hiyamizu's blog

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中川恵一『がんの正体』を読む

2013年03月14日 | 読書2
中川恵一著『がんの正体』(2010年2月PHP研究所発行)を読んだ。

中川さんは、まず「がん」について正確な基礎知識を持ってもらいたいとわかりやすく明快にがんの正体を説明する。

●がん細胞は健康な人にも一日5千個できているが、免疫細胞(リンパ球)に殺される。

●突然異変で死なない細胞ががん細胞。免疫細胞を逃れて、10年~15年かけて1cm大になり、検査で発見できる大きさになる。

●がんが1cmから2cmになるには1~2年しかかからない。1年~2年一回の検診が必要。

●現在、日本人の2人に1人が、がんになり、3人に1人が、がんで死ぬ。

●日本は総医療費のGDPに占める割合は8 % 、OECD諸国30カ国中22番目で、アメリカの約半分。



私の評価としては、★★★★★(五つ星:是非読みたい)(最大は五つ星)

何と言っても、わかりやすい。正確な情報をわかりやすく伝えている。これが五つ星の第一の理由。

また、中川さんの死生観に私は共感できる。
中川さんは、病気で死ぬならピンピンコロリでなく、がんで死にたいという。数ヶ月から数年の猶予があり、痛み止めを適切に使えば、やり残したことを片付けられるからだという。(やり残したこともない私はどちらでも良いのだが、一般論として賛成する)

ある30代の外資系キャリアウーマンは、すでに完治しなくなった乳がんが発見された。説明を受けた上で抗癌剤治療はせず、脳の転移だけは放射線で治療した。無理な治療で生活の質を落とさずに、お酒を飲んだり旅行したりと楽しんで、人生を最後まで生き切ったという。

さらに、中川さんは、放射線科の医師で、緩和ケア診療も行う医師として、日本では手術に比べ照射線治療が少なすぎること、また激痛を緩和する医療用麻薬がアメリカの1/20しか使われていない現状を変えていくべきと主張している。
この点も多分そうであろうと思う。
勤務医が開業医に比べ、長時間勤務、相対的低賃金の劣悪な環境にあると指摘している。これも事実だろう。なにしろ、日本医師会は圧倒的に開業医が支配しているのだから。



中川恵一(なかがわ・けいいち)
東京大学医学部附属病院放射線科准教授/緩和ケア診療部長
1960年東京生れ、1985年東京大学医学部医学科卒。放射線医学教室入局。
がんのひみつ
中川恵一、養老孟司、和田秀樹著『命と向き合う - 老いと日本人とがんの壁
  
中川さんは、原発事故による放射線の人体への影響について、データに基づいてあまり心配ないと主張しているので、一部の人からボロクソに非難されている。それでも言うことは言わねばと頑張っている。

本書にあったおすすめサイトは以下。

がん情報サイト
国立がんセンターの「がん情報サービス」 :各種がんのイラスト入り解説

「日本対がん協会」 :がんと、がん検診の啓発

がん研有明病院の「がん・医療サポートに関するご相談」 :がんになって最初に読む入門篇

「がん情報サイト」 :米国国立がん研究所配信の最新がん情報(日本語)など

セコンド・オピニオン外来
「がん診療連携拠点病院」 :地域の相談窓口

「日本臨床腫瘍学会」 :抗癌剤の専門医のリスト

「日本放射線腫瘍学会」の専門医名簿 :認定施設のリストもある

緩和ケア病棟のある病院の情報
国立がんセンターがん対策情報センターのHP :緩和ケア病棟のある病院の情報

在宅ホスピス協会のHP



以下、私のメモ

●細胞は52回細胞分裂すると死ぬ。しかし、突然異変でDNAが変化すると大部分の細胞は死ぬが、生き残った細胞ががん細胞(死なない細胞)になる。10年~15年かけて30回細胞分裂して10億個になり1cm大になり、検査で発見できる最小の大きさになる。この段階で「がん」という病気になる。

●暴走する細胞であるがんは何倍もの栄養を必要とし、患者はやせていく。

●現在、日本人の2人に1人が、がんになり、3人に1人が、がんで死ぬ。

●がんは40歳ごろから増加するので、平均寿命が30~40歳の国ではがんはほとんどない。

●ごく一部(5%)のがんを除いて、がんは遺伝しない。家族の生活習慣の影響はある。

●がんは生活習慣病。野菜中心、適度な運動、タバコは吸わず、酒は少々で、リスクは半分になる。

●がんの早期発見のチャンスは1年~2年しかない。がんが1cmになるまで10年~15年かかるが、それが2cmになるには1~2年しかかからない。
(高齢者の前立腺がんは進行が遅く、手術のリスクもあるため治療(検診)の必要は少ない。膵臓がんも進行がはやく早期発見は困難)

●がんは生まれた臓器から栄養を奪って大きくなるが、さらに新天地を求めて拡大する。これを食い止める関所が「リンパ腺(リンパ節)」(血液の乗って拡大するがんもある)。
抗癌剤や放射線で退治しきれなかった強いがんは進化して「スーパーがん」になる。

●治療から5年後に生きている確率が、「5年生存率」。
「肺がん」や「食道がん」など5年生存率があまり高くないがんは5年以降の再発はあまりみられない。
「乳がん」「前立腺がん」「大腸がん」など治りやすい(5年生存率が高い)がんでは、再発率が高く、10年生存率を治癒率と考える。

●転移していたら「完治」は難しく、「延命」が治療の中心になる。

●再発したら完治させることはさらに難しくなる。また、再発時期が、治療後すぐであれはあるほど治癒は難しい。治療と癒しのバランスを取る必要がある。

●日本は総医療費のGDPに占める割合は8 % 、OECD諸国30カ国中22番目で、アメリカの約半分。

●がん治療を行う病院の勤務医は、開業医にくらべ、勤務時間は数倍、収入は半分。




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