「生誕120年 奥村土牛」 山種美術館

山種美術館渋谷区広尾3-12-36
「生誕120年 奥村土牛」
4/3-5/23



国内屈指の土牛コレクションを展観します。山種美術館で開催中の「生誕120年 奥村土牛」へ行ってきました。

土牛は元々好きな日本画家だったので、これまでにも関連の展示は欠かさず見てきたつもりでしたが、それでも今回また新たな発見があり、その魅力を知ったような気がしてなりません。単なる名品展ではなく、土牛が関心を持っていた西洋画との関連も追いながら、さらには彼の残した言葉を交えて作品を紹介していく、言わば画業の全貌を探る内容となっていました。

私として特に興味深いのは、前述の西洋絵画との関連、つまりはセザンヌとの繋がりです。土牛は若い頃から積極的に西洋絵画を学んでいたそうですが、彼の一種の幾何学面を組み合わせた独特の平面構成は、とりわけ惹かれていたというセザンヌを彷彿させる部分が確かにあるのではないでしょうか。また土牛の真骨頂でもあるたらし込みの色彩感も、その絶妙なニュアンスからしてセザンヌ的だと言えるのかもしれません。土牛における「モダンさ」がそうした点に由来しているとは夢にも思いませんでした。



並び合う代表作二点、「那智」(1958年)と「鳴門」(1959年)の展示は壮観の一言につきます。両者とも水の質感、とりわけ「鳴門」における緑色の味わいは大変に重厚ですが、一転してあたかも滝の轟音まで伝わってくるかのような「那智」の白も、水しぶきを浴びているような清涼感を得ることができました。

姫路城の城門を描いた「門」(1967年)は土牛ならでの平面構成を伺い知れる作品と言えるかもしれません。門の奥行きは一枚の面に還元されながらも、そのどっしりとした立体感や重みが絵具によって確かに表されています。またちらし表紙にも掲載された「醍醐」(1972年)も桜色を通した陽の光が眩しい作品ですが、この門における白壁の光の輝きもまた見事でした。壁には光の粒子がまかれています。

その他、細かな素描や、同美術館創設者の山崎種二に宛てた書簡などの見どころも満載でした。土牛に関しては他の追従を許さない山種美術館の底力を感じる展覧会です。三番町時代の土牛展とは一味も二味も違いました。

5月23日まで開催されています。お見逃しなきようおすすめします。
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