17日は第73回NHK杯の決勝と、第49期棋王戦第4局があった。藤井聡太NHK杯選手権者・棋王は2月4日に続いてのダブルヘッダー?で、この17日は1日に2回優勝と、年度最高勝率更新が懸かっていた。
が、私はこの日ちょっと忙しく、NHK杯は観戦する余裕がなかった。あとはビデオを見るお楽しみだ。棋王戦はチラチラとABEMAを見たが、藤井棋王が優勢。その後藤井棋王の勝利が伝えられたが、「年度最高勝率更新」の文言がない。これは、藤井NHK杯がNHK杯で負けたのだろうか。
果たしてネット社会は恐ろしく、しばらくして「NHK杯、佐々木勇気八段優勝」のネットニュースが飛び込んできた。ああ、まあそうであろう。
とりあえず、私はNHK杯のビデオ観戦に入った。
NHK杯は最後の大一番であるが、対局者の藤井NHK杯、佐々木八段はふだん通りのスーツ姿だった。まあこれは、ふたりとも若手だからしょうがない。
決勝戦だからNHKアナとともに対局前に着座していたが、解説者と聞き手の姿はなし。例年なら、聞き手の女流棋士が1年の総括をするなどして、決勝戦の場が盛り上がったものだ。
そして、過去の優勝者の紹介もなかった。NHK杯も73回になると、優勝者を振り返るだけでも時間がかかるからか、これも省略となった。
解説は羽生善治九段。NHK杯決勝といえば、将棋連盟会長の解説が名物である。羽生九段は準決勝で藤井NHK杯に屈したが、決勝戦でも参加となった。
対局開始。将棋は佐々木八段の先手で、角換わり相腰掛け銀になった。お互い右金をまっすぐ上がり飛車を引く、例の形である。
そこから佐々木八段は銀矢倉に組み替え、5筋の歩を突いて右桂を跳ねる。藤井NHK杯も同様に右桂を跳ねた。角換わりらしい攻め合いだ。
驚くべきは、ここらあたりなどとうに両者の研究だったらしいことだ。藤井NHK杯は考慮時間を使っているが、佐々木八段はまだフルに残している。
さらに数手進んで、佐々木八段は桂の王手。私さえ指す手を躊躇う俗手で、羽生九段も「ヒョエー」と絶叫したあと、「でもこれもあー研究してあるんだなあ……」とつぶやいた。
果たしてここまでは佐々木八段の優勢で、形勢バーは佐々木八段68%を示している。羽生九段は「ただこれ(このあとを)正確に指せたときのパーセンテージなんで……」と、この数字がすべてではない、という見解を示した。これはその通りだと思う。
すると佐々木八段は、要と思えると金を捨てる。とたんに羽生九段が「ええええー…そうですね、これ凄い手ですね」と驚く。「これ凄い手ですよホントに」。
羽生九段、タイトル99期の実績に関係なく、対局者の指し手に敬意を表している感じがさすがである。
だがここから藤井NHK杯も力を出す。藤井NHK杯がうまく反撃し、優勢から勝勢になった。形勢バーも「佐々木2:98藤井」となっている。また考慮時間も、佐々木八段がすべて使ったのに、藤井NHK杯はまだ2分残している。勝負の結果は分かっているが、実は藤井NHK杯が勝ったんじゃないか、と思った。

が、図で藤井NHK杯が△5五角成としたのが悪かった。途端に形勢バーが98%から18%に減ってしまった。ここか!
