一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

2021年度のフリークラス転出、引退者

2022-04-04 20:31:29 | 男性棋士
2021年度のフリークラス転出は、塚田泰明九段が名乗りを挙げた。
塚田九段は1981年3月、16歳で四段デビュー。いわゆる「花の55年組」のひとりだ。奨励会生活はわずか2年5ヶ月で、記録的な速さだった。
そんな塚田四段はデビュー当時から勝ちまくり、一躍時の人となった。学園生活での一部が将棋専門誌に載ったが、クラスメートに囲まれた塚田四段はキラキラと輝いていて、そのころ「男子クラス」で地底深くに沈んでいた私は、塚田四段が眩しく見えたものだ。
1986年には、「塚田スペシャル」を引っ提げ、22連勝の最高記録(当時)を樹立。
1987年は、中原誠王座から王座を奪取し、初タイトル。
1988年、A級八段に昇級昇段。
まさに順風満帆で、塚田九段の人生は薔薇色だった。
そんな塚田九段も徐々に勝てなくなり、順位戦も徐々にクラスを落としていった。
2018年度、第78期C級1組順位戦で2個目の降級点を取り、C級2組に降級。
そして2019年度、2020年度でもC級2組で降級点を続けて取り、このたびのフリークラス宣言となったものである。
今期も順位戦に参加したら降級しない自信はなく、もし降級したら2025年3月での現役引退となる公算が高い。それゆえ転出して、現役生活を5年間延ばしたということだ。
しかし……あの塚田九段がフリークラス宣言・順位戦卒業とは……。10代・20代の輝きは何だったのだろうと、時の移ろいの儚さを思うのである。

そして、小林宏七段が現役引退を表明した。桐山清澄九段、田中寅彦九段の強制引退ではなく、自発的なものだ。
小林七段は1984年8月、四段昇段。数年はパッとしなかったが、1991年の第4期竜王戦では4組で優勝し、本戦トーナメントでも勝ち進み、挑戦者決定三番勝負に進出した。結果は森下卓八段に0-2で敗れたが、その健闘は大いに称えられた。
このとき収入が増えたので、小林五段が「さあ、きょうは私がおごりますよ!」と快活にみなを誘ったくだりが、将棋マガジン「対局日誌」で紹介されている。
しかし小林七段の棋歴はここが棋士人生のピークだったようで、以降は緩やかな下降線をたどった。
2011年、小林七段は第69期順位戦C級2組で2個目の降級点を取り、フリークラスに転出した。だが、第66期に2個目の降級点を取ったときは、第68期に6勝4敗とし、1個を返上していた。なんで今回もそれを狙わなかったのだろう。
小林七段は2010年度、14連敗で年度を終えていた。連敗地獄を経験して、緊張の糸が切れてしまったのかもしれない。
それにしても、59歳での引退は早すぎる。小林七段のこと、自分の将棋が指せなくなり、現役人生に潔く見切りをつけたのだろう。好漢・小林七段に幸あれ。
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羽生九段、年度初の負け越し

2022-04-03 13:48:46 | 男性棋士
羽生善治九段は2021年度最終日に高野智史六段(王座戦)に敗れ、14勝24敗(.368)でシーズンを終えた。年度負け越しはもちろん初。勝率も4割を大きく割り込んでしまった。通算1500勝も達成できなかった。
そんな羽生九段は、今年度も順位戦参加を明言した。私は当然のことと受け止めていたので、問題はない。順位戦の参加こそ棋士の本分である。降級したら、また昇級すればいのである。
では2021年度の成績をもう少し詳しく見てみよう。

第34期竜王戦1組4位決定戦 ○○
第34期竜王戦決勝トーナメント ●
第35期竜王戦1組  ○●
第80期A級順位戦 ○●●●●○●●●
第62期王位戦挑戦者決定リーグ ●○
第62期王位戦挑戦者決定戦 ●
第63期王位戦挑戦者決定リーグ ●●
第70期王座戦二次予選 ○●
第47期棋王戦挑戦者決定トーナメント ●
第6期叡王戦九段戦 ●
第7期叡王戦九段戦 ●
第71期王将戦挑戦者決定リーグ ●○○○●○
第93期棋聖戦二次予選 ●
第15回朝日杯オープン戦二次予選 ●
第71回NHK杯 ○○○●
第29期銀河戦本戦 ●
第42回JT杯日本シリーズ ●

