hiyamizu's blog

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パトリック・ジュースキント『香水』を読む

2011年04月15日 | 読書2
パトリック・ジュースキント著、池内紀訳『香水 ある人殺しの物語』文春文庫、2003年6月、文藝春秋発行、を読んだ。

全世界1500万部という桁外れのの大ベストセラー。

18世紀のフランス・パリは汚物にまみれ、至るところに悪臭が立ちこめていた。とくにフェール街とフェロヌリー街とのあいだの一角には数百年にわたって死体が送りこまれていた。そこに、まったく体臭のない男グルヌイエが生まれた。彼は図抜けて鋭い嗅覚を持っていて、木々や草花や食品をくんくん嗅いで、匂いのボキャブラリーを増加させていき、何でも匂いを嗅げば、その匂いの基になっているものとその量を分析してしまうことが出来た。

恐ろしくグロテスクな人々が多く登場し、中でも奇人の主人公は、どんな苦労も物ともせず、お金や地位には目もくれず、至高の芳香を放つ美少女を求めて殺人を繰り返す。ありとあらゆる汚泥、疫病、犯罪、そして悪臭に満ち溢れるパリと登場人物。一方では彼が作り出す人を陶然とさせる香水。
彼は、香水調合師のもとで徒弟として短期間働いただけで、香水を嗅げば直ちにその成分、分量を簡単に知ることができるようになる。そして、究極の香水を作り出すために少女を求めて行くのだ。彼によれば、顔や身体が美しいという美女は、実はその魅力の秘密は外形の美しさにあるのではなく、唯一そのたぐいまれな匂いのせいだということをみんな知らないのだ。

「パフューム ある人殺しの話Perfume THE STORY OF A MURDER 」ドイツ・フランス・スペイン合作で2006年に映画化された。



パトリック・ジュースキント Patrick Süskind
1949年ドイツ・アムバッハ生まれ。
新聞や雑誌の編集者をしながら書いた戯曲『コントラバス』で注目される。
1985年発表の本作品は、1987年世界幻想文学大賞受賞。全世界1500万部の大ベストセラー。ほかの作品は、『鳩』と『ゾマーさんのこと』だけが発表されているだけ。
一躍有名になったジュースキントは南仏に引きこもってかたくなにプライヴァシーを守っている。

池内紀(いけうち・おさむ)
1940年、姫路市生れ。ドイツ文学者、エッセイスト。



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

途中少々飽きが来るが、たしかに変わった小説で、面白い。
美しくしっとりした風景描写、踊るような、あるいは夢見心地な音楽を思わせる小説はあるが、悪臭や得も言われぬ匂いを描いた小説は珍しい。
劣悪な環境で愛情を知らずに育った主人公は、心をもたない残忍な人殺しなのだが、お金や名誉を求めることなく、ただ、理想の匂いを得るために求道的努力を重ねる。


コメント
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