「いみありげなしみ」 東京国立近代美術館(ギャラリー4)

東京国立近代美術館千代田区北の丸公園3-1
「いみありげなしみ」(本館・所蔵作品展ギャラリー4)
4/20-8/8



「しみ」をテーマに、館蔵の絵画、写真、版画などを紹介します。東京国立近代美術館の所蔵作品展ギャラリー4で開催中の「いみありげなしみ」へ行ってきました。


村上華岳「空山清高之図」(1934)

液体による物理的な「しみ」が取り上げられているのは言うまでもありませんが、所蔵作品を横断的に切り取るギャラリー4の企画のこと、そう簡単に一目で分かる「しみ」ばかりが並んでいるわけでもありません。岸田劉生にはじまり、村上華岳の日本画なども登場する構成には、意表を突かれる方も多いのではないでしょうか。例えば筆の跡などの制作の痕跡そのものを表す、ようは広義の「しみ」を提示しているところも、この展示の見るべき点であるのかもしれません。


榎倉康二「版 STORY&MEMORY No.1」(1993年)

しかしながら今回の中核を成すのは、かねてより「しみ」の表現に取り組んできた現代作家、榎倉康二による一連の作品に他なりません。彼の展示というと、何年か前に木場のMOTで開催された大規模な個展を思い出しますが、ここ竹橋にもフェルトやテント綿布、それに写真などの作品、約10点強が紹介されていました。見応え十分です。


モーリス・ルイス「神酒」(1958年)

また目立っているのは、まさにキャンバスに絵具を滲み込ませる技法として知られるステイニングの画家、丸山直文とモリース・ルイスの大作絵画でした。特にルイスというと川村記念美術館の回顧展の記憶も鮮やかなところですが、どこか和をイメージさせる草色を幾重にも塗って出来た皮膜は、キャンバスを通して開ける彼岸への入口のようにも見えて興味深いものがあります。ここはしばし絵の前の椅子に座って、かの地へ行き来するような危うい感覚を味わいました。



8月8日まで開催されています。常設展の際はお見逃しなきようご注意下さい。

注)写真の撮影は許可制です。事前に受付へ申し出る必要があります。
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