以上、14勝24敗。ちょっと信じられない成績である。
「出ると負け」が6回。最終的に負けるにしても、これでは勝ち星が増えない。
以前、NHK杯アーカイブスで羽生五段の対局姿を拝見したが、全体的にギラギラしていて、切れたナイフのようだった。それが51歳の今は、盤を見る視線にも力がなく、迫力が感じられなかった。
このまま今年度もズルズルいってしまうのかという危惧もあるが、2021年度最後の将棋は、年度初の振り飛車(三間飛車)だった。
これが今後の指し方を示唆している気もする。暴論だが、現在相居飛車の定跡は体系化され、変化を知らないものがバカを見る、という世界になっている(重ねて、暴論です)。今年度の羽生九段の不調の一因も、ここにあるのではないだろうか。
ならば羽生九段は相居飛車の世界から距離を置き、振り飛車党に転身する手もあるのではないか。
毎日新聞の朝刊はA級順位戦オンリーだが、夕刊でそれ以外の順位戦を載せている。朝日新聞は朝刊でも、A級以外の注目局を載せることがある。藤井聡太竜王のA級順位戦の戦いも興味津々だが、羽生九段のB級1組の戦いも、大いに興味深い。両紙は今年度、何回羽生九段の将棋を載せるだろうか。
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川上七段の成績はどうなっているのか

2022-03-28 23:22:36 | 男性棋士
「入館証明書」を、今度こそ本当に紛失してしまった……。
筋金入りのバカだ、私は。

   ◇

当ブログで注目している川上猛七段は今年度、フリークラス9年目だった。では成績はどうだったのか。
結果を書くと、5勝10敗だった。勝敗を羅列すると、「●●●○●●●●●○○●○●○」である。
なかなかの惨敗ぶりだが、フリークラスを脱出するには、まとめて白星を得るのがよい。となれば前半の1勝8敗は無視してよい。後半の4勝2敗が重要なのである。
しかもこの内訳を記すと、

12月8日 第35期竜王戦ランキング戦5組1回戦 ○ 先崎学九段
1月12日 第48期棋王戦予選1回戦 ○ 塚田泰明九段
1月28日 第72期王将戦一次予選1回戦 ● 田中悠一五段
2月4日 第35期竜王戦ランキング戦5組2回戦 ○日浦市郎八段
2月9日 第48期棋王戦予選2回戦 ● 飯塚祐紀七段
3月24日 第35期竜王戦ランキング戦5組3回戦 ○ 森下卓九段

で、4勝中3勝が竜王戦である。
フリークラスで10年を経過した場合、6組は即引退、5組は2期猶予だが、4組在籍の場合は降級しない限り、竜王戦参加が持続できる。
となれば、川上七段は次局に勝てば4組昇級となり、竜王戦は当分安泰となる。準決勝の相手は南芳一九段だが、大昔ならともかく、現在の南九段なら勝てない相手ではない。
そしてフリークラス脱出に目を転じると、例によって「いい所取り20勝10敗」「年度18勝12敗」などがあるが、「いい所取り」だと、「あと16勝8敗」が必要となる。
これもなかなかに厳しいのだが、ここで隠れ勝敗がある。来期のNHK杯予選である。
ないとは思うが、もし3連勝で予選を抜けていれば、「あと13勝8敗」と、だいぶハードルが低くなる。
いずれにしても、川上七段は来年度がフリークラス10年目。もう、あと1年で結果を出さねばならない。
奨励会三段リーグを1期で抜けた川上七段は天才の部類に入ると思う。フリークラスで指す格ではないのである。熊坂学五段や中尾敏之六段がフリークラス10年目で大爆発したように、人間、追い込まれれば驚異の力を発揮するものである。
是非とも奇跡を起こしてほしい。
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藤倉五段、引退

2022-03-25 00:16:21 | 男性棋士
今期竜王戦は桐山清澄九段の引退が話題となったが、藤倉勇樹五段もほぼ同じ状況だった。
藤倉五段は2009年度の第68期順位戦でC級2組から降級し、フリークラス入りとなった。棋士になってからの順位戦参加期間はわずか7年だった。
この間の成績は、

