「緑雨の景観」 山種美術館 6/25

山種美術館(千代田区三番町2)
「緑雨の景観 - 美しき日本の自然 - 」
5/13-6/25(会期終了)

皮膚にまとわりつくような湿り気にどんよりとした曇り空。今年の梅雨はいかにもこの時期にふさわしいじめじめとした毎日が続きます。そんな季節にぴったりの展覧会かもしれません。山種美術館の「緑雨の景観」展へ行ってきました。



今回の展示で最も惹かれた作品が、この山口蓬春の「梅雨晴」(1966)です。私はあまり紫陽花が好きではなく、実際に見に行くことはまずありませんが、この画の紫陽花は実に控えめで美感に溢れています。全くうるささがなく、静かに咲き誇る紫陽花の花。そして滲み出す青や紫の顔料の瑞々しさ。または湿り気を受けて大きく成長した葉っぱ。梅雨の間の僅かな陽の光を浴びているのでしょうか。花びらが所々白く仄かに照り出しています。曇り空の下で無数に咲き乱れているのではなく、少し乾いた空気の中で爽やかに咲いている。この花にありがちな重々しさが殆ど感じられません。明るい気持ちになるような作品でした。



山種ではお馴染みの菱田春草や川合玉堂なども並んでいます。その中では菱田春草の「釣帰」(1901)が特に美しい作品でした。霧のかかった水辺に浮かぶ一艘の小舟。遠くの木々が微かに浮かび上がっている。私は春草と言うと、いつも精緻に描かれた草木の作品を思い出しますが、このような情緒的な味わいのある作品もまた良いものです。またその他には、宇田荻邨の「五月雨」(1967)や、池田輝方の「夕立」(1916)なども魅力的でした。

次回展覧会は「旅と画家」(7/1から)が予定されています。私の大好きな速水御舟から、佐伯祐三の洋画までが展示されるとのことです。こちらも忘れないようにチェックしていきたいと思います。

ぐるっとパスを使いました。
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