第１図以下の指し手。▲２四歩△同歩▲４四歩△同銀▲４五歩△同銀▲同桂△同飛▲３三角成△同桂▲５二角△６二金引▲３四角成△４四角▲６六歩△６五桂▲４六歩△５七桂成▲同金直△２五飛▲同飛△同桂▲４四馬（第２図）
私は▲２四歩△同歩のあと、▲４四歩と取り込んだ。△同銀に▲４五歩△同銀。ここで▲３三角成△同桂は上手の左桂を跳ばせて損だと思った。よって、▲４五同桂。以下△８八角成▲同玉△４五飛となれば下手の玉の位置が悪いが、甘受するつもりだった。本譜は単に△４五同飛だった。
私は角を換わって▲５二角。美濃囲いでは出現しない手で、この手に期待した。
島井咲緒里女流二段は△６二金引～△４四角。ここで▲６六歩と突いたのが自慢の一手である。ここ、▲７七銀や▲８八銀では駒を使わされて面白くない。
島井女流二段は△６五桂。これに▲同歩は△９九角成▲８八銀△９八馬▲３三馬となる。これでも下手が十分だと思うが、ダイレクトに香を取られるのが気に食わない。それで、▲４六歩と我慢した。
△５七桂成▲同金直に飛車の措置が難しいが、島井女流二段は△２五飛！
やむを得ないとはいえ、以下▲４四馬（第２図）までと進んで、私の角得である。さすがにこの将棋は負けられないと思った。
第２図以下の指し手。△３七桂成▲５八銀△４七歩▲６二馬△同金▲３二飛△７一銀打▲８六桂△４八歩成▲７四桂△５八と▲同金引△７七歩▲同桂△２九飛（第３図）
△４七歩に、もったいないようだが▲６二馬と行った。対穴熊の場合、角金交換は金の方が得な気がする。
△６二同金に迷った。筋は▲２六角なのだが、△７一銀打は▲３七角で下手優勢なので、いきおい△４八歩成とくる。以下▲６二角成△５八と▲同金引△７一銀打（参考図）で面倒である。
それで本譜は▲３二飛と打ったのだが、やはり△７一銀打とガッチリ受けられ、面白くなかった。
▲３二飛では、やはり▲２六角だった。参考図と進んでも、▲７一同馬△同銀▲２一飛△８二銀打▲６三桂とバリバリ攻めて下手がよいと思う。参考図の２手前△５八とのところでも▲７二金と張りつく手もあり、この辺をもう少し掘り下げるべきだった。
本譜、私は▲８六桂と打ったが、これじゃいかにも響きが薄い。しかも▲７四桂と跳んだために７筋の歩が切れ、△７七歩が飛んできた。
やむない▲同桂に△２九飛と下ろされて、すっかり勝負将棋になってしまった。
第３図以下の指し手。▲６九銀△２三角▲６二飛成△５六角▲８八玉△６二銀▲８二桂成△同玉▲６七銀△７四角▲７五歩△５二角▲５三歩△同銀▲７四角△同角▲同歩△９六桂▲同香△９九角▲同玉△９七銀（第４図）
ここで私は熟考したが、結局▲６九銀と我慢した。
「う～ん、こう打つようじゃ…」
「いえいえ、そう打たれると思いました」
島井女流二段も時間を使い、考える。他の将棋もそうだが、中盤になり、そうそうノータイムというわけにはいかなくなっている。他の３局は、二枚落ち戦はよく見えないが、平手戦、角落ち戦とも上手ペース。すなわち上手に時間がいらない将棋で、今や島井女流二段は、この将棋に集中している感じだ。しかしそれが下手にとって、誇らしくもある。
注目の手は△２三角！だった。
どうも島井女流二段とは読みの波長が合わないと感じていたがこの角もそうで、１秒も考えなかった。
この時点で時刻は午後７時半を過ぎている。麹町サロンは２時間の指導対局中なら再対局が可能だが、半分の１時間を過ぎてこの局面はかなり微妙である。早指しでいってもあと20分はかかるだろうから、そこから感想戦を行えば、２局目の対局が中途半端になってしまう。今回は２局目を諦め、この将棋に集中することにした。
私は▲６二飛成。しかしこれは、早く決着を付けたいと焦ったゆえの疑問手で、▲８二桂成△同玉▲３三飛成とゆっくり行くべきだった。
△５六角に予定は▲６七金打だったが、この金がもったいなくて▲８八玉と寄った。が、島井女流二段に△６二銀と竜を外されて愕然とした。
次に△８九飛があるから私は▲８二桂成から▲６七銀だが、後手への手がかりがなくなってしまい、これで下手が不利になったといっていい。
あの角得の将棋がこんなになるとは…。いやはや将棋は恐ろしい。
私は手順を尽くし、▲７四角△同角▲同歩。ここで島井女流二段がどう指すのだろうと見ていると、△９六桂～△９九角と、凄い手が飛び出した。
▲９九同玉に「（悪かった将棋を）ここまで戻したから…」と、△９七銀（第４図）。またたく間に詰めろがかかった。
ここで下手はどう指す？
（つづく）
