒してもみずからの政権を維持しようと蛮行を繰り広げている。 

ミャンマー治安部隊が迫撃砲で攻撃、包囲された抗議デモの82人死亡

 こういう記事を読むと、何とかしてあげなければならないという気持ちになる。日本政府は何をしているのか、と思うが、いつものように、そういつものように、抗議らしい抗議をせずに静観している。静観は軍事独裁政権支持となるにもかかわらずである。

 堀さんはこう書いている。

ミャンマー国内から届く映像には、軍や警察による明らかな非人道行為が記録されている。非暴力で声をあげる人々へのもはや虐殺、ジェノサイドと言っていい状況だ。軍は自分たちの行動に批判的なメディアを解体し、人々の発信の命綱であるインターネットを断続的に遮断している。こうした中、市民たちが必死に撮影を続け、世界に向けてSOSを発信し続けている。

 そしてこう書く。

 ただ国内TVメディアの発信を見渡してみると、本来はミャンマークーデターの現場の実態はもっともっと深刻な局面として広く報道されてもいいはずだ。現地市民たちが歯を食いしばって発信を続けるその覚悟とのバランスが非常に悪い。経済制裁などを即座に発表したアメリカや各国政府と日本政府の温度差や、本来SDGsの達成を掲げ活動しているはずの日本企業が発言や対応に消極的な姿勢を見ると報道の熱量の物足りなさにさらに危機感を抱く。現地ミャンマー人の声は、一体誰が伝えるのか。

 残念ながら、日本国は人権後進国、民主主義後進国であることがすでに明白になっている。日本での人権保障や民主主義が十分に機能していないのだから、他国の人権や民主主義に、日本政府が関心を寄せるわけがない。そしてテレビメディアは、そうした政府と蜜月の関係にあるのだから、人権や民主主義に無関心であることは言うまでもない。

 そして日本企業はといえば、ミャンマーの軍部とつるんで利益確保に奔走している。『選択』4月号には、「ミャンマー国軍と日本企業の「蜜月」」という記事があった。そこには以下の企業名が載せられていた。

 キリンホールディングス、JCB、総合建設コンサルタント企業の復建調査設計、運送業の大阪旭グループ、食品加工機のサタケ、大手商社丸紅、設計施工を行うフジタ、ホテルオークラ、国際協力銀行、海外交通・都市開発事業支援機構、三井住友銀行、みずほ銀行

 そして名は伏せられているが、こういう企業もあるようだ。

 その企業は1990年代から国軍と密接な関係を築いて権益を得てきた。ヤンゴンで大規模なビジネスを展開して、国軍が支援する極右団体と親密な大物ビジネスマンとも利害関係を維持している。さらに米財務省が「国軍の手先」となら名指しして制裁対象にしていた有名なテイ・ザ氏ともつながっているという。その企業は国際協力機構(JICA)や三菱商事、NTT、朝日新聞などとビジネス上の関係があることがわかっている。

 記事は、「「ミャンマー民主化」の美名の下で、国軍などと癒着してビジネスをしていること自体、日本企業の倫理観が問われる状況があ」る。「今、クーデターと国民への弾圧が続いても、国軍に対して厳しい姿勢を取らない日本に対してかつてないほどの大きな失望感が広がっている」、「目先の金儲けに走り、国軍との蜜月を続ける日本政府と企業がミャンマー人の親日感情を憎悪に変えてしまうのだ」で終わる。

 日本国家は、人権と民主主義の国ではないが故に、こうした軍事独裁政権とも仲良くなれるのである。

 ミャンマーの民衆は、軍事独裁政権ではなく、それを倒した後の民主的政権に期待して欲しいと言っている。民衆は、固い決意を持っているのである。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする