都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「カルティエ現代美術財団コレクション展」 東京都現代美術館 6/3
東京都現代美術館(江東区三好4-1-1)
「カルティエ現代美術財団コレクション展」
4/22-7/2
カルティエ現代美術財団による、世界初という大規模なコレクション展です。出品作家は、日本人を含めた約30名。絵画やインスタレーション、それに写真からビデオアートまで、多種多様な作品にて会場を彩ります。予想以上に楽しめました。
展示会場は地下2階から地上3階まで、要は企画展示室の全てです。どちらかと言えば大きなインスタレーション作品が多く、途中で疲れるようなことはありませんが、それでも相当のボリューム感です。ただどの作品も、難しいことを抜きにして、ダイレクトに感性を刺激してくれるものばかり。まずは、特に印象に残ったものを挙げていきたいと思います。
まずは1階入口を抜けてすぐにある巨大なオブジェ、ライザ・ルーの「裏庭」(1995-99)です。何やらキラキラと光る素材にて、テーブルや花壇などのある庭の光景が象られた作品。ともかくその大きさからしてもの凄いインパクトがありますが、その素材を知ってさらに驚かされました。何とそれらは一つ一つのビーズから出来ているのです。確かに良く見ると、どれも僅か1センチほどのビーズが連なり、さらには束となっていることが分かります。床一面に生えた芝から、洗濯カゴの中に入れられたくちゃくちゃのバスタオルまで、全てがビーズ製。完成までに3年以上もかかったそうです。チープな素材でありながら、思いがけない美しい質感を見せる作品。これは良い導入かと思いました。
素材の面白さと言えば、その次の展示室の、ジャン=ミシェル=オトニエルの「ユニコーン」(2003)も魅力的です。神輿か祭壇のようなオブジェ。素材は吹きガラスでした。もちろんそれらが透明感に溢れながら、カラフルに光り輝いている。ガラスの不定形な味わいもまた美的です。まるで手で制作したかのような温もりが感じられます。
リチャード・アーシュワーガーの「クエスチョン・マーク」(1994)は、単なる「?マーク」が意外なほどに可愛らしい作品でした。ナイロンとグラスファイバーで作られた大きな「?」が、ピリオドを従えて宙から吊るされている。白い展示空間に良く映えます。誰しもが思うような現代アートへの疑問を、この「?」が一手に引き受けている。ここはしばし立ち止まって、各作品のナゾナゾに改めて挑戦したいところでした。
パンフレット表紙に掲載されているロン・ミュエクの「イン・ベッド」(2005)は抜群の存在感です。ともかくその巨大な頭に注目です。白い布団に包まれて、物思いに横を向いている。頬には手が添えられています。彼女は何を思うのでしょうか。むっちりとした皮膚や、不気味に乾いた髪の毛の質感も非常に優れている。巨大な展示室の中にて、静かに思考する大きな女性。もしかしたら、誰もいない夜にはむくむくと動き出しているかもしれない。そんな奇異なイメージすら呼び起こすような、生々しい作品でもありました。
このペースで感想を書いていくと収集がつかなくなりそうなので、これ以降は足早に進めます。まず次の3階展示室では、一番始めの巨大眼球作品、トニー・アウスラーの「ミラー・メイズ」(2003)に驚かされました。大きな球体に映し出された様々な目。それが入場者の視線を遮るかのようにきょろきょろと動いている。10個の大きな眼球に包まれた時の恐怖感がたまりません。また同じく3階では、アラン・セシャスの「大きな頭」や、ペレシャンのシリアスなビデオ作品、さらには、ヴァレジョンの肉片のこぼれ落ちそうなタイルや、力強い無言のメッセージを感じるアンデュジャールの写真作品などが印象に残りました。どれも優れていたと思います。
2階にて人気の松井えり奈を楽しんだ後は、いよいよ最後の地下2階展示室です。ここでは、森山大道の「新宿」(2002)シリーズと、「ポラロイド・ポラロイド」(1997)がともに充実していました。特に後者は圧巻です。ポラロイドによって、展示室をぐるりと一周、プライベートな部屋の空間が誕生しています。コラージュの連続体。部屋の景色に溶け込んだアニメキャラクター、特にドキンちゃんが妙に存在感を発揮していました。この森山は私には新鮮です。
地下の大空間では、サラ・ジーのインスタレーションが目を引きます。梯子やバケツなどのチープ極まりない素材によりながら、あたかもカンディンスキーの世界を立体空間で表現しているような凄まじい作品です。窓から受ける光に当たって、モービルのように美しく変化していく。しばらく眺めていたい作品でした。
今年に入って、独仏の一私企業(もしくは財団)のコレクション展を3つ見てきました。(「ドイツ銀行@原美術館」と「ダイムラー@オペラシティ」)おそらくそれらの中では、このカルティエが一番評価の定まらない作品が集まっていたのかと思います。しかしどれも感覚的で、エンターテイメントとしても楽しめる作品が多い。もちろん、キャプションもノートのような形になって付いています。しかしそれらはあくまでも作品の種明かしです。まずは自由に色々と感じとってみて、その感覚を大切にしていく。そんな現代アートならではの楽しみ方が出来る展覧会です。また、このような表面的とも言える分かり易さは、作品としての美感があればアートとして十分に満足出来ます。来月2日までの開催。是非おすすめしたいです。
