平 安寿子著『レッツゴーばーさん!』(2014年12月10日筑摩書房発行)を読んだ。
宣伝には、
準備はいい?女子必読!身につまされながらも思わず笑っちゃう連作短篇を10篇収録。
とあるが、小説というより、実際は、主人公を自分や仲間たちに代えたエッセイだ。
「ばーさんになっていくと、どんな変化(老化)が起こるか、どう対処するか」について、60代に入ったプレばーさんの文子が、先輩たちの様子を聞きながら、自分の身に引きつけて考え、悩む。
年を取ると、「あ、しまった」「なんだっけ」みたいなことは、もう、日常になる。・・・
それが、普通。年を取ったら、みんなそうなる。自分だけがダメになっていくのではない。
それがわかると、「ま、いか」「仕方ない」になる。それどころか、開き直る。
人の名前や買物メモなんか、忘れてもどうってことない。そんなどうでもいいことを、脳がもうもはや相手にしなくなったのだ。・・・それもまた、脳の整理能力だ、なんてね。
(確かに、日常会話でも、代名詞が増えました。「ほら、あれ、あれだよ」「ほら、名前が出てこないけど、あの人。お父さんが作家で・・・」など、こんな調子でも、相方も名前を思い出せなくとも、夫婦なら会話が成り立ちます)
六十過ぎると・・・そこらじゅうに抜け毛が散らばる。
その一本一本がいかにも、「力尽きて枯れ落ちた」風に細く、色も薄く、はかなげなのである。
本体より先に、わたしたち、あの世に参ります。さようなら、お元気でね・・・・・・。合掌。
(私の髪も、赤ん坊のように「ひよひよ」になり、髪が一足お先にと、赤ん坊がえりしています)
患者の家族であったとき、「様子を見る」と言い張って病院行きを嫌がった老親にイライラしたプレばーさんたちは、医者が精密検査を勧めれば即座に大病院へ走る。
(私も60代前半のとき、老親の頑固さには困ったことが多かった。年取ったら、自分の考えに固執せず、若い者の言う通りにして、迷惑かけないようにしたいと思ったものでした)
「わたし、お迎え近くなったら、ヤブでも若くて可愛い医者に診てもらいたい。毎日、手を握ってもらって、ぐーっと顔を接近させて、まだ息してるか確かめられたりして、ときめきながら死ぬって、いいじゃない」
(私の場合は、とくに若くなくても良いが、とびきりの美人の女性医師が、顔を近づけてきて・・・。いいかも!)
初出:「webちくま」2013年9月~2014年5月連載に書き下ろし1篇を加え、加筆訂正した。
平安寿子(たいら・あすこ)
1953年広島市生まれ。
アン・タイラーに触発されて小説を書き始める。
1999年に『素晴らしい一日』でオール讀物新人賞を受賞し、作家デビュー。
著書『くうねるところすむところ』『ぬるい男と浮いてる女』『おじさんとおばさん』『グッドラックららばい』『神様のすること』『恋愛嫌い』
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
確かに年寄りの基本的なところは抑えていて異論はない。しかし、そこいらじゅうで言い古されていることが要領良く並べてあり、ユーモアもあるのだが、それだけと言えば言える。
そもそも、平さんはまだ62歳。年寄りになると、どうのこうのと言うのは、10年早い。70歳を過ぎた私に言わせてもらえれば、62歳なんて、まだ元気の盛り。加齢の変化だの、老後の不安などと言うのは10年早い。