ここは「爆笑似顔絵商店・カリカチュア」といい、お客の似顔をマンガチックに描くお店だった。店内には芸能人をモデルにしたそれらが貼られており、いずれも大きくデフォルメされていて、笑いを誘われる。
似顔絵といえば、我がバトルロイヤル風間氏が思い浮かぶ。将棋ペンクラブ関東交流会の席で、氏が会員を描いた似顔絵は名人芸である。氏の作品を見ると、氏を上回る描き手は日本にいないとさえ思うが、こちらの描き手(男女2人)も、なかなかのようだ。
この店ではお客の顔をどの程度マンガチックにするか、レベルが分かれていた。白黒とカラー、バックに京都の街並みを入れるかどうかなど選択肢があり、カラーでバックに街並みを入れた場合は、2,310円だった。
このまま店を出てもいいのだが、モノは試しである。ひとつ描いてもらうことにした。カラー・街並み入りのやつだ。
担当は男性氏。洒落たメガネをかけた温厚な人で、何となくうまい似顔絵を描いてくれそうな気がした。
所用時間は10分とのこと。男性氏は笑みを絶やさず私に語りかける。しかし手は優雅に動き、その目は真剣だ。
男性氏はなかなか話術がうまい。聞くと、似顔絵スタッフになるには修業期間や試験があり、試験の際は社長以下が見届けるという。似顔絵のうまさはもちろんだが、描いている間、お客を飽きさせない話術も評価の対象になるという。当たり前だが、どの仕事も厳しいのだ。
似顔絵はだいぶ進んでいるようだ。店の外では観光客が進捗状況をチラチラ見ている。10分は過ぎているが、まだ制作は続いている。ほかに客はいないし、私も急いでないから、それでいい。
ようやく仕上がり、見せてもらったが、これがそっくりだった。顎はでっぷりしており、頭髪も豊かとはいえない。それが巧妙にマンガチックに描かれている。目立たないが、左の頬と鼻の頭にあるホクロもしっかり描かれていた。だが不愉快になるほどデフォルメされてはいなかった。
ただ何というか、表面より、内面を見透かされた感じだ。まさにプロの仕事で、これで2,310円は安いと思った。
店を出て、そのまま高台寺方面に下る。舞妓さんがふつうに歩いているのが、いかにも京都らしい。
高台寺も風情のある建物のようだが、拝観料を取られるので、パス。折り返し、先ほどの男性氏オススメの食事処に入った。
店の名前を「釜座(カマンザ)」といった。ここは蓬そばが名物だそうで、私は蓬麩そばと天ぷらのセットを頼む。1,600円はけっこうな額だが、清水の舞台から飛び降りるつもりだった。もっともその清水の舞台は、すぐ近くにあるのだが。
スマホを繰ると、植山悦行七段は敗れていた。やはり。W氏あたりは結果を知っていたはずだが、私たちを慮って、秘匿にしたのだろう。
2013年6月28日、植山悦行七段引退。
私は「予定稿」を、ブログにアップした。
食事は美味かった。店を出て辺りを散歩すると、またも舞妓さんがいる。記念に写真に撮らせてほしいが、その一言がいえない。もっともここでスンナリ声が掛けられるくらいだったら、女子校の文化祭で女子に声を掛けていたし、某所で山口恵梨子女流初段にも声を掛けていたのだ。
私は景色を撮るフリをして、その枠の中に舞妓さんを入れる。我ながらやっていることがセコい。
似顔絵商店に戻り、あまり気は進まなかったが、額縁も買った。紙を丸めただけでは、リュックの中で皺が付いてしまうからだ。額縁代が1,575円かかって、〆て3,885円。それでも大いに満足した。
二寧坂、産寧坂と進み、清水坂を登る。先ほどにも増して、物凄い人出だ。京都のほかの観光地は知らぬが、この混雑度は市内トップクラスではあるまいか。
清水寺の拝観料は300円。ここは500円でも入った。朱塗りの仁王門をくぐる。右手には三重の塔がそびえている。ここは何度か訪れているが、ようやく「景色を味わう」境地になった。
