都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ルノワール+ルノワール展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷区道玄坂2-24-1)
「ルノワール+ルノワール展」
2/2-5/6
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二人のルノワール、画家オーギュストとその子で映画監督のジャンとの関係を、主にオーギュストの絵画よりひも解きます。Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の「ルノワール+ルノワール展」へ行ってきました。
構成は以下の通りです。国内外から集められたオーギュストの絵画約50点、またジャンの映像作品(抜粋)約15点ほどが紹介されています。
第1章「家族の肖像」
肖像作家、オーギュスト・ルノワール。オーギュストの描く肖像画と、ジャンの絵付けした陶器など。
第2章「モデル」
モデルに家族や知人を好んだオーギュストの絵画から、ジャンへの愛情を見る。
第3章「自然」
オーギュストの好んだ戸外の風景や裸婦像と、関連するジャン映画作品について。
第4章「娯楽と社会生活」
モンマルトルで生きたオーギュスト。
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上でも触れたように、この展示の主役はあくまでもオーギュストにありますが、ジャンとの関係を探る方法として優れているのは、絵画と映像、つまりはオーギュストとジャンの創作に見られる共通点をいくつか提示していることです。実際、会場でも、父の絵画の影響を受けたとされるジャンの映像作品が隣り合わせになって紹介されています。衣服に細密な描写を施したオーギュストの「スペインのギター弾き」(1894)と、同じようにオリエンタルな衣装を登場人物に施したジャンの「黄金の馬車」(1952)、または鬱蒼とした木立の水辺にて小舟の浮かぶ「風景、ブージヴァル」(1888)と、その絵画をそっくり映像化したような「草の上の昼食」(1959)のワンシーンなどは、類似性も明らかな一例です。偉大な父を持つジャンが、絵画よりいくつかのインスピレーションを得て映画を製作していたのは確かなようです。
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このような父子の関係を超えた、芸術家としての二者の繋がりを探るのも興味深いものがありますが、この展覧会でさらに優れている点として挙げられるのは、独立したルノワールの絵画展として見ても相当に充実したラインナップであることです。確かに量こそ50点ほどと少なめですが、特にオルセーからの作品には目を奪われるものがありました。中でもルノワールが『光の効果』を追求し、それを結実させた「ぶらんこ」(1876)は大変に魅力的です。斑点状の光の粒があたかも内側から灯るように木立や人物を照らし出し、モネを思わせるような鮮やかな色彩のブレンドがこの情景を幻想の世界へと誘っています。またもう一点優れているのが、「バナナ畑」(1881)です。これは実際にオーギュストがアルジェリアへ出向いて描いた作品だそうですが、南国の眩しい陽光とむせ返るような熱気が絵の中より発露しています。また、風車のように揺れるバナナ葉の色遣いも実に巧みです。赤茶けた大地、白の散った力強い緑の葉、そしてうっすらとピンク色を帯びた空とのコントラストも見事でした。
展示ではやや物足りなさも残るジャンの映画については、日仏学院や文化村の映画館、それに東京国立近代美術館フィルムセンターにて関連作品の上映が行われています。(現在はフォルムセンターのみ。)補完するプログラムも充実しています。
実のところルノワールはそれほど好きな画家ではありませんが、少なくともこれまでに見たルノワール関連の展示で一番楽しめました。切り口も鮮やかな好企画であることは間違いありません。
5月6日までの開催です。
「ルノワール+ルノワール展」
2/2-5/6
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二人のルノワール、画家オーギュストとその子で映画監督のジャンとの関係を、主にオーギュストの絵画よりひも解きます。Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の「ルノワール+ルノワール展」へ行ってきました。
構成は以下の通りです。国内外から集められたオーギュストの絵画約50点、またジャンの映像作品(抜粋)約15点ほどが紹介されています。
第1章「家族の肖像」
肖像作家、オーギュスト・ルノワール。オーギュストの描く肖像画と、ジャンの絵付けした陶器など。
第2章「モデル」
モデルに家族や知人を好んだオーギュストの絵画から、ジャンへの愛情を見る。
第3章「自然」
オーギュストの好んだ戸外の風景や裸婦像と、関連するジャン映画作品について。
第4章「娯楽と社会生活」
モンマルトルで生きたオーギュスト。
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上でも触れたように、この展示の主役はあくまでもオーギュストにありますが、ジャンとの関係を探る方法として優れているのは、絵画と映像、つまりはオーギュストとジャンの創作に見られる共通点をいくつか提示していることです。実際、会場でも、父の絵画の影響を受けたとされるジャンの映像作品が隣り合わせになって紹介されています。衣服に細密な描写を施したオーギュストの「スペインのギター弾き」(1894)と、同じようにオリエンタルな衣装を登場人物に施したジャンの「黄金の馬車」(1952)、または鬱蒼とした木立の水辺にて小舟の浮かぶ「風景、ブージヴァル」(1888)と、その絵画をそっくり映像化したような「草の上の昼食」(1959)のワンシーンなどは、類似性も明らかな一例です。偉大な父を持つジャンが、絵画よりいくつかのインスピレーションを得て映画を製作していたのは確かなようです。
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このような父子の関係を超えた、芸術家としての二者の繋がりを探るのも興味深いものがありますが、この展覧会でさらに優れている点として挙げられるのは、独立したルノワールの絵画展として見ても相当に充実したラインナップであることです。確かに量こそ50点ほどと少なめですが、特にオルセーからの作品には目を奪われるものがありました。中でもルノワールが『光の効果』を追求し、それを結実させた「ぶらんこ」(1876)は大変に魅力的です。斑点状の光の粒があたかも内側から灯るように木立や人物を照らし出し、モネを思わせるような鮮やかな色彩のブレンドがこの情景を幻想の世界へと誘っています。またもう一点優れているのが、「バナナ畑」(1881)です。これは実際にオーギュストがアルジェリアへ出向いて描いた作品だそうですが、南国の眩しい陽光とむせ返るような熱気が絵の中より発露しています。また、風車のように揺れるバナナ葉の色遣いも実に巧みです。赤茶けた大地、白の散った力強い緑の葉、そしてうっすらとピンク色を帯びた空とのコントラストも見事でした。
展示ではやや物足りなさも残るジャンの映画については、日仏学院や文化村の映画館、それに東京国立近代美術館フィルムセンターにて関連作品の上映が行われています。(現在はフォルムセンターのみ。)補完するプログラムも充実しています。
実のところルノワールはそれほど好きな画家ではありませんが、少なくともこれまでに見たルノワール関連の展示で一番楽しめました。切り口も鮮やかな好企画であることは間違いありません。
5月6日までの開催です。
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