かぶれの世界(新)

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パソコン文化の終焉

2013-08-27 21:27:57 | ニュース

先週金曜日にマイクロソフト(MS)のスティーブ・バルマーCEOが来年にも退任すると報じられた。彼がビル・ゲーツを継いだのが2000年だったから、異例ともいえる13年の長期政権だった。その後彼の指揮下でMSは世界最大の株価に駆け登ったが、スティーブ・ジョブズのアップルの台頭であっという間に動きの遅い旧式の会社になってしまった。いまやこの私でさえタブレット無では1日が過ごせなくなったのに、対抗するMSの商品が何か知らない。やってるの?

バルマー降板のニュースが伝わるや否やMSの株価が急騰したというから、つくづく市場の論理は冷酷だと思わずにはいられなかった。CNNは彼の功績としてWindows-XPWindows-7の成功と圧倒的シェア獲得、Xboxでゲーム市場に参入成功、Bing検索エンジンの立ち上げをあげ、IE6のセキュリティ問題、Zune(iPod対抗)・Vistaとタブレットの失敗をあげている。

私は日米でMSと取引のある部門で働き、個人的にもMS本社のあるワシントン州レドモンド市の施術所に毎週通いマッサージを受けた経験がある。バルマー氏の退任のニュースを聞いてチョット感傷的になる。彼はまだ私より若い。グローバル規模の米先端企業のトップの多くが私より若くして退任し、ふた周り若い30-40代のトップに引き継ぐニュースを良く見かける。凄い国だ。

バルマー氏の退任の後任はまだ決まってない。今日のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に候補者を紹介する記事があったが知らない名前だけだった、しかもMS生え抜きの有力候補は少ない。果たして今日の苦境を打開して新しいMSを作れるか、道は険しいと思った。

その理由は商品もさることながら利益を生み出す新しいビジネス・モデルが今のMSには思い浮かばないからだ。今日の全てはウィンテル(Wintel=WindowsつまりMSとIntel連合)と呼ばれる世界最強のビジネス・モデルの基礎の上に打ち立てられた。それがどのくらい凄いかというと、バルマー氏が退任するというのにMSは昨年史上最高益を叩き出したのである。ウィンテルはまだ十分益をだしている。

だが、市場は現在のビジネス・モデルには将来がないと決め付け、最高益を出しても株価は駄々下がりでバルマー氏に退任要求を突きつけた。市場は恐ろしい。ウィンテルが最強であるがゆえに、それを上回る成果を出し更に成長が求められアイデアがないと非難された。上回る為には急成長しているスマホやタブレット市場で売れる商品を作るか、新しい分野の売れる商品を作り出すしかない。だがSジョブズみたいな天才はそうはいない。

元々BゲーツがMSをはじめた時、他人の商品に大きなビジネス機会を感じ取って買い取り、儲かるビジネス・モデルを作り大きく育て発展させた。天才的なのは(商品+ビジネス・モデル)の組み合わせを作ったことだ。「商品が良ければ売れる」日本式の発想ではない。ウィンテルとはMSとIntelがOSとCPUを作るから世界中誰でも箱に入れて安く売りなさい、というパソコンのビジネス・モデルだ。それが高価なコンピューターを劇的に安くしてオフィスや家庭に持ち込んだ「パソコン文化」だった。

その後優秀な技術者がうんかの如く集まりMSを巨大企業に育て上げたが、新しくタネとなる火元を作り出す天才がいたかというと別の話だ。仮に天才がいたとしても一旦巨大になったMS内の(神)ビジネス・モデルを前にしてやれるかというと、絶望的に難しいと思う。私に言わせればXboxやBingはその他の派生品だ。

想像するに、MSにSジョブズがいたとしても機能しないし、直ぐに飛び出したろう。言い換えるとMSは世界最強といわれたビジネス・モデルで稼がせてもらい、今そのコストを払っている。今、スマホやタブレットを作っている箱屋さんは、パソコンを徹底的に安く作って技術を磨いた人達かその血を引き継いでいる。MSはパソコン文化の延長線上で戦ってきたが、バルマー氏の退任はついにこのパソコン文化の終焉を宣言したと私は感じる。■

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