第62期 41位 3勝7敗▲
第63期 39位 5勝5敗
第64期 28位 5勝5敗
第65期 23位 5勝5敗
第66期 16位 5勝5敗
第67期 24位 2勝8敗▲▲
第68期 38位 1勝9敗▲▲▲

である。最高でも5勝で、勝ち越しなし。これでは降級もやむを得なかったか。
しかし竜王戦は第19期に5組に昇級してから、このクラスを死守した。竜王戦は昇降級が激しいから、16期5組を堅持したのは、隠れた偉業である。
藤倉五段はフリークラスの10年間で規定の成績を取れなかったが、竜王戦はかようなわけで、若干の猶予期間が与えられた。しかしそれも、今期竜王戦で4組に昇級しなければ引退確定となる。
しかしランキング戦は1回戦で負け、残るは昇級者決定戦で昇級するしか生き延びる道はなくなった。
そして17日の長谷部浩平四段戦を迎えたというわけである。
将棋は先番・藤倉五段の三間飛車で始まった。期待に違わぬ激戦が展開され、私には、一流棋士と藤倉五段の将棋の質の違いが分からなかった。藤倉五段もプロで、やはり強かったのだ。

だが将棋は藤倉五段が敗れ、次の残留決定戦をもって、引退することが決まった。
ここまでの通算成績は「168勝234敗、0.4179」。どうも、通算成績が4割台前半だと、順位戦からはじき出されるイメージがある。
棋士としてはパッとしなかったが、これまで多くの奨励会員が夢破れて退会したことを思えば、夢を叶えた人生として、成功の部類に入るのではなかろうか。
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深浦九段のおかしな成績

2022-03-05 22:04:07 | 男性棋士
1日に第80期B級2組順位戦の最終戦が行われた。
結果は澤田真吾七段、中村太地七段、丸山忠久九段が勝って、実力者の昇級となった。
その一方で、深浦康市九段は3勝7敗と、さびしい成績だった。最終戦は降級点の決まっている藤井猛九段とで、勝って辛くも降級点を免れた。
しかし深浦九段、この前までA級にいたと思うのだが、なんでこんなところにいるのか。
では、深浦九段の成績を確認しておこう。2017年度からで、順位戦の成績と、年度成績を記す。

第76期 A級 5勝5敗 21勝16敗
第77期 A級 2勝7敗 18勝21敗
第78期 B級1組 7勝5敗 22勝17敗
第79期 B級1組 3勝9敗 12勝19敗
第80期 B級2組 3勝7敗 18勝18敗

第77期に2勝7敗でA級から降級。これは時の運だから仕方ないとして、第79期はB級1組で3勝9敗、参加13名中最下位で降級した。実力者・深浦九段がこんな成績を取るとは信じられない。
だがこの5年間、年度成績から順位戦の成績を引くとほぼ5割以上で、要するに順位戦だけ成績が悪かったことになる。他棋戦はそこそこ勝っているのだ。
たとえば今年度、深浦九段は藤井聡太竜王に、2回勝っていなかったか?
1局目は昨年5月6日の第69期王座戦挑戦者決定トーナメント。相居飛車の将棋で、105手まで深浦九段が勝った。
実はこの勝利は大きく、「たられば」の話をすれば、仮にこの将棋に藤井二冠が勝っていたら、2回戦以降は飯島栄治八段、佐藤康光九段、木村一基九段と当たった。そのいずれにも勝った可能性が高く、となれば永瀬拓矢王座にも勝って、いまごろは六冠になっていたかもしれないのだ。
そして2局目は私たちも目にした第71回NHK杯戦で、10月31日に放送された。相雁木の将棋から、深浦九段がガンガン攻め、95手まで快勝。対局後は藤井三冠が悔しさで顔を突っ伏すという異様な光景が映された。
藤井竜王からの勝利は10勝分に換算されるので(ウソ)、深浦九段はある意味、最強棋士に認識された。それがどうしてB級2組で降級点スレスレ? 訳が分からないのである。
まあよい、藤井竜王にさえ勝てば、ほかの棋士に全敗したとしても、はるかに魅力がある。
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