都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「近代日本画と洋画にみる対照の美」(前期) 泉屋博古館分館
泉屋博古館分館(港区六本木1-5-1)
「近代日本画と洋画にみる対照の美」(前期)
3/15-6/8
館蔵の近代日本画と洋画を概観します。泉屋博古館分館で開催中の「近代日本画と洋画にみる対照の美」へ行ってきました。
出品作家は以下の通りです。
日本洋画:浅井忠、熊谷守一、坂本繁二郎、梅原龍三郎、岸田劉生、鹿子木孟郎、藤島武二など。
日本画:橋本雅邦、竹内栖鳳、東山魁夷、下村観山、富岡鉄斎、小林古径など。
西洋画:ジャン=ポール・ローランス、クロード・モネ(日本洋画に影響を与えたという観点より出品。)
タイトルに「対照の美」とあり、また展示でも例えば「花鳥画対静物画」や「美人画と肖像画」、それに「風景を描く(日本画、洋画)」など、いくつかのテーマに沿った章立てがなされていますが、その割には各々の特質などが浮かび上がってくる内容というわけでもありません。むしろ表題の示す場所とは別個の、館蔵の日本人画家による洋画、日本画の名品展という趣きも感じられました。とは言え、良品が揃っているのは事実です。まずは肩の力を抜いて上記の作家の絵画を堪能してきました。
惹かれた作品を挙げていきます。浅井忠と言えば油彩画のイメージがありますが、今回は珠玉の水彩、「グレーの森」(1901年。前期展示。)に魅力を感じました。水辺に反射する木立が瑞々しく表され、葉の緑が控えめな美感をたたえています。また同じく『風景を描く(洋画)』のセクションからは、私の一推しの画家、藤島武二の「室戸遠望」(1935年。通期展示。)を是非挙げておきたいところです。輝かしい青みをたたえた海原があたかも粘土を塗り固めたようなマチエールにて示され、白波とせめぎあう岩場が海面から迫出してくるように力強く配されています。それに海の青、岩の茶色、そして波の白のどこか毒々しいまでの濃厚な海景に対し、上部の空におけるうっすらと水色に白んだ描写が対比的でした。海をこれほど厳格な様子で表した作品もそうないのではないでしょうか。
日本画でおすすめなのは、以下の二点、竹内栖鳳の「禁城松翠」(1928年。前期展示。)と小林古径の「人形」(1939年。前期展示。)です。前者ではその堀を張る水が驚くほど透明感のある色彩で示され、後者では黒いレースを纏った人形がまさに貴婦人の様子で凛と佇んでいます。また禁城における素描的な石垣へ迫出すたらし込みの美しい松の描写や、人形での折重なるレースに浮き上がった花々の細かな表現にも目を奪われるものがありました。かの貴婦人はこの後どこへお出ましになるのでしょうか。この上品さはまさに古径ならではの味わいと言えそうです。
最後に目にとまったのは、今月末よりブリヂストン美術館で回顧展も始まる、岡鹿之助の「三色スミレ」(1977年。通期展示。)でした。沈み込むような青みを有する、クレヨンと見間違うような柔らかいタッチに包まれているのは、花瓶よりけなげに突き出すスミレの三姉妹です。それぞれがどこか誇らし気に花開きながら、仲睦まじく一つの花瓶におさまっています。花に慈愛を見る作品でした。
展示作の約半数ほどが前後期で入れ替わります。機会があれば後期展示も見に行きたいです。(前期:~4/27、後期:4/29~6/8)
静かな環境で絵を楽しめる展覧会です。6月8日まで開催されています。
「近代日本画と洋画にみる対照の美」(前期)
3/15-6/8
館蔵の近代日本画と洋画を概観します。泉屋博古館分館で開催中の「近代日本画と洋画にみる対照の美」へ行ってきました。
出品作家は以下の通りです。
日本洋画:浅井忠、熊谷守一、坂本繁二郎、梅原龍三郎、岸田劉生、鹿子木孟郎、藤島武二など。
日本画:橋本雅邦、竹内栖鳳、東山魁夷、下村観山、富岡鉄斎、小林古径など。
西洋画:ジャン=ポール・ローランス、クロード・モネ(日本洋画に影響を与えたという観点より出品。)
タイトルに「対照の美」とあり、また展示でも例えば「花鳥画対静物画」や「美人画と肖像画」、それに「風景を描く(日本画、洋画)」など、いくつかのテーマに沿った章立てがなされていますが、その割には各々の特質などが浮かび上がってくる内容というわけでもありません。むしろ表題の示す場所とは別個の、館蔵の日本人画家による洋画、日本画の名品展という趣きも感じられました。とは言え、良品が揃っているのは事実です。まずは肩の力を抜いて上記の作家の絵画を堪能してきました。
惹かれた作品を挙げていきます。浅井忠と言えば油彩画のイメージがありますが、今回は珠玉の水彩、「グレーの森」(1901年。前期展示。)に魅力を感じました。水辺に反射する木立が瑞々しく表され、葉の緑が控えめな美感をたたえています。また同じく『風景を描く(洋画)』のセクションからは、私の一推しの画家、藤島武二の「室戸遠望」(1935年。通期展示。)を是非挙げておきたいところです。輝かしい青みをたたえた海原があたかも粘土を塗り固めたようなマチエールにて示され、白波とせめぎあう岩場が海面から迫出してくるように力強く配されています。それに海の青、岩の茶色、そして波の白のどこか毒々しいまでの濃厚な海景に対し、上部の空におけるうっすらと水色に白んだ描写が対比的でした。海をこれほど厳格な様子で表した作品もそうないのではないでしょうか。
日本画でおすすめなのは、以下の二点、竹内栖鳳の「禁城松翠」(1928年。前期展示。)と小林古径の「人形」(1939年。前期展示。)です。前者ではその堀を張る水が驚くほど透明感のある色彩で示され、後者では黒いレースを纏った人形がまさに貴婦人の様子で凛と佇んでいます。また禁城における素描的な石垣へ迫出すたらし込みの美しい松の描写や、人形での折重なるレースに浮き上がった花々の細かな表現にも目を奪われるものがありました。かの貴婦人はこの後どこへお出ましになるのでしょうか。この上品さはまさに古径ならではの味わいと言えそうです。
最後に目にとまったのは、今月末よりブリヂストン美術館で回顧展も始まる、岡鹿之助の「三色スミレ」(1977年。通期展示。)でした。沈み込むような青みを有する、クレヨンと見間違うような柔らかいタッチに包まれているのは、花瓶よりけなげに突き出すスミレの三姉妹です。それぞれがどこか誇らし気に花開きながら、仲睦まじく一つの花瓶におさまっています。花に慈愛を見る作品でした。
展示作の約半数ほどが前後期で入れ替わります。機会があれば後期展示も見に行きたいです。(前期:~4/27、後期:4/29~6/8)
静かな環境で絵を楽しめる展覧会です。6月8日まで開催されています。
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