hiyamizu's blog

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高田郁『あきない世傳 金と銀 三 奔流篇』を読む

2017年06月18日 | 読書2

 

 高田郁(かおる)著『あきない世傳(せいでん) 金と銀 三 奔流篇』(時代小説文庫2017年2月18日角川春樹事務所発行)を読んだ。

 

 裏表紙にはこうある。

大坂天満の呉服商「五鈴屋(いすずや)」の女衆だった幸(さち)は、その聡明さを買われ、店主・四代目徳兵衛の後添いに迎えられるものの、夫を不慮の事故で失い、十七歳で寡婦となる。四代目の弟の惣次は「幸を娶ることを条件に、五代目を継ぐ」と宣言。果たして幸は如何なる決断を下し、どのように商いとかかわっていくのか。また、商い戦国時代とも評される困難な時代にあって、五鈴屋はどのような手立てで商いを広げていくのか。奔流に呑み込まれたかのような幸、そして五鈴屋の運命は?大好評シリーズ、待望の第三弾!

 

 「源流篇」「早瀬篇」に続く第三弾。 

 

 惣次が、幸が嫁になるなら「五鈴屋」の五代目になると宣言。 幸は、商い戦国時代の戦国武将になるために、惣次の嫁になると決心する。


 さっそく、惣次は強引に、師走に年1回だった売掛金の回収を5回にし、手代に販売ノルマを課した。さらに幸の提案を受けて、貸本の草紙本の空きスペースに広告を打ち、布の新しい仕入先開拓に乗り出す。

 惣次は、5年後にはなんといっても規模が違う江戸にも店を出したいと、野望に燃え、そのために幸にも知恵を出して欲しいという。幸も勉強しながら知恵を出して惣次に協力していく。

 しかし、やがて、惣次はあまりにも賢い幸に圧倒されて、幸には子供をつくることを考えて、商売は任せて欲しいという。亭主を立てながらも商いに燃える幸との間にすれ違い、亀裂が生じて、次作を待ち遠しくさせて、終わる。

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:是非読みたい)(最大は五つ星)

 

 「みをつくし料理帖」の高田郁がじっくり設定した舞台で、十分練り上げた人物を、手のうちで思いのままに動かして話を進めていく。

 

 幸が少女から美しい女性へ成長し、そして書を読むことしか知らなかった少女が、商の戦国武将になると決意し、男性社会の商売の場で知恵を武器に大きくなっていく成長物語だ。読者も、男性で年寄りの私でさえ、一緒になって、ハラハラと慈しみ、一緒に成長していっている気になってしまう。

 

 

五鈴屋(いすずや):伊勢出身の初代徳兵衛が「古手」(古着)を天秤棒で担いで商いを始め、大阪天満の裏店に暖簾を掲げて創業。伊勢の五十鈴川から恐れ多いと「十」をとって「五鈴屋」と名付けた。

二代目が富久と共に古手商から呉服商に。三代目は男児3人を遺し急逝。富久が番頭治兵衛の後見を得て、五鈴屋を切り盛りし、20歳の長男を四代目徳兵衛としたが、放蕩者で、あげく事故死。

 

幸(さち):摂津国武庫郡津門村の学者・重辰と母・房の娘に生まれ、妹は結で、秀才だった兄・雅由は亡くなった。父の死後、大阪の呉服屋「五鈴屋」に女衆として奉公。20歳で寡婦となったが、美人になった。

 

富久(ふく):「五鈴屋」の二代目徳兵衛の嫁。息子の三代目徳兵衛の没後は、三人の孫と店を守る。「お家(え)さん」と呼ばれる。

四代目徳兵衛:富久の初孫で、放蕩者。店主だったが、不慮の事故で死去。

惣次(そうじ):四代目徳兵衛の次弟。商才に富むが、店の者に厳しい。不細工な顔。

智蔵:四代目徳兵衛の末弟。2年前に家を出て一人暮らしし、売れない浮世草子を書いている。

 

治兵衛:「五鈴屋」の元番頭で、「五鈴屋の要石」と称された知恵者で、幸の商才を見抜いた。。脳梗塞で半身不随。妻はお染。息子は賢吉として五鈴屋の丁稚。

 

「五鈴屋」の女衆: お竹(年長)、お梅

「五鈴屋」の番頭:鉄助

「五鈴屋」の奉公人:手代(佐七・末七・広七)、丁稚(安吉・辰吉・賢吉)。

 

菊栄(きくえ):船場の紅屋の末娘。徳兵衛へ嫁いでご寮さんとなるが、寡婦となり実家へ戻る。

 

 

 

高田郁(たかだ・かおる)

1959年、兵庫県宝塚市生れ。中央大学法学部卒。
1993年、川富士立夏の名前で漫画原作者としてデビュー。高田郁は本名。
2006年、短編「志乃の桜」
2007年、短編「出世花」(『出世花 新版』、『出世花 蓮花の契り』)

2009年~2010年、『みをつくし料理帖』シリーズ『第1弾「八朔の雪」、第2弾「花散らしの雨」、第3弾「想い雲」

2010年『 第4弾「今朝の春」

2011年『 第5弾「小夜しぐれ」

『 第6弾「心星ひとつ」』

2012年『 第7弾「夏天の虹」』

みをつくし献立帖

2013年『 第8弾「残月」』

2014年『第9弾「美雪晴れ』『第10弾「天の梯」

2016年『あきない世傳 金と銀 源流篇』、『あきない世傳 金と銀 二 早瀬篇』、本書『あきない世傳 金と銀 三 奔流篇』

 

その他、『 ふるさと銀河線 軌道春秋』『銀二貫』『あい 永遠に在り

エッセイ、『晴れときどき涙雨

 


 

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