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私的・ワシントン・ポスト買収

2013-08-18 21:58:04 | ニュース

ワシントン・ポスト紙(WP)が、アマゾン・ドット・コム創業者ジェフ・ベゾス氏に買収されると先日報じられた。このニュースを聞いて私は感傷的になった。米国を代表する歴史ある新聞社WPが、世界最大とはいえ今世紀に登場したばかりの通販会社に買収されるのか、という気持ちだ。

WPがどういう新聞社か知ったのは、私がまだ技術者だった頃のことだ。仕事と仕事の合間に専門技術動向を調べる為に会社の図書館に行った時、「メディアの権力(ハルバーシュタム)」をたまたま見つけて興味を持ったことだ。報道によってニクソン大統領が権力の座を追われていく様を描いた大作で直接関係がないのに仕事を忘れ読みきった。その頃大企業は余裕があった。

その後、ベストセラーになったWP記者ウッドワードとバーンシュタイン共著の「大統領の陰謀」、「最後の日々」を読んだ。そこから広げてニクソン夫人の伝記とか側近の回顧録や小説等々次々と読んだ。出張でボストンに行った時はハーバードスクエアの古本屋の店員に関連本がないか聞いて、“ニクソン・マニア”と言われたことがある。

こうして色んな角度から描かれたニクソンを見て、妙なことに天邪鬼の私はニクソンの人間臭さが気になりニクソン関連の書籍を読み漁るようになった。多くの本に出てくるのがWPと名物記者で後に編集長になったウッドワードだ。近年も秘密にされたニクソン政権高官のディープスロートが自ら暴露した時も彼が独占的にインタビューし本にしてベスト・セラーになった。

WPのグラハム社主のベストセラー自伝「Personal History(K・Graham 1997 Vintage Books))」は、子供時代から始め新聞社の生い立ちを経てウォーターゲート事件報道における政府と編集部門の間で経営者としての微妙な立場が良く描かれた大作で後年になって読んだ。ここまで読んでWPは私にとって身近で、報道のあり方やアメリカ人の発想をんだと思う。

それが、こともあろうに一介の通販会社の創立者に個人マネーで買われた。買収額はたったの2.5億ドル(245億円)だった。かつて大統領を辞任に追い込みワシントン政治に大きな影響力を持ち続けて来た新聞社がたったこれだけの価値しかないのか、私にはショックだった。

だが、日本のメディアはこのニュースを無視するか目立たない扱いで、記事はベゾス氏の買収の狙いとその見通しについて分析したものだった。私のようなウォーターゲート事件を思い出して感傷的になどなっておられないようだ。詳しく調べてわけでは無いが、目に付いた限りでは驚いたことに米国でも反応はビジネスライクでドライだった。これもまた年寄りの繰言か。■

コメント
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