一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

「将棋ペン倶楽部」第72号・2019年秋号

2019-09-16 19:46:43 | 将棋ペンクラブ
先日、「将棋ペン倶楽部」第72号・2019年秋号が送られてきた。今号の目玉は「第31回将棋ペンクラブ大賞選考会」である。
選考委員は、木村晋介将棋ペンクラブ会長(弁護士・作家)、西上心太氏(文芸評論家)、所司和晴七段。今年は各部門とも激烈で、選考は難航したようだ。ただそれだけに、そこを勝ち抜いて受賞した作品は、例年通り価値があるのだ。
なお今号から、テープ起こしがA氏からAkuさんに代わった。巻末の編集日誌では湯川博士氏のアドバイスが載っているが、概ねうまくまとめられていたようである。
湯川氏のアドバイスで印象に残ったのは、「しゃべりことばを活かす」である。私も新橋解説会で鈴木大介九段や富岡英作八段の解説を拝聴し、当ブログに載せているが、録音しているわけではないので、言葉は正確ではない。ただ、本人がしゃべったように装って書きこんでいる。湯川氏のアドバイスに沿っていたのがうれしかった。

ほかは常連執筆陣の随筆などが載っているが、目を惹いたのは藤宮瑠勇氏の「将ペン駒落ち道場」(自戦記)である。藤宮氏は社団戦にも出場している気鋭で、本局は5月の関東交流会での、佐藤紳哉七段との飛車落ち戦を、編集部の依頼によって書いたものである。
藤宮氏のそれは対局時の心理が生々しく描かれ、なかなかに読ませる。将棋は藤宮氏がうまく指し、勝利まであと一歩。何とか勝ってくれよッ……と読み進めるのだが、最後はあっと驚く結末が待っていた。
藤宮氏、工夫された展開が見事で、初陣でこれだけ書ければ上出来である。もとより藤宮氏は大秀才で、小論文ならお手のものだろう。再登場に期待したい。

ほかは、星野穣氏の「小林一夫氏の訃報」が印象に残った。誤解を恐れずに書けば、追悼文には名文が多い。そして今回もそうだった。
私もむろん小林氏を存じ上げているが、厳密に言うと、名前と顔が一致しなかった。私はヒトの名前を覚えないので、しばしばこういう事態になる。
小林氏はいつもひょうひょうとしていて、浮世離れしたところがあった。
あれは魚百での将棋会だったか何かの打ち上げだったか、小林氏と1局だけ指したことがある。私の四間飛車に小林氏の居飛車穴熊だったと思うが、中盤まで私が優勢で、こりゃ労せずして勝ったと思った。
ところがそこから小林氏が怪しい終盤力を発揮し、小林氏の逆転勝ち。私はキツネにつままれた負けとなった。
将棋ペンクラブの会員(幹事)は、ふだんは将棋を指さないイメージがあるのだが、実戦を指せば強い人が実に多い。能ある鷹が爪を隠しているのである。小林氏は社団戦にも出場していたようだが、私のイメージはそうである。
小林氏のご冥福をお祈りいたします。

今号は、私も1本投稿したいネタがあったのだが、会社勤めにかまけて書けなかった(ブログは書くのだが)。
まあネタ自体はくだらぬものだったので投稿しなくて正解だったとも思うが、もし投稿して採用されたら、我が随筆はどこのページに挟まれていたのかと思うと、ちょっぴり寂しい気分になる。
やはり会員は、投稿しなければダメだ。
コメント (2)
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