都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「アートとともに 寺田小太郎コレクション」 府中市美術館 6/10
府中市美術館(東京都府中市浅間町1-3)
「アートとともに 寺田小太郎コレクション」
4/29-7/17
府中市美術館で開催中の、日本有数のコレクターである寺田小太郎氏のコレクション展です。ちなみに寺田氏とは、東京オペラシティの建設に伴い私有地を提供した人物で、収集活動もそれを機に始まったのだそうです。難波田親子、相笠昌義、郭仁植、李禹煥など、オペラシティのアートギャラリーでもお馴染みの作家が多数並んでいます。展示作品は、4000点にも及ぶ氏のコレクションから選ばれた約140点。(オペラシティ所有の10点を含む。)それを、「東洋的抽象」や「白と黒」などの4つのセクションにて紹介していきます。とても見応えのある展覧会でした。
一番目の「東洋的抽象」では、まず難波田龍起、史男親子の作品(計10点)が目を引きます。油彩が深淵を見せる龍起と、不安定な線と柔らかな水彩に儚さが感じられる史男の水彩。陽が海に溶けているような史男の「太陽」(1970)などが特に印象に残りました。また寺田氏の難波田親子コレクションは国内随一です。そして氏自身も、龍起の抽象画に出会ってからコレクションへの火がついたと述べています。以前、オペラシティで開催された龍起、史男の展覧会を思わせる空間が形成されていました。
もちろん、このセクションでは李禹煥を外すことが出来ません。彼の作品は計4点。お馴染みの「線より」(1976)と「点より」(1978)に、「風と共に」(1988)のシリーズが2点加わっています。ここでは、小さい方の「風と共に」が魅力的です。ペタペタとライマンの絵画のように塗られたグレーの顔料。所々に見える黒い絵具が画面に良いアクセントをもたらしている。李の作品は、どれも音楽を思わせるようなリズムが感じられますが、この絵もまるでカラカラと静かに音を立てているようでした。それにタッチがザワザワとうごめいて、絵具同士がぶつかり合う。動きのある作品です。(画像はもう一点の「風と共に」です。)
「黒と白」のコーナーでは、山口啓介の「RNA World 5つの空 5つの海」(1990-97)が圧倒的でした。幅4メートル近くもある巨大な屏風絵巻。広がる大地に伸びる地平線。奇怪な形をした乗り物のような物体があちらこちらに描かれている。これはまるで戦車です。そして所々から立ち上がる煙は戦乱の証でしょうか。SF的な戦争の光景。ズンズンと地響きを立てて更新する軍隊。それがこちらへ迫っている。もの凄い迫力を見せつけています。
「戦後日本のすがた・かたち」では、以前、オペラシティの展覧会でも印象深かった相笠昌義の作品が目立っていました。多くの人が描かれた都市の光景。しかしそれらの人々は一つずつ完全に切り離されて孤立している。寂しく悲哀に満ちたサラリーマン。独特の色調にまとめられた相笠の絵画は、どれも非常に刹那的です。ただ、「ユズを持つ女」(1983)のような女性を描いた作品は少し毛色が異なります。寂し気にポーズをとりながらも、どこか内なる強い意思を発露しているようにも見える。この静けさの中にある魂は強固です。力強さすら感じられました。
寺田氏のコレクター活動は今も続いています。最後の「寺田小太郎の部屋」と題された展示室には、呉亜沙の「Every knows me」(2005)や山本麻友香の「Blue Pond」(2004、画像上。)などが並んでいました。そして伊庭靖子の「untitled」(2001、画像下。)が光り輝いている。色彩の波に包まれてしまいそうです。それらが棟方志功の木版画などと同じ空間で展示されている。まさに寺田氏の感性が色濃く反映された場所とも言えるでしょう。
オペラシティの所蔵品展と相性の良い方には、是非おすすめしたい展覧会です。私も期待以上に満足出来ました。来月17日までの開催です。
「アートとともに 寺田小太郎コレクション」
4/29-7/17
府中市美術館で開催中の、日本有数のコレクターである寺田小太郎氏のコレクション展です。ちなみに寺田氏とは、東京オペラシティの建設に伴い私有地を提供した人物で、収集活動もそれを機に始まったのだそうです。難波田親子、相笠昌義、郭仁植、李禹煥など、オペラシティのアートギャラリーでもお馴染みの作家が多数並んでいます。展示作品は、4000点にも及ぶ氏のコレクションから選ばれた約140点。(オペラシティ所有の10点を含む。)それを、「東洋的抽象」や「白と黒」などの4つのセクションにて紹介していきます。とても見応えのある展覧会でした。
一番目の「東洋的抽象」では、まず難波田龍起、史男親子の作品(計10点)が目を引きます。油彩が深淵を見せる龍起と、不安定な線と柔らかな水彩に儚さが感じられる史男の水彩。陽が海に溶けているような史男の「太陽」(1970)などが特に印象に残りました。また寺田氏の難波田親子コレクションは国内随一です。そして氏自身も、龍起の抽象画に出会ってからコレクションへの火がついたと述べています。以前、オペラシティで開催された龍起、史男の展覧会を思わせる空間が形成されていました。
もちろん、このセクションでは李禹煥を外すことが出来ません。彼の作品は計4点。お馴染みの「線より」(1976)と「点より」(1978)に、「風と共に」(1988)のシリーズが2点加わっています。ここでは、小さい方の「風と共に」が魅力的です。ペタペタとライマンの絵画のように塗られたグレーの顔料。所々に見える黒い絵具が画面に良いアクセントをもたらしている。李の作品は、どれも音楽を思わせるようなリズムが感じられますが、この絵もまるでカラカラと静かに音を立てているようでした。それにタッチがザワザワとうごめいて、絵具同士がぶつかり合う。動きのある作品です。(画像はもう一点の「風と共に」です。)
「黒と白」のコーナーでは、山口啓介の「RNA World 5つの空 5つの海」(1990-97)が圧倒的でした。幅4メートル近くもある巨大な屏風絵巻。広がる大地に伸びる地平線。奇怪な形をした乗り物のような物体があちらこちらに描かれている。これはまるで戦車です。そして所々から立ち上がる煙は戦乱の証でしょうか。SF的な戦争の光景。ズンズンと地響きを立てて更新する軍隊。それがこちらへ迫っている。もの凄い迫力を見せつけています。
「戦後日本のすがた・かたち」では、以前、オペラシティの展覧会でも印象深かった相笠昌義の作品が目立っていました。多くの人が描かれた都市の光景。しかしそれらの人々は一つずつ完全に切り離されて孤立している。寂しく悲哀に満ちたサラリーマン。独特の色調にまとめられた相笠の絵画は、どれも非常に刹那的です。ただ、「ユズを持つ女」(1983)のような女性を描いた作品は少し毛色が異なります。寂し気にポーズをとりながらも、どこか内なる強い意思を発露しているようにも見える。この静けさの中にある魂は強固です。力強さすら感じられました。
寺田氏のコレクター活動は今も続いています。最後の「寺田小太郎の部屋」と題された展示室には、呉亜沙の「Every knows me」(2005)や山本麻友香の「Blue Pond」(2004、画像上。)などが並んでいました。そして伊庭靖子の「untitled」(2001、画像下。)が光り輝いている。色彩の波に包まれてしまいそうです。それらが棟方志功の木版画などと同じ空間で展示されている。まさに寺田氏の感性が色濃く反映された場所とも言えるでしょう。
オペラシティの所蔵品展と相性の良い方には、是非おすすめしたい展覧会です。私も期待以上に満足出来ました。来月17日までの開催です。
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