伊坂幸太郎著「チルドレン」2004年5月、講談社発行を読んだ。
作品ごとに語り手が異なるが、5編の短編すべてに主人公ともいうべき「陣内」が登場する連作短編集。「陣内」は、なんでもかんでも強引に決め付け、唯我独尊で無茶苦茶な論理を振りかざし、周囲にウンザリされるが、結局自分のペースに引き込む。騒々しく、思いも掛けない見当違いな行動をとるが、うわべにとらわれず本質をえぐることになる。
「バンク」:銀行強盗の現場に出くわし、鴨居、陣内、永瀬の3人が出会う。盲目の永瀬は冷静に分析し、陣内はハチャメチャぶりを発揮。
「チルドレン」:その後何年か経って、陣内は家庭裁判所の少年事件担当の調査官になる。後輩の武藤は陣内の助け、じゃま?を受けながら非行少年の審判、更生指導にあたるが。
「レトリーバー」:陣内が自信満々でプロポーズする。そして、彼は言う。
そして、今この場所の時間が止まっていると彼は主張する??
「チルドレンⅡ」:陣内が試験観察処置とした少年の父親は、職場でも家でもペコペコし、母親はしじゅう外泊する。陣内は「俺たちは奇跡を起こすんだ」と叫び、結局・・・。
「イン」:目の見えない永瀬が語り手となり、音や風など雰囲気から多くのことを感じ取る様子が描かれる。
初出は「小説現代」2002年4月から2004年3月にかけて。また、すでに講談社で文庫化されている。
なお、本作品は2006年5月にWOWOWでTVドラマ化され、劇場公開もされた。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)
「バンク」「チルドレン」「チルドレンⅡ」などは、キャラは立っているのだが、ミステリーとしての筋立てはちょっと強引で無理が目立つ。舞城王太郎などヤングアダルト系?の最近のミステリー作家には共通の傾向と思える。
陣内は何でもかんでも断定し、それが誤っていても、間違いを認めない。(私も似たところあるので共感)
陣内は、「カラスは黒いだけなんだ。白いカラスなどいるわけない。絶対に」と断定した。その後、白いカラスの写真を突きつけられて、言った。「それは白じゃない。薄い黒だ」
かって私がよく行ったオーストラリアのパースには、街中に白黒まだらのマグパイ(カササギフエガラス)がいた。
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