日中韓の関係悪化のきっかけになるかもと恐れた終戦記念は、安倍首相が靖国参拝をせず中韓政府も抑制された姿勢を保ち事態の悪化は避けられそうだ。先に実施された日中両国の調査で相手国に良くない印象を持つ人が両国ともに9割を超えた、調査を始めて以来最悪の結果だと先週初めに報じられた。日韓両国民も互いに悪印象を持っているという。
私が10年余り前に仕事で付き合った韓国の人達は誰一人として悪い印象を受けなかった。8‐9割というとほぼ全員が悪印象を持っているという事だ。これだけの数字が出るには決定的な出来事が起こったということだろうか。そうは思わない。無人島の帰属を巡って政府間に深刻な対立が起こった、それが増幅されて国民間に決定的な悪感情を植えつけた以外は思いつかない。
私にはこれほどの酷い悪感情を植え付けたのは、そうなる仕組があったと思う。この三つの国の外交関係が螺旋階段式に悪化していく悪循環にはまったと思う。何時の時代にも領土問題については政治的に絶対に後に引けない、なあなあでは済ませられないテーマだ。妥協はしばしば政治的敗北を意味し退場を求められる。そういう例は山ほどある。
東アジアに限らず地球上どこにでもある。外交に長けているといわれる英国でも、最近の例では例えば片付いた積りでもフォークランドはまだ火薬庫だ。今でもそういう兆候が無い訳ではないが、将来アルゼンチンが経済成長し英国とのバランスが変われば必ず頭をもたげる。両国とも譲る気はない。今日の新聞ではジブラルタルを巡り英国とスペインの対立が報じられた。これが感情的な対立に発展するかどうかは両国政府・マスコミ・国民の成熟度の関数だ。
ややこしい領土問題が日中韓で近年急速に増幅され燃え上がった原因、特に今日的な原因は、マスコミとITの役割が大きいと感じる。従来なら跳ね上がり者の過激な行為がITによって連携され影響力を強め政府への圧力となった。比率的にはホンの一握りの運動だが、マスコミ(TV)がニュースとして流すのはこの過激な反日運動だけだ。それが全てのように報じられる。
この手のニュースを繰り返し見せ付けられ、一方で日本政府や評論家の“表面的なコメント”を見聞きすると、何という理不尽なことをする連中だと思うようになる。原因は別だが中韓にも恣意的に選らばれたニュースが流れ同じことが起こったはずだ。中国メディアは言論統制を受けているし、先日の入国禁止のように韓国では民主主義国とはいえ都合の悪い主義主張は抑圧されている。我々は日本の立場に立って主張する韓国人やメディアを知らない、或いは知らされてない。
このように言論の自由の有無に関らず一方的な情報が国民に到達する仕組があるように私は思う。これが短期間にほぼ全国民に悪い印象が植え付けられた理由だと思う。三カ国の政治家だけでなく国民やメディアの間でもっと色いろんな意見が飛び交い、議論を深め摩擦を和らげるなんていうのは夢物語だろうか。少なくともメディアの報じ方には改善の余地が大きいと私は信じる。
最後に話を外交に戻すと中韓両国が強い疑いを持っているのは、選挙前の安倍首相の靖国参拝・歴史解釈発言が刺激したのは間違いない。今回靖国参拝をしなかったからといって一気に関係改善は期待できない。といって不必要な譲歩は避けるべきだ。私は急ぐ必要はない、じっくり構えて経済を強くし時期を待つべきだと思う。飴玉をやって恩を売る必要はない。だが今以上に刺激する必要もない。■