NHK交響楽団 「フランク:交響曲」他 6/15

NHK交響楽団 第1573回公演Bプログラム2日目

バッハ 管弦楽組曲第3番第2曲「エア」
武満徹 セレモニアル - An Autumn Ode(1992)
モーツァルト ピアノ協奏曲第25番
フランク 交響曲

指揮 準・メルクル
笙 宮田まゆみ
ピアノ スティーヴン・コワセヴィチ

2006/6/15 19:00 サントリーホール2階

N響のB定期を聴くのは2年ぶりくらいでしょうか。指揮は、このところN響との共演を重ねている準・メルクルです。また、ピアノは当初ヘブラーが予定されていましたが、体調不良により来日不可とのことでコワセヴィチに変更となっていました。



一曲目の「エア」は、言うまでもなく先日亡くなられた岩城宏之さんへの追悼の念をこめて演奏されたものです。最近、あまりN響を指揮されていなかったようですが、今年9月には創立80周年コンサートの指揮も予定されていました。指揮台横に立ったメルクルの挙手での指揮の元、ゆったりしたテンポで、かの静謐な調べがホール全体に響き渡ります。清純なヴァイオリンの響きよりも、コントラバスの力強いピチカートが印象的でした。リズムがあたかも心臓の鼓動のように聞こえてくる。もちろん拍手はありません。あくまでも岩城さんへの祈りの音楽です。

宮田まゆみの笙が「セレモニアル」で登場します。まず笙のソロがホールに大きく鳴り響く。凝縮されたその神秘的な響きは、この場を一気に神聖な、儀式の場へと変化させます。霊の魂を呼ぶかのようにて大きく呼吸する笙の響き。これに誘われて来たのはもちろん管弦楽でした。弦と木管が一音一音、積み重なるようにして響いていく。メルクルの巧みな指揮により、N響の合奏が一つになっています。そして最後はまた笙がソロで鳴っていく。ここで笙は、自身が呼び起こした音の波を静めるかのようにして消えていきます。この日のプログラムの中で一番出来の良い演奏でした。

コワセヴッチを迎えてのモーツァルトのコンチェルトは、一言で示せば非常にマッチョな演奏です。メルクルのキビキビとした指揮がオケをドライブし、かなり剛胆に鳴るコワセヴィチのピアノが追っかける。彼のピアノについてはあまり感銘するところがありませんが、総じて無難に務めを果たしていました。また、やや叩くようなそのピアニズムは、アンダンテよりもアレグレット楽章の方に合っています。一音の美しさよりも、勢いで弾き切る。インテンポのメルクルとの競争です。一方のN響のサポートですが、これはあまり良くありません。メルクルはもっとキレの良い、引き締まった、それでいてリズミカルなモーツァルトを要求していたと思います。ただ残念ながらそれが表現出来ていない。総じて音を引っ張り過ぎました。鈍重です。メルクルの覇気も空回りしていたと思います。

メインはフランクの交響曲でしたが、ハッキリ申し上げてかなり苦手な曲です。演奏についても何とも書きようがありません。サントリーで聴くN響は、やはり響きのまとまり、そして個々の奏者のレベルの高さを感じます。それはもちろんこのフランクでも同様です。ティンパニもしっかりと鳴り、トランペットもぶれない。もちろんヴァイオリンも器用に立ち回る。それにフィナーレも盛り上がります。フォルテッシモでの美感はさすがです。濁りません。しかし残念ながら、そこから何かを感じとれるまでには達しませんでした。どうも良く分かりません。

メルクルはとても力のある指揮者かと思います。これまでにもN響で何度か聴いてきました。ただいつも、不思議と感銘するまでには至らない。もしかしたらあまり相性が良くないのかもしれません。(もちろん、別のオーケストラで聴けば印象が変化するかもしれませんが。)全体的に今ひとつ煮え切らないコンサートでした。
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