「雪舟からポロックまで」 ブリヂストン美術館 5/21

ブリヂストン美術館(中央区京橋1-10-1)
「石橋財団50周年記念 -雪舟からポロックまで」
4/8-6/4

石橋財団の50周年を記念して開催された展覧会です。印象派からザオ・ウーキー、さらには応挙や雪舟までが揃います。狭いブリヂストン美術館が一段と窮屈に感じられるほどのボリューム感。これは好企画です。



ともかく「あれも、これも。」と言うような選り取りみどりの内容です。惹かれた作品の感想をイチイチ書いていくとキリがありません。また、この展覧会はさながら石橋財団の所有する美術品の常設展です。これまでに見たことのある作品もいくつか交じっています。と言うことで、ここでは「特に」惹かれた作品だけを挙げていきたいと思います。



まず印象派のコーナーからは、私の好きなシスレーから「サン=マメス六月の朝」(1884)です。決して上手いと言えるような作品ではありませんが、左から森、川、街路樹、道路、そして家々が整然と並んだ構図の妙、または川や道路における大胆なタッチと点描のように細かく描かれた木々の対比、さらには木陰に見られる光の取り込み方など、どれもまさしく印象派ならではの美感に溢れた作品です。そして、家々の質感、特に手前に見られる赤褐色の壁には温もりが感じられます。また行き交う人々や、川に浮かんだ小舟の描写も画面に良いアクセントを与えている。目新しい表現もなく、地味な作品ではありますが、むしろこの素朴さに強く惹かれました。



モネはやや苦手ですが、ブリヂストンの「黄昏、ヴェネツィア」(1908)だけはいつ見ても大いに感心させられます。ともかくこの黄昏の描写。この魔力的とも言える色彩表現は、到底私の文章では表現出来ません。夕陽に焦がされて燃え上がるヴェネツィア。全てが崩れかかっているこの黄昏の瞬間にて、尖塔だけが唯一画面を支えている。もう目がクラクラしてしまいます。印象派の範疇を越えてしまったような、強烈なインパクトを与える作品です。



同じくモローも、作品によってはやや首を傾げたくなるような作品もありますが、この「化粧」(1885-90)は非常に優れた作品です。やはりモローは水彩の方が美しい。うっとりとした表情の女性。そして爛れた衣装、その艶やかさ。これを魅惑的と言わずして何と表現すれば良いのか。この展覧会でも特に印象に残る作品です。これは絶品です。



あまり人気がありそうもないのですが、ヴラマンクの「運河船」(1905-06)も好きな作品です。ヴラマンクは以前、三越での「フランス近代絵画展」にて、とても暗鬱な「ブージヴァルの雪景色」を見てから気になっているのですが、この「運河船」はそれとは全く対照的な明るい作品でした。オレンジと青の太いタッチにて象られた一隻の船。水面はこれまた太いタッチにて強固に塗り固められている。一見、とても粗雑にも見える作品ですが、ヴラマンク独特とも言えるこのタッチは不思議と心を捉えます。いつかはまとめて見てみたい画家の一人。思いがけない場所にて出会うことが出来ました。



このペースで書いていくと本当にまとまらなくなりそうなので、この先は駆け足で進みます。この他で特に印象に残ったのは、青木繁の「わだつみいろこの宮」(透明感が素晴らしい!)、ルオーの「郊外のキリスト」(ジワジワと伝わる深い哀愁感。)、セザンヌの「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」(この美術館でこれを見なければ何も始まらない!?)、ザオ・ウーキーの二点の抽象画(これはもう文句なしです。)などです。もちろん、数多く展示されているピカソやマティスらの作品も良いのですが、今回はこれらの作品が深く心に残りました。



タイトルにも「雪舟から」とあるように、この展覧会では日本美術の名品もかなり展示されています。残念ながら私にはまだ雪舟の素晴らしさを感じられる所まで目が発達していないのですが、円山応挙の「牡丹孔雀図」(1781)や中国・元の時代の「飛青磁花瓶」(14世紀)などは魅力的でした。さすがにこの美術感のスペースから鑑みると詰め込み過ぎた印象は否めませんが、どれも時間をかけて味わいたい作品ばかりです。

明後日の日曜日、4日までの開催です。今更の記事ではありますが、これは是非おすすめしたいと思います。(ぐるっとパスを使いました。)
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