東野圭吾著『祈りの幕が下りる時』(2013年9月13日講談社発行)を読んだ。
宣伝文句は以下。
極限まで追いつめられた時、人は何を思うのか。夢見た舞台を実現させた女性演出家。彼女を訪ねた幼なじみが、数日後、遺体となって発見された。数々の人生が絡み合う謎に、捜査は混迷を極めるが――
第48回吉川英治文学賞受賞作品! 1000万人が感動した加賀シリーズ10作目にして、加賀恭一郎の最後の謎が解き明かされる。
ハウスクリーニングの会社で働く押谷直子の絞殺死体が東京都葛飾区小菅のアパートで発見される。住人・越川睦夫も行方不明だ。
警視庁捜査一課の松宮たちの捜査は難航する。やがて、押谷は、地元滋賀の老人ホームで浅居博美の母親らしき人を見つけ、それを知らせようと学生時代の同級生で演出家の博美に会うために東京に来たとわかる。しかし、越川睦夫との接点は分からなかった。
松宮刑事は、従兄の加賀刑事に会い、ヒントをもらって、近くのホームレスの焼死体が越川睦夫であることが分かる。越川のアパートにあったカレンダーに、加賀の属する日本橋署の管轄内にある12箇所の橋の名前が書かれていたのだが、行方を探していた加賀の母親の遺品にも全く同じ12箇所の橋の名前が書かれていた。
本書は書下ろし
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
加賀シリーズは『赤い指』一冊しかよんでいないが、それでも容易に物語に入り込める。人の相関が複雑で、おまけに偽名を使う人物がいるので混乱しそうになる。
他人に成り切るなど多少無理がある筋書なのだが、最後の謎解きを読めば納得できる。
円熟のミステリー作家、東野圭吾の代表作の一つか?
登場人物
宮本康代 仙台のスナック「セブン」と小料理屋を経営。田島百合子の遺体の第一発見者。東日本大震災後に2つの店を閉じる。
田島百合子 加賀の失踪した母親。スナック「セブン」で働いていた。体調を崩してスナックを長く休み、やがてアパートで変死。スナックの客の綿部俊一と恋人となる。
綿部俊一 「セブン」の客で田島百合子の恋人。「ワタベ」さんと呼ばれる。宮本康代から田島百合子の訃報を聞き、加賀の住所を教えて連絡を絶つ。
加賀恭一郎 日本橋署刑事課の刑事。
松宮脩平 捜査一課刑事。加賀の従弟。
富井 捜査一課の管理官
小林 捜査一課
石垣 捜査一課の係長
坂上 捜査一課で松宮の先輩。
大槻 捜査一課
茂木和重 加賀の警察学校の同期。警察庁広報課勤務。
加賀隆正 恭一郎の父親。警察官
加賀克子 独身の恭一郎と同居している母親
浅居博美 舞台演出家、脚本家、女優。芸名は「角倉博美」。両親の離婚後、父が自殺したため養護施設で育ち、高校卒業後劇団「バラライカ」に入団し、「バラライカ」代表の諏訪建夫と3年間結婚したが離婚。芝居のため子役達に剣道の指導を頼み、少年剣道教室で講師の加賀と知り合う。
押谷道子 浅居博美の中学の同級生。清掃会社「メロディエア」で働いていたが、上京時に越川睦夫のアパートで殺された。
浅居忠雄 浅居博美の父親。洋品店を経営していたが、妻の厚子が借金をつくって失踪し、ヤクザに追われた末に自殺。
浅居厚子 浅居博美の母親。現在老人ホームに居座る。
苗村誠三 浅居博美や押谷道子の中学時代の担任教師。やがて教師を辞め離婚し、所在不明。
今村加代子 苗村誠三の元義妹
金森登紀子 加賀の父・隆正を看取った担当看護師。出版社のカメラマン佑輔は弟。
岡本恵美子 旧姓梶原。元、劇団「バラライカ」の女優で、芸名「月村ルミ」