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国上海株式市場が先月30日にまたしても6.5%下落した。過熱した株式市場を抑制する為、中国財務省が29日夜株式売買時にかかる印紙税を30日から0.1%から0.3%に引き上げるとの発表に反応したからだ。しかし、世界市場は動揺しなかった。
2月27日には上海市場が9%暴落したのを発端に、世界中の市場に波紋が広がり世界同時株安となったが、今回はさざ波程度しか反応せずニュースにもならなかった。同時株安後の調整(コレクション)が進み、中国株の暴落は中国の特殊事情と見られ織り込み済みになったのだろうか。
中国経済は好調で世界銀行は今年度の成長率を9.6%から10.3%に引き上げたばかりだ。しかし株価収益率(PER)は既に50を越え明らかに割高だ。にもかかわらず人民元安は過剰流動性、つまり金余りを起こしそれが株式市場に向かってバブルになった。
先立って先月23日グリースパン前連銀議長は中国の株式高騰は持続不可能であり劇的に縮小する恐れがあるが、そのインパクトは中国の投資家に留まり世界市場はやり過ごせると述べたと報じられていた。
もう一つの目安は前回世界同時株安時、円キャリートレードの巻き戻しが起こり円高に振れたが、今回は為替相場が殆ど動かなかった。世界市場の連携は緊密になったが同時に中国市場の乱高下(wild swing)に対する対処法を習得したとCNN Moneyのワン氏は書いている。
私は先月21日「迫り来る中国株暴落リスク」で中国株暴落の危機が迫っていることを書いたが、世界市場は同時株安後改めて足元を見直し、中国株式が暴落する可能性を織り込んでその影響は中国国内に留まるとの予測が今回直ちに現実に起こったことで内心ほっとした。
エコノミスト誌(2007/05/30)は国内経済への暴落の影響もそれほど大きくないと見ている。中国の株式市場はまだ小さく売買可能な株式の時価総額はGDPの25%であり、米国の150%、インドの100%に比べ僅かだという。
株式を保有する中国国民は全体の7%、家計の金融資産に占める株式の割合は15%(米国は株に投資された年金基金を含め約半分)に過ぎない。中国政府の狙いは実体経済の引き締めではなく、預金から株式への資金移動を防ぎ明らかにバブル化した株式市場を冷却することであり、この1年間人々が預金を減らしている兆候も見られないという。
つまり規模を考えると株式相場の下落が中国経済に与える影響は思ったより軽微であるというのがエコノミスト誌の見立てである。私はそれほど楽観的にはなれないが、少なくとも中国の株式市場の暴落はあるものとして市場の嫌がるサプライズではなくなったといえる。■