第4図以下の指し手。▲7三歩成△同玉▲5一角△6二飛▲7四歩△8二玉▲7三金△同桂▲同歩成△同玉▲8五桂打△7二玉▲7三歩△6三玉▲4一角△5二金▲6二角成△同銀(途中図)
▲7五桂△5三玉▲2三飛△4三歩▲5二角成△同玉▲6三金△同銀▲同桂成△同玉▲4三飛成△5三桂(投了図)
まで、126手で島井女流二段の勝ち。
第4図で下手玉には、A△9八飛▲8九玉△8八飛成。B△6九飛成▲同金△9八銀打と2つの詰めろがかかっている。この2つは▲8九金で受かるが上手にも手段はあり、受けることは全然考えなかった。
私は軽く▲7三歩成。これが島井咲緒里女流二段の見落としていた好手だった。
「その手が利くんですね…」と島井女流二段は△同玉。ここ△7三同桂は▲7四桂で、以下△7一玉▲7二歩△同玉▲8一角△6一玉▲4三角△5二飛▲6二金以下上手玉が詰む。
本譜△7三同玉に▲6五桂打は△同歩▲同桂に△6三玉で面倒と見て(その進行でもよかった)、私は▲5一角。島井女流二段は、仕方ない、という表情で△6二飛。ここに飛車を打つようではつらいが、まだB△6九飛成以下の詰めろは残っている。詰まし損ねたら許しませんよ、という手だ。
それを踏まえて、私が▲8八金と打つ手はあった。勝負将棋ならこう打つが、鮮やかに詰まして島井ちゃんにいいところを見せたい。それで▲7四歩から詰ましにいった。
右奥の二枚落ち戦は、島井女流二段が投了した。中年氏、会心の指し回しだったようである。他の2局はいずれも下手が悪い。下手の長考が続くが、これだから指導対局の時間が長くなるのだ。もっとも、私の将棋も長くなっているが。
▲8五桂打△7二玉に▲7三歩が、値千金の歩。以下△6一玉は▲6二角成△同銀に、角、飛、金の順番に打って詰む。さすがに投了するだろうと思ったら、△6三玉があるではないか。果たして島井女流二段もそう指した。
私「けっこう手が続きますね」
島井ちゃん「そうですね」
右奥の中年氏はしばらく感想戦をやっていたが、それが一段落すると、一足先に帰った。指導時間が8時半までだからといって、そこまで居座る必要はないのだ。
△6二同銀(途中図)に▲7五桂。しかし△5三玉と寄られて、おのが非勢に気付いた。残りの持駒・飛車金では、寄せがないのだ。
私は▲5二角成から迫るが、最終△5三桂に投了。あれだけ優勢だった将棋を、負けてしまった…。
「桂打ちで飛車打ちなら詰んでたじゃないですか!」
すかさず島井女流二段が口を開く。
「え!?」
「▲7五桂の代わりに▲2三飛で…。△4三歩には▲同飛成があるから」
「あっ!!」
整理すると、途中図から▲3三飛(参考図)と打つ。これに△4三歩は▲同飛成で無効なので△5三銀か△5三角だが、それから▲7五桂と打てば、△7四玉に▲5二角成で下手勝ち。他の応手、例えば△7四玉も、手数は長くなるがやはり詰む。本譜は先に▲7五桂としたため、上手玉を大海に逃がしてしまった。
「そもそも、▲8五桂打が重かったですよね。▲7四歩がイヤでした。私も追い上げたあと失敗しちゃって…」
「▲7四歩でしたか。そうかー、いや▲8五桂打~▲7三歩は、△6三玉と上がられて、攻め駒の裏側に逃げられる感じですよね。そうか▲7四歩だったかー」
しかしまあ、本譜▲7五桂では▲3三飛で明快に勝っているのだから、最大の罪は▲7五桂ということになる。せっかく中盤までうまく指したのに、もったいないことをした…。
「でも▲7三歩成がいい手でしたね。▲7三金と思っていて、△同桂▲同歩成△同玉▲5一角には△6二金があるからいいと思ってました」
まあ▲7三金と打っても本譜と似たような形になったと思うが、いくら好手を指しても、負けてしまっては意味がない。
下手に好きなように指させ、終盤でうっちゃる。結果的にだが、これぞ指導対局、という感じだった。さすがにプロは違う、と書いておこう。
感想戦を終え腕時計を見ると、8時31分だった。他の2局はまだ対局中。こちらは時間の関係で指し掛けとなるのだろうが、指し手が決まらず下手がグズグズしていたのだから、仕方なかろう。
私は濃密な2時間だったからよしとするが、指導料4,000円は安くはない。もっともこの価格設定で集客のバランスが保たれているともいえ、難しいところである。
今日は島井女流二段が元気そうで何よりだった。私が次に訪れるのはいつになるだろう。その日を楽しみにしている。