先月からウクライナ騒乱と西オーストラリア沖に墜落した航空機探索に世界中の目が注がれていた時、私は米国ワシントン州スノーホーミッシュ郡で起こった大規模な地滑りの行方が気になっていた。この地域はシアトルの北側に位置するなだらかな山が作る美しい自然があり、「ノースカスケード国立公園」がある。因みにワシントン州は3つの国立公園がある唯一の州だった。96年に家族全員と母が米国に来た時車で「ノースカスケード・ループ」と呼ばれる2泊3日の周遊旅行をした特別な思い出の地だった。
地滑りがあったのはダーリントン-アーリントン道路(州道530号線)にあるオソという人口300人程度の寒村で、旅行した当時の地図やパンフレットを取り出してみると確かに通った記憶がある。カスケードループはシアトルからカナダに向かい国道i5を北上し、エヴァレットから州道2号線を東に走り美しい街レーベンワースを通り抜け、ワナッチーというコロンビア川沿いの小さな町に出る。川沿いに北上するとリゾート地帯のシェラン湖に、更に反転し20号線を北から西に向かうと西部開拓時代の町ウィンスロップに着く。
この辺から続く雄大なノースカスケードの景色は素晴らしかった。特にその先にあるロス湖の美しさは今でも忘れられない。暫く西に走り途中ロックポートで530号線に乗換え南下しダーリントンから西に向かうところで今回の地滑りがあった。写真で見るとオソ村は泥に覆われていた。当初行方不明150人と言われていたが、今は死亡36人行方不明7人という。毎日流れていたCNNニュースも今月頃から日本では見られなくなり、米国の国内ニュースの枠に収まっているようだ。
自宅が1/4マイルも押し流された直後にインタビューを受ける老婦人の声には恐怖が感じられた。森の中を走る530号線がなぎ倒された木と土砂に埋もれ、その手前に立つ二人のポリスの姿の写真は懐かしい思い出が壊されたようで衝撃的だった。大変申し訳ないけれど、こういう災害で犠牲者が出ない限りノースカスケードの美しい自然も思い出すことこともなかった。調べるとパソコンに旅行した時のスナップ写真が残っていた。当時私と同じ年恰好の母は随分若く見えた。■