都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「琳派コレクション一挙公開 国宝燕子花図屏風」 根津美術館
根津美術館(港区南青山6-5-1)
「琳派コレクション一挙公開 国宝燕子花図屏風」
4/24-5/23
根津美術館の誇る畢竟の大作「燕子花図屏風」を中心に、館蔵の琳派コレクションを概観します。開催中の「琳派コレクション一挙公開 国宝燕子花図屏風」へ行ってきました。
ちらしの「ようこそ、新しい根津美術館へ」という言葉を、そのまま「ようこそ、新しい燕子花図屏風へ」と置き換えても問題ないかもしれません。誰もが知る光琳の「燕子花図」は、LED照明の他、新装根津美の効果的な展示方法の力を借りてか、また新たなる魅力をたたえて待ち構えていました。以下、この屏風について今回私が初めて見知った、もしくは感じた箇所を3点ほど挙げてみたいと思います。
「国宝燕子花図屏風」(右隻)尾形光琳 根津美術館蔵
1.右隻と左隻に差し込む光は異なっていた
この屏風というとそれこそ一点の曇りもない金地に燕子花が羅列しているような印象がありますが、実際には右隻と左隻でその色味、特に明るさが微妙に異なっているような気がしてなりません。大きく花が伸びるように群がる右隻の方がやや明るいのに対し、花が下方に沈むように並んだ左隻はやや翳っているような印象を与えられます。それが例えば朝か昼かというような、画中の時間の差異までを意図したものかどうかは不明ですが、左隻の燕子花の濃くて重い青の色遣いなど、個々の花にそれぞれ違った表情が与えられているのは興味深く感じました。右が陽としたら左は陰とでも言えるのかもしれません。
「国宝燕子花図屏風」(左隻)尾形光琳 根津美術館蔵
2.燕子花は紛れもなくタブローである
ともすると型紙をペタペタと貼付けたようなイメージでも語られることがありますが、細部の描写まで際立って見える今回の展示に接すると、その花弁や葉一枚一枚に、光琳の筆の息遣いというものが強く感じられます。葉脈には金の筋も仄かに混じり、また花弁もしっとりと重く、顔料は金地へと溢れんばかりに滲み出していました。光琳は水墨画などを見ても、軽快な筆さばきが持ち味でもありますが、この燕子花でもその面は損なわれることなく発揮されているようです。
3.類い稀なき情緒性
2で触れた筆の息遣いという点と共通する部分があるかもしれません。堂々と並ぶ燕子花を遠目で眺めると、まさに琳派の王者と言うべき力強さや威厳を感じる面もありますが、近くに寄ると、まさに実際の花を愛でているような、意外にも繊細で可憐な表情を見て取ることが出来ます。単なるデザイン云々を通り越した、燕子花の持つ香しき情緒性こそ、この作品の魅力の一つであるのかもしれません。
「夏秋渓流図屏風」(右隻)鈴木其一 根津美術館蔵
ところで本展では燕子花図屏風にあわせ、色彩の乱舞が目に眩しい其一の「夏秋渓流図屏風」の他、抱一の墨画なども展示されています。(出品リスト)またコレクション展においても、この燕子花が初めて同館で披露された際に催された茶会を再現する展示、「燕子花図屏風の茶」などの見どころも盛りだくさんでした。
お庭のカキツバタも満開を迎えているそうです。写真は私が出向いたGW中のものですが、その時もほぼ見頃でした。
藤もまだ楽しめるのではないでしょうか。
5月23日まで開催されています。
「琳派コレクション一挙公開 国宝燕子花図屏風」
4/24-5/23
根津美術館の誇る畢竟の大作「燕子花図屏風」を中心に、館蔵の琳派コレクションを概観します。開催中の「琳派コレクション一挙公開 国宝燕子花図屏風」へ行ってきました。
ちらしの「ようこそ、新しい根津美術館へ」という言葉を、そのまま「ようこそ、新しい燕子花図屏風へ」と置き換えても問題ないかもしれません。誰もが知る光琳の「燕子花図」は、LED照明の他、新装根津美の効果的な展示方法の力を借りてか、また新たなる魅力をたたえて待ち構えていました。以下、この屏風について今回私が初めて見知った、もしくは感じた箇所を3点ほど挙げてみたいと思います。
「国宝燕子花図屏風」(右隻)尾形光琳 根津美術館蔵
1.右隻と左隻に差し込む光は異なっていた
この屏風というとそれこそ一点の曇りもない金地に燕子花が羅列しているような印象がありますが、実際には右隻と左隻でその色味、特に明るさが微妙に異なっているような気がしてなりません。大きく花が伸びるように群がる右隻の方がやや明るいのに対し、花が下方に沈むように並んだ左隻はやや翳っているような印象を与えられます。それが例えば朝か昼かというような、画中の時間の差異までを意図したものかどうかは不明ですが、左隻の燕子花の濃くて重い青の色遣いなど、個々の花にそれぞれ違った表情が与えられているのは興味深く感じました。右が陽としたら左は陰とでも言えるのかもしれません。
「国宝燕子花図屏風」(左隻)尾形光琳 根津美術館蔵
2.燕子花は紛れもなくタブローである
ともすると型紙をペタペタと貼付けたようなイメージでも語られることがありますが、細部の描写まで際立って見える今回の展示に接すると、その花弁や葉一枚一枚に、光琳の筆の息遣いというものが強く感じられます。葉脈には金の筋も仄かに混じり、また花弁もしっとりと重く、顔料は金地へと溢れんばかりに滲み出していました。光琳は水墨画などを見ても、軽快な筆さばきが持ち味でもありますが、この燕子花でもその面は損なわれることなく発揮されているようです。
3.類い稀なき情緒性
2で触れた筆の息遣いという点と共通する部分があるかもしれません。堂々と並ぶ燕子花を遠目で眺めると、まさに琳派の王者と言うべき力強さや威厳を感じる面もありますが、近くに寄ると、まさに実際の花を愛でているような、意外にも繊細で可憐な表情を見て取ることが出来ます。単なるデザイン云々を通り越した、燕子花の持つ香しき情緒性こそ、この作品の魅力の一つであるのかもしれません。
「夏秋渓流図屏風」(右隻)鈴木其一 根津美術館蔵
ところで本展では燕子花図屏風にあわせ、色彩の乱舞が目に眩しい其一の「夏秋渓流図屏風」の他、抱一の墨画なども展示されています。(出品リスト)またコレクション展においても、この燕子花が初めて同館で披露された際に催された茶会を再現する展示、「燕子花図屏風の茶」などの見どころも盛りだくさんでした。
お庭のカキツバタも満開を迎えているそうです。写真は私が出向いたGW中のものですが、その時もほぼ見頃でした。
藤もまだ楽しめるのではないでしょうか。
5月23日まで開催されています。
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