6月末に本テーマでアップした記事では、マクロで見ると日本はそれほど原油価格高騰のインパクトを受けないという印象を与えたかもしれない。その内容は「原油価格がバレル140ドルのまま推移すると1年間で200兆円の所得移転が起こり、そのうち日本から1割強の24兆円が産油国に向かう」と言うものだった。
この記事は全体像を描いていなかった。今起こっていることは石油だけでなく鉱産物から農産物まで全ての資源価格高騰による富の移転が起こっているという絵を描くべきだった。具体的には16日に英HBSC銀行が発表した原油高に伴う経済損失試算が分かり易い。(日経BP7/16)
それによると、資源価格で最も多額の経済損失を被るのは米国、日本と中国がこれに続くと言う。原材料や食料の輸入比率の大きい国ほど負担が大きい、今後日本は厳しい状況に置かれるだろうと予測している。
原油高の影響は今月10日財務省が発表した「5月の国際収支が前年同月比5.9%減の2.6兆円となり、3ヶ月連続で前年比割れ」という形で現れた。その内訳はやや混み入っている。近年経常黒字は大きく伸びていた。貿易黒字の伸びが頭打ちになる中で、海外に投資した収益が急速に伸び、全体として経常黒字が大きく伸びていたからだ。
実際、我国の経常黒字は02年の13兆円が、07年には25兆円弱にまで急伸した。今回の経常収支3ヶ月連続前年割れは放置できない大きな潮の目となるかもしれない。資源価格高騰が主犯、稼ぎ頭の海外試算収益率の低下が陰に隠れた共犯として、注目していくべきだろう。■
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