園内には浴衣姿の女性が目立つ。みんな近場の人だろうか。しかし東京からの旅行客が宿で着替え、浴衣姿で観光したとしたら、それも粋だと思う。
そのまま道なりに進み、清水寺本堂の舞台に登った。いままで何度も出てきた、これが本当の清水の舞台だ。下を見ると足がすくむが、それよりも京の街の景色が素晴らしい。
後方では朱印所があったので、いただく。その際、ベテラン風?巫女さんに、あの似顔絵を見せる。「似てますねえ」と笑われた。
そのまま左手に回り、清水寺本堂の全景を見る。ここが日本屈指の有名ビュースポットだ。「そのままお進みください」の札があったので、素早く撮影して、先に進んだ。
坂を下ると、水が落ちている箇所がある。この水を飲むと御利益があるらしいが、行列が凄いので、パスする。
お休み処でかき氷でも食べたいが、400円はちょっと、許容範囲を越えている。ここもパスだ。
寺を出て近場をうろうろすると、「五龍閣」なる洒落た建物の喫茶店があった。よほど入ろうかと思ったが、よく考えたらそんな時間はない。まだ八坂神社と清水寺しか観ていないのに、時刻は午後2時にならんとしている。
そのまま坂を下りると、バス停に出た。実は京都には、市内専用の1日バスカードがあるのを知っていた。500円で、これはかなり重宝な代物だ。
ただし購入場所が限られていそうだ。京都駅前に行けば売っているのは確実だが、そこへ行くのにバス代がかかってしまう。
と、銀閣寺行きのバスが来た。何も考えずに乗ってしまえばいいのだが、初乗り料金220円はけっこうな額である。躊躇しているうち、バスは行ってしまった。
傍らの自販機にペットボトルのサイダーが100円で売られていたので、買う。
一息ついて停留所のポールを見ると、1日バスカードは車内でも買える、とあった。
そこへ再び銀閣寺行きのバスが来たが、これも迷ったすえ、やり過ごす。
本当に車内でバスカードが買えるのだろうか。時刻は2時20分を過ぎた。どうしようか…。
(15日につづく)
似顔絵といえば、我がバトルロイヤル風間氏が思い浮かぶ。将棋ペンクラブ関東交流会の席で、氏が会員を描いた似顔絵は名人芸である。氏の作品を見ると、氏を上回る描き手は日本にいないとさえ思うが、こちらの描き手(男女2人)も、なかなかのようだ。
この店ではお客の顔をどの程度マンガチックにするか、レベルが分かれていた。白黒とカラー、バックに京都の街並みを入れるかどうかなど選択肢があり、カラーでバックに街並みを入れた場合は、2,310円だった。
このまま店を出てもいいのだが、モノは試しである。ひとつ描いてもらうことにした。カラー・街並み入りのやつだ。
担当は男性氏。洒落たメガネをかけた温厚な人で、何となくうまい似顔絵を描いてくれそうな気がした。
所用時間は10分とのこと。男性氏は笑みを絶やさず私に語りかける。しかし手は優雅に動き、その目は真剣だ。
男性氏はなかなか話術がうまい。聞くと、似顔絵スタッフになるには修業期間や試験があり、試験の際は社長以下が見届けるという。似顔絵のうまさはもちろんだが、描いている間、お客を飽きさせない話術も評価の対象になるという。当たり前だが、どの仕事も厳しいのだ。
似顔絵はだいぶ進んでいるようだ。店の外では観光客が進捗状況をチラチラ見ている。10分は過ぎているが、まだ制作は続いている。ほかに客はいないし、私も急いでないから、それでいい。
ようやく仕上がり、見せてもらったが、これがそっくりだった。顎はでっぷりしており、頭髪も豊かとはいえない。それが巧妙にマンガチックに描かれている。目立たないが、左の頬と鼻の頭にあるホクロもしっかり描かれていた。だが不愉快になるほどデフォルメされてはいなかった。
ただ何というか、表面より、内面を見透かされた感じだ。まさにプロの仕事で、これで2,310円は安いと思った。