ここで佐々木八段が▲2四飛としたのが、藤井NHK杯が見落とした手。△同歩とはできないので藤井NHKは△3七金▲2九玉△2八金からこの飛車を除去したが、これでは藤井NHK杯が足りなくなった。
藤井NHK杯は以下も逆転の筋を模索したが、なかった。最後はがっくりとうなだれ、投了。佐々木八段、うれしい初優勝となった。
かつて羽生九段が「いつも勝っていますね」というインタビューを受けたとき、「負け数は(ほかの棋士と)同じですから」と答えた。それでも藤井NHK杯は負け数が少ないが、今回の投了シーンを見るに、八冠王だから一般棋戦のひとつくらい負けてもいい、という考えなど微塵もない。一局を真剣に戦い、投了時も、この世の終わりのごときだった。これはNHK杯関係者も、胸が熱くなったことだろう。
が、私はこの日ちょっと忙しく、NHK杯は観戦する余裕がなかった。あとはビデオを見るお楽しみだ。棋王戦はチラチラとABEMAを見たが、藤井棋王が優勢。その後藤井棋王の勝利が伝えられたが、「年度最高勝率更新」の文言がない。これは、藤井NHK杯がNHK杯で負けたのだろうか。
果たしてネット社会は恐ろしく、しばらくして「NHK杯、佐々木勇気八段優勝」のネットニュースが飛び込んできた。ああ、まあそうであろう。
とりあえず、私はNHK杯のビデオ観戦に入った。
NHK杯は最後の大一番であるが、対局者の藤井NHK杯、佐々木八段はふだん通りのスーツ姿だった。まあこれは、ふたりとも若手だからしょうがない。
決勝戦だからNHKアナとともに対局前に着座していたが、解説者と聞き手の姿はなし。例年なら、聞き手の女流棋士が1年の総括をするなどして、決勝戦の場が盛り上がったものだ。
そして、過去の優勝者の紹介もなかった。NHK杯も73回になると、優勝者を振り返るだけでも時間がかかるからか、これも省略となった。
解説は羽生善治九段。NHK杯決勝といえば、将棋連盟会長の解説が名物である。羽生九段は準決勝で藤井NHK杯に屈したが、決勝戦でも参加となった。
対局開始。将棋は佐々木八段の先手で、角換わり相腰掛け銀になった。お互い右金をまっすぐ上がり飛車を引く、例の形である。
そこから佐々木八段は銀矢倉に組み替え、5筋の歩を突いて右桂を跳ねる。藤井NHK杯も同様に右桂を跳ねた。角換わりらしい攻め合いだ。
驚くべきは、ここらあたりなどとうに両者の研究だったらしいことだ。藤井NHK杯は考慮時間を使っているが、佐々木八段はまだフルに残している。
さらに数手進んで、佐々木八段は桂の王手。私さえ指す手を躊躇う俗手で、羽生九段も「ヒョエー」と絶叫したあと、「でもこれもあー研究してあるんだなあ……」とつぶやいた。
果たしてここまでは佐々木八段の優勢で、形勢バーは佐々木八段68%を示している。羽生九段は「ただこれ(このあとを)正確に指せたときのパーセンテージなんで……」と、この数字がすべてではない、という見解を示した。これはその通りだと思う。
すると佐々木八段は、要と思えると金を捨てる。とたんに羽生九段が「ええええー…そうですね、これ凄い手ですね」と驚く。「これ凄い手ですよホントに」。
羽生九段、タイトル99期の実績に関係なく、対局者の指し手に敬意を表している感じがさすがである。
だがここから藤井NHK杯も力を出す。藤井NHK杯がうまく反撃し、優勢から勝勢になった。形勢バーも「佐々木2:98藤井」となっている。また考慮時間も、佐々木八段がすべて使ったのに、藤井NHK杯はまだ2分残している。勝負の結果は分かっているが、実は藤井NHK杯が勝ったんじゃないか、と思った。

が、図で藤井NHK杯が△5五角成としたのが悪かった。途端に形勢バーが98%から18%に減ってしまった。ここか!
ここで佐々木八段が▲2四飛としたのが、藤井NHK杯が見落とした手。△同歩とはできないので藤井NHKは△3七金▲2九玉△2八金からこの飛車を除去したが、これでは藤井NHK杯が足りなくなった。
藤井NHK杯は以下も逆転の筋を模索したが、なかった。最後はがっくりとうなだれ、投了。佐々木八段、うれしい初優勝となった。
かつて羽生九段が「いつも勝っていますね」というインタビューを受けたとき、「負け数は(ほかの棋士と)同じですから」と答えた。それでも藤井NHK杯は負け数が少ないが、今回の投了シーンを見るに、八冠王だから一般棋戦のひとつくらい負けてもいい、という考えなど微塵もない。一局を真剣に戦い、投了時も、この世の終わりのごときだった。これはNHK杯関係者も、胸が熱くなったことだろう。