エリート街道まっしぐらだった主人公・紺屋は、ストレスから皮膚病になり銀行員を辞めて故郷の八保市に戻る。犬探し専門の調査事務所〈紺屋S&R〉を始めるが、飛び込んできた依頼は失踪人捜しと古文書の解読だった。
高校の後輩で押しかけて助手になったヤル気満々のハンペーこと半田平吉とともに調査を開始した。
いやいや探偵する紺屋と、憧れの探偵になって気分はすっかりハードボイルドのハンペーとのギャップが笑える。ネット仲間のGENとのチャットも青春小説、新人作家を感じさせる。
意外な結果は、すっきりしないが、納得はできる。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)
米澤穂信は一冊読んだだけだが、舞城王太郎のようなヤングアダルト出身の新時代作家を感じさせる。ただ、会話主体で話が進むこともあり、冗長。もっと全体をすっきりさせて、マンガチックなドタバタ感の連続を避け、さわやかなユーモアを感じさせないと、伊坂幸太郎にはなれない。
米澤穂信は、1978年岐阜県生れ。金沢大学文学部卒後、書店員をしながら執筆を続ける。2001年、『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞してデビュー。「このミスミステリーがすごい!』の2010年版では、作家別投票第1位にランクイン。主な著作は『さよなら妖精』『クドリャフカの順番』『春期限定いちごタルト事件』『犬はどこだ』『ボトルネック』『インシテミル』『儚い羊たちの祝宴』など。