「カルティエ現代美術財団コレクション展」
4/22-7/2
カルティエ現代美術財団による、世界初という大規模なコレクション展です。出品作家は、日本人を含めた約30名。絵画やインスタレーション、それに写真からビデオアートまで、多種多様な作品にて会場を彩ります。予想以上に楽しめました。
展示会場は地下2階から地上3階まで、要は企画展示室の全てです。どちらかと言えば大きなインスタレーション作品が多く、途中で疲れるようなことはありませんが、それでも相当のボリューム感です。ただどの作品も、難しいことを抜きにして、ダイレクトに感性を刺激してくれるものばかり。まずは、特に印象に残ったものを挙げていきたいと思います。
まずは1階入口を抜けてすぐにある巨大なオブジェ、ライザ・ルーの「裏庭」(1995-99)です。何やらキラキラと光る素材にて、テーブルや花壇などのある庭の光景が象られた作品。ともかくその大きさからしてもの凄いインパクトがありますが、その素材を知ってさらに驚かされました。何とそれらは一つ一つのビーズから出来ているのです。確かに良く見ると、どれも僅か1センチほどのビーズが連なり、さらには束となっていることが分かります。床一面に生えた芝から、洗濯カゴの中に入れられたくちゃくちゃのバスタオルまで、全てがビーズ製。完成までに3年以上もかかったそうです。チープな素材でありながら、思いがけない美しい質感を見せる作品。これは良い導入かと思いました。
素材の面白さと言えば、その次の展示室の、ジャン=ミシェル=オトニエルの「ユニコーン」(2003)も魅力的です。神輿か祭壇のようなオブジェ。素材は吹きガラスでした。もちろんそれらが透明感に溢れながら、カラフルに光り輝いている。ガラスの不定形な味わいもまた美的です。まるで手で制作したかのような温もりが感じられます。
リチャード・アーシュワーガーの「クエスチョン・マーク」(1994)は、単なる「?マーク」が意外なほどに可愛らしい作品でした。ナイロンとグラスファイバーで作られた大きな「?」が、ピリオドを従えて宙から吊るされている。白い展示空間に良く映えます。誰しもが思うような現代アートへの疑問を、この「?」が一手に引き受けている。ここはしばし立ち止まって、各作品のナゾナゾに改めて挑戦したいところでした。
パンフレット表紙に掲載されているロン・ミュエクの「イン・ベッド」(2005)は抜群の存在感です。ともかくその巨大な頭に注目です。白い布団に包まれて、物思いに横を向いている。頬には手が添えられています。彼女は何を思うのでしょうか。むっちりとした皮膚や、不気味に乾いた髪の毛の質感も非常に優れている。巨大な展示室の中にて、静かに思考する大きな女性。もしかしたら、誰もいない夜にはむくむくと動き出しているかもしれない。そんな奇異なイメージすら呼び起こすような、生々しい作品でもありました。
このペースで感想を書いていくと収集がつかなくなりそうなので、これ以降は足早に進めます。まず次の3階展示室では、一番始めの巨大眼球作品、トニー・アウスラーの「ミラー・メイズ」(2003)に驚かされました。大きな球体に映し出された様々な目。それが入場者の視線を遮るかのようにきょろきょろと動いている。10個の大きな眼球に包まれた時の恐怖感がたまりません。また同じく3階では、アラン・セシャスの「大きな頭」や、ペレシャンのシリアスなビデオ作品、さらには、ヴァレジョンの肉片のこぼれ落ちそうなタイルや、力強い無言のメッセージを感じるアンデュジャールの写真作品などが印象に残りました。どれも優れていたと思います。
2階にて人気の松井えり奈を楽しんだ後は、いよいよ最後の地下2階展示室です。ここでは、森山大道の「新宿」(2002)シリーズと、「ポラロイド・ポラロイド」(1997)がともに充実していました。特に後者は圧巻です。ポラロイドによって、展示室をぐるりと一周、プライベートな部屋の空間が誕生しています。コラージュの連続体。部屋の景色に溶け込んだアニメキャラクター、特にドキンちゃんが妙に存在感を発揮していました。この森山は私には新鮮です。
地下の大空間では、サラ・ジーのインスタレーションが目を引きます。梯子やバケツなどのチープ極まりない素材によりながら、あたかもカンディンスキーの世界を立体空間で表現しているような凄まじい作品です。窓から受ける光に当たって、モービルのように美しく変化していく。しばらく眺めていたい作品でした。
今年に入って、独仏の一私企業(もしくは財団)のコレクション展を3つ見てきました。(「ドイツ銀行@原美術館」と「ダイムラー@オペラシティ」)おそらくそれらの中では、このカルティエが一番評価の定まらない作品が集まっていたのかと思います。しかしどれも感覚的で、エンターテイメントとしても楽しめる作品が多い。もちろん、キャプションもノートのような形になって付いています。しかしそれらはあくまでも作品の種明かしです。まずは自由に色々と感じとってみて、その感覚を大切にしていく。そんな現代アートならではの楽しみ方が出来る展覧会です。また、このような表面的とも言える分かり易さは、作品としての美感があればアートとして十分に満足出来ます。来月2日までの開催。是非おすすめしたいです。
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