一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第13回白瀧あゆみ杯準決勝戦を見に行く(前編)

2019-09-18 15:24:49 | 将棋イベント
14日(土)は東京・千駄ヶ谷で、第13回白瀧あゆみ杯争奪新人登竜門戦準決勝2局の解説会があり、私は出掛けた。
会場は駅から1分のところにある津田塾大学である。教育者・津田梅子が1900年に創設した女子大だが、場所は千駄ヶ谷ではないはずだ。新しい学部が創設されたのだろう。
千駄ヶ谷駅を出ると、すぐ前がキャンパスだった。日本将棋連盟の最寄り駅にこんな建物があったなんて全然知らなかった。山手線内の広大な敷地で、取得にどれほどのお金がかかったのだろう。大学はお金があるのだ。
警備室に寄り校舎に入ると、係の女性が「302号室」と教えてくれた。現在14時08分だが、開場は14時なのでもう大丈夫である。
302号室は広く、客がだいぶ入っていた。なにより新校舎なので、すべてが綺麗だ。私は教室の後方に座る。1列3、4、3の10人掛けで、15列。すなわち定員150人ということだ。
客は男性がほとんどだが、ちらほら女性の姿も見える。私大の経済学部を思わせ、数年前では考えられなかった男女比である。
私のナナメ前に座った女性は若く、横に扇子を置いた。何かの揮毫がしたためてあるようで、それは棋士のものだろう。時代は変わったのだ。
解説の高見泰地七段と、聞き手の塚田恵梨花女流初段が入場した。塚田女流初段は前回の覇者である。
ほどなくして対局者も現れた。加藤桃子女流三段、山根ことみ女流初段、礒谷真帆女流初段、脇田菜々子女流1級である。今日は加藤女流三段VS礒谷女流初段、山根女流初段VS脇田女流1級の組み合わせである。
1階でいただいたパンフレットには対局者のプロフィールが載っているが、4人とも3月生まれだった。3月生まれは同学年の子供に比して体力面で劣る。よって知的分野で長けるのだ、という話を聞いたことがある。ちなみに私も3月生まれである。
対局前のインタビュー。
加藤女流三段「白瀧あゆみ杯には3、4回出ていますが、2回戦で勝ったことがないので、頑張ります。礒谷さんはファンクラブの活動で頑張っていると聞いています」
礒谷女流初段「白瀧あゆみ杯は昨年に続いて2回目の出場です。今回の相手は加藤さんなので大変ですが、精一杯頑張ります」
山根女流初段「白瀧あゆみ杯は2回目ですが、準決勝までくるのは初めてなので、頑張ります」
脇田女流1級「(愛知県在住なので)東京では、高校生以来の対局となります。関東でのイベント出演は珍しいので、頑張ります」
4人は退場する。前方の大スクリーンには対局室が映し出され、私たちはその模様を見ることができるが、連盟の小田切さんによると、対局者の希望で音声は切られているという。指し手はスタッフのPCから送られてくるのだろう。
この間に、高見七段が「将棋水」の宣伝をする。連盟が新商品として売り出したものらしい。高見七段が一口飲んでみる。
「水はもとから澄んでいるんですが、(プロデューサーが)清水さんだけあって、より透き通っている気がします。これを飲めば、清水さんのようにまっすぐな将棋が指せると思います。お悩みがある人はどうぞ」
なかなかうまいPRだった。
塚田女流初段の4人評となる。
「加藤さんは将棋が安定しています。ふだんから優しい先輩です。
礒谷さんは礼儀正しく、私より4歳年下だけど、落ち着いています。アマ時代から実力を買っていて、中盤から終盤にかけてが強い。これは楽しみなカードです。
脇田さんはあまり印象がないんですが、早繰り銀が得意です。
山根さんは四間飛車の印象が強い。公式戦で指されることが多いです」
本日は決勝戦はやらず、それは10月6日に「白瀧呉服店」で行うようだ。これが白瀧あゆみ杯のパターンだ。
私は2年前の準決勝解説会を、北区の滝野川会館まで聞きに行った。2年前の対局者は、渡部愛女流初段、竹俣紅女流初段、和田あき女流初段、塚田女流1級だった。4人全員アイドル格で、まったく夢のようなカードだった。
昨年もここに来られた方はいますか、と高見七段がみなに問うた。昨年もここ津田塾大学で行われたらしい。3割くらいの人が手を挙げた。皆さん将棋バカである。
ところで白瀧あゆみ杯は不思議な棋戦で、連盟のHPには情報があまり載らない。9月14日現在、同棋戦は「第12回」までのアップである。よって今大会はほかに誰が出場したのか、まったく分からない(ほかの出場は、小高佐季子女流2級、田中沙紀女流3級、野原未蘭アマ、滝祐子アマ)。
「ここは綺麗な学校ですね、ふだんだと(私が男性なので)つまみ出されるんですけど、今日は警備の人に、観戦ですか? と聞かれて……。それで入れてもらいました」
と高見七段が笑わせる。高見七段は声が小さいのがアレだが、トーク力は如才ない。
塚田女流初段が高見七段に戦型予想を聞く。これがなかなかに難しく、「その質問からは逃げてたんですが……」と高見七段は逃げ腰だ。「山根-脇田戦は、山根さんの四間飛車に、脇田さんの舟囲いでしょうか」と予想した。
4者が所定の席に座り、対局開始となった。持ち時間は15分、秒読みは30秒。
▲脇田-△山根戦は、▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角の出だし。脇田女流1級は相手が振り飛車と決め打ちして、策を練ってきたのだろう。
▲礒谷-△加藤戦は、礒谷女流初段が中飛車に振った。
今回は、302号内にいるスタッフが、高見七段らに口頭で指し手を伝えている。よって、用意されている大盤も2面である。
高見七段「中飛車はいい戦法だと思います。自分は指しこなせないから指しませんが……」
▲脇田-△山根戦は、△9四歩▲9六歩と様子を見たあと、山根女流初段が△8四歩とした。「(予想と)違うじゃん」と高見七段が嘆く。あまりにも振り飛車対策が具現化されたので、居飛車にスイッチしたのだろう。振り飛車党には時々ある作戦である。
▲礒谷-△加藤戦は、加藤女流三段が角道を開けず指し手を進める。
高見七段「最近流行りの指し方です」
角道は時期を見て開け、先手の大捌きを防ぐのだ。「加藤さんは△7五歩があります。▲同歩に△6四銀と出て、▲7四歩△8四飛でどうか。よって△7五歩には▲6七銀でしょうか」
▲脇田-△山根戦は、脇田女流1級が▲7七角と上がる。「▲5九角~▲3七角となれば、3手で3七へ角が行けますね」と高見七段。
「私以前、増田康宏六段と当たりまして……。増田六段といえば『矢倉は終わった』ですよね。そしたら増田六段が矢倉を指しまして、またその矢倉がうまくて、終わった戦法でもオマエには勝てる、みたいな感じで参りました」
場内は爆笑である。「後手は△7三桂でしょうか。先手は▲5五歩~▲5六銀~▲4六角~▲3七桂としたいんですよ」
▲礒谷-△加藤戦は、加藤女流三段が長考している。△7五歩を考えているのか。
▲脇田-△山根戦は、△5四歩。「▲5五歩を嫌ったんですね。それでも▲5五歩があります」
▲脇田-△加藤戦は、加藤女流三段が△7五歩と行った。やはりこうでなくてはいけない。
▲同歩△6四銀に▲6五歩。「強いですね」と高見七段が感心した。
数手進んで図。高見七段のオススメは▲7四歩だが、礒谷女流初段はどう指すのか。

(つづく)
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