店を出て、そのまま高台寺方面に下る。舞妓さんがふつうに歩いているのが、いかにも京都らしい。
高台寺も風情のある建物のようだが、拝観料を取られるので、パス。折り返し、先ほどの男性氏オススメの食事処に入った。
店の名前を「釜座(カマンザ)」といった。ここは蓬そばが名物だそうで、私は蓬麩そばと天ぷらのセットを頼む。1,600円はけっこうな額だが、清水の舞台から飛び降りるつもりだった。もっともその清水の舞台は、すぐ近くにあるのだが。
スマホを繰ると、植山悦行七段は敗れていた。やはり。W氏あたりは結果を知っていたはずだが、私たちを慮って、秘匿にしたのだろう。
2013年6月28日、植山悦行七段引退。
私は「予定稿」を、ブログにアップした。
食事は美味かった。店を出て辺りを散歩すると、またも舞妓さんがいる。記念に写真に撮らせてほしいが、その一言がいえない。もっともここでスンナリ声が掛けられるくらいだったら、女子校の文化祭で女子に声を掛けていたし、某所で山口恵梨子女流初段にも声を掛けていたのだ。
私は景色を撮るフリをして、その枠の中に舞妓さんを入れる。我ながらやっていることがセコい。
似顔絵商店に戻り、あまり気は進まなかったが、額縁も買った。紙を丸めただけでは、リュックの中で皺が付いてしまうからだ。額縁代が1,575円かかって、〆て3,885円。それでも大いに満足した。
二寧坂、産寧坂と進み、清水坂を登る。先ほどにも増して、物凄い人出だ。京都のほかの観光地は知らぬが、この混雑度は市内トップクラスではあるまいか。
清水寺の拝観料は300円。ここは500円でも入った。朱塗りの仁王門をくぐる。右手には三重の塔がそびえている。ここは何度か訪れているが、ようやく「景色を味わう」境地になった。
園内には浴衣姿の女性が目立つ。みんな近場の人だろうか。しかし東京からの旅行客が宿で着替え、浴衣姿で観光したとしたら、それも粋だと思う。
そのまま道なりに進み、清水寺本堂の舞台に登った。いままで何度も出てきた、これが本当の清水の舞台だ。下を見ると足がすくむが、それよりも京の街の景色が素晴らしい。
後方では朱印所があったので、いただく。その際、ベテラン風?巫女さんに、あの似顔絵を見せる。「似てますねえ」と笑われた。
そのまま左手に回り、清水寺本堂の全景を見る。ここが日本屈指の有名ビュースポットだ。「そのままお進みください」の札があったので、素早く撮影して、先に進んだ。
坂を下ると、水が落ちている箇所がある。この水を飲むと御利益があるらしいが、行列が凄いので、パスする。
お休み処でかき氷でも食べたいが、400円はちょっと、許容範囲を越えている。ここもパスだ。
寺を出て近場をうろうろすると、「五龍閣」なる洒落た建物の喫茶店があった。よほど入ろうかと思ったが、よく考えたらそんな時間はない。まだ八坂神社と清水寺しか観ていないのに、時刻は午後2時にならんとしている。
そのまま坂を下りると、バス停に出た。実は京都には、市内専用の1日バスカードがあるのを知っていた。500円で、これはかなり重宝な代物だ。
ただし購入場所が限られていそうだ。京都駅前に行けば売っているのは確実だが、そこへ行くのにバス代がかかってしまう。
と、銀閣寺行きのバスが来た。何も考えずに乗ってしまえばいいのだが、初乗り料金220円はけっこうな額である。躊躇しているうち、バスは行ってしまった。
傍らの自販機にペットボトルのサイダーが100円で売られていたので、買う。
一息ついて停留所のポールを見ると、1日バスカードは車内でも買える、とあった。
そこへ再び銀閣寺行きのバスが来たが、これも迷ったすえ、やり過ごす。
本当に車内でバスカードが買えるのだろうか。時刻は2時20分を過ぎた。どうしようか…。
(15日につづく)