物欲。
長年愛用の鉈の話をした舌の根も乾かぬうちにというかなんというか、12年ぶりに新たな山の武器を買ってしまったのだ。
発売元は三条のコンヨさん。
剣鉈と呼ばれる、剣先の鉈。
枝を払うだけなら、切っ先のない腰鉈で用は足りる。剣先鉈は腰鉈に刺す機能を追加した山包丁だ。腰鉈よりだいぶブッソーな見てくれだけど、近年、俺の歩く現場でもクマの出没が増えてたりするから、まあお守りというか気休めというか、だ。
「ツバ付き両刃鉈 耕作」という商品。
並べてるのは20cmの物差し。
長い。
柄の根元は輪でなく、鍔になっている。洋風に言うならシングルヒルトか。
左側の刻印。刃長27cm。
左を見てわかる通り、両刃だ。
ピカピカメッキの鍔に映った刃のアゴで、鋼割り込みなのがわかる。
鉈の背を叩くな、とか、薪割りには向かない、とか、常識的な注意が書かれている。
最近はわざわざナイフの背を棒で叩いてまでして小さいナイフで薪を割るのが流行ってるようだけどな。
右側には「耕作」と刻印されている。製作者の銘かもしれない。
鉈は写真の人差し指あたりでバランスが取れるので、重心はだいたい「作」の字のあたりだ。
柄は腰曲がりでなく、刃と一線にまっすぐ挿げられている。
切っ先はかなり強いカーブになっていて、峰側は大きく面が落とされて、突刺力を出している。洋風に言えばフォールスエッジだっけ。
峰は山型に成形されている。
刃厚は、一般的な腰鉈同様の6mm。5mmくらいのが普通の剣鉈としては、厚い。
この手のいわゆる剣鉈は、刃幅30mmくらいの細身のものが多いようだが、コイツは刃幅45mmと、腰鉈の細身サイズくらいある。
厚くて幅広なので、鉈本体の重量は、実測601gもあった。
12年前に買った細身の腰鉈は5mm厚の45mm幅、210mm長で481g、鞘込みで670gだったから、かなりの迫力だ。
付属の鞘込みだと791g。夕方近くなれば山に投げて帰りたくなるかもしれないな。
柄は鉈としては普通で、白樫材にすり割りを入れて茎を差し込み、先端を輪を兼ねた鍔で押さえている。ナイフならコンシールドタングってやつになるのかな。
鉈らしく、刃と柄の固定は目釘2本。目釘は反対側まで抜けておらず、茎を少し抜けたあたりまでしか届いていない。
最も強烈な打撃で使用される部類の刃物である鉈の柄の、伝統的な固定方法だ。よく、ナロータングやコンシールドタングが強度がないとかってモノの本に書いてたりするけど、書いてるヒトはどんな強度を期待してるんだべな。
柄尻は面取りされている。
この鉈も、柄のすり割りを埋めておこう。
今回は桐材を、ボンド付けて溝に叩き込む。
接着するまでしばし放置。
ボンドが固まったら、埋め木を整形。
こんなもんか。
一方、付属の鞘は、朴の木鞘にビニールレザー巻き。
吊り輪はビニール。
これすぐ切れそうだな。輪も小さくて、俺の使ってるゴツい作業ベルトがくぐらない。
鞘も作っちゃおう。
例の赤い廃材を炙って曲げて。
鯉口のとこは鍔を抱くように成形。
ニョキニョキ出てるのは、リベット板金用仮止めクランプのクレコ。
左腰に少し斜めに、刃を上に吊るデザイン。
ベルトも廃品リサイクル。
リベット締めて整形。
吊るとこんな感じ。
鉈は鞘の中で少し遊ぶ。
鯉口の、鍔を抱く部分。
逆さにしても鍔が引っかかるから落ちない。
切っ先は鞘の先から1センチ弱引っ込んでいる。
ねじれずにできた。
ニス塗りの柄は滑りそうだから、グリップテープを巻いてみよう。
20年くらい前の品。
さすがに一部表面が剥離してたりしたれど、まあいんでないかな。
ド派手にいくぜ。
鞘込みで689gになった。100gの軽量化。これなら今の腰鉈と大差ない。
あとは使ってみて、だな。