先日投稿した大糸線撮影記で予告した「トットちゃんの電車教室」について書いてみたいと思います。
この2両の電車は信濃松川駅から車でおよそ5分のところにある「安曇野ちひろ公園」内に置かれています。隣には、絵本画家・いわさきちひろほか世界の絵本画家の作品を収蔵した「安曇野ちひろ美術館」があり、館長は黒柳徹子さんです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/54/00785c85c50d92a569d3bb1072045471.jpg)
黒柳さんといえば1981年に出版された自伝的小説「窓ぎわのトットちゃん」が大ベストセラーになりました。表紙や挿絵には独特の風合いを持ついわさきちひろの作品が使われています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/c2/a61b8b5dca67ce0918f7553d82a1720d.jpg)
トットちゃんの幼少期はとにかく好奇心旺盛で破天荒。ゆえに通っていた小学校を1年で追い出されてしまい、「トモエ学園」という私立の学校に転校します。自由教育を旨とする同学園で彼女の才能は磨かれていくわけですが、その中に登場する、廃車になった電車を利用した教室を再現したのがこの2両です。周囲に広がる広々とした柵のない芝生広場などとともに、子どもの個性を尊重し自由に伸び伸びと育てるというトモエ学園の教育方針をテーマに整備されたということです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/5b/b34ab7c78fd162c725d80aa3f95d6774.jpg)
さて「モハとデハニ」と紹介されるこの2両、いったいこんな古豪がどこに眠っていたのかと思えば、同じ県内を走る長野電鉄に保管されていたものだそうです。これまで大正、昭和初期の電車はあまり興味がなくてノーマークでしたが、最近は少しずつこうした車両への興味が湧いています。言うまでもなくトシのせいです。突っ込まれる前に言っちゃいます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/45/4a3dec6f91d9634f296ee7cff11b464c.jpg)
1両ずつ見ていきましょう。北側に位置するのがデハニ201。1926年(大正15年)汽車製造(汽車会社)製。運転室後方の荷物室と大ぶりのパンタが印象的です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/66/c9f91af450c8d12c4fd535519982081c.jpg)
半鋼製車ですが床下にはトラス棒があります。木造から鋼製へ移行する過渡期の設計が見て取れます。床下機器も標準化された旧型国電のものとは趣が違います。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/39/ac129635380adec79bfc37c40226795b.jpg)
台車はボールドウィンタイプで汽車会社製のコピー台車だそうです。釣り合いバリの曲線が優雅ですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/ba/9c6932d0f153fa2d81424ae810c39e1e.jpg)
簡素な運転台。マスコンには「WESTINGHOUSE」の刻印がビシッと刻まれています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/c7/64914a1468350db5632faf5729974f4f.jpg)
頭上に並ぶ数々のカノピスイッチ群もいい味出してます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/b5/ca39ae62490f317e93644fd974798612.jpg)
客室は入れませんが荷物室は立入り可能。仕切り扉や白熱灯など装備はそのまま保持されています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/e3/812509f6474d7ce7d243d95d17ad2ac1.jpg)
客室は教室に改造されています。これがまさにトットちゃんが学んだトモエ学園の電車教室を再現したものだとか。机の上をよくみると昆虫観察だったり、読書だったり、理科の実験だったり、2人として同じものがありません。各自が自発的に勉強をしてわからないところを先生に聞く。これがトモエ学園の日常だったそうです。奥の黒板の日付は4月21日(訪問日)になっていました。演出が細かいですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/bf/d388e29ce52ab0108cd47ac0ee52fa18.jpg)
次にお隣の車両をみてみます。こちらはモハ604とされています。1927年(昭和2年)川崎造船製。屋根が深く前面やドア上のカーブした水切りが特徴の「川造型」といういわば規格型ボディだとか。もともとはデハ350型として竣工し、改番を経てモハ604として活躍したのちに廃車。上田交通へ転籍し、電装解除されてクハに。廃車後は長電に戻って保存されました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/43/cbb8a6844e080c354a09954e14d01ee6.jpg)
こちらもボールドウィンタイプの川造製コピー台車だそうですが、釣り合い梁の弓の形が汽車製とやや異なるようです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/6e/eea897ec35767e37a5952066498ff14e.jpg)
上述のように上田交通時代にクハ化されているので、モハを名乗るもののモーターはありません。こちらもトラス棒つき。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/6d/d2fdc0334a19e7a5c8afa0ec15c0e881.jpg)
床下機器もクハらしく簡素です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/dc/147cca09ed1f93856d8509be8dd6bf08.jpg)
運転台はメーターとマスコンの間が少し空いているもののデハニと酷似しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/6a/16d747f3246a413158fc4539a4ac4438.jpg)
カノピスイッチ群もほぼ同じ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/6a/68bcb2fcb9e9e777dd6080baab84fa96.jpg)
車内は図書室に改造されていて、こちらは実際に本を読むことができます。管理人(司書?)の方が常駐していて、いろいろトモエ学園についてのお話をうかがいました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/c8/d41c5eb10dfd9602a4626b7aac6e072a.jpg)
ヨロイ戸式の日よけが何ともレトロモダンな雰囲気を醸し出しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/bf/d0e4676bd59d14a594622c77fcdd03c3.jpg)
ところでこの2両は長野電鉄から譲渡され、トレーラーで運ばれてきたのですが、その方法がよくある保存車両の搬入とは違っていました。「窓ぎわのトットちゃん」の中で、トットちゃん達は、夜遅く(恐らく未明に近い時間?)に教室となる電車が運ばれてくるのをかたずをのんで見守ったそうです。それを丸ごと再現するため、希望者を募って「お泊まり会」を開いて翌朝に備え、一方抽選にもれた子どもたちは早朝に起きて合流し、大人も子どもも一緒になって盛大に電車の到着を迎えたのだそうです。
その時の様子が動画に収められています。(YouTubeへ飛びます)
トットちゃんの電車の教室がやってきた!
トットちゃん広場ができるまで 計画発表からオープンまでの793日
どうです、ほっこりしたでしょ?こうした夢とストーリー性のある車両保存活動がもっともっと増えてほしいなと思います。
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この2両の電車は信濃松川駅から車でおよそ5分のところにある「安曇野ちひろ公園」内に置かれています。隣には、絵本画家・いわさきちひろほか世界の絵本画家の作品を収蔵した「安曇野ちひろ美術館」があり、館長は黒柳徹子さんです。
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黒柳さんといえば1981年に出版された自伝的小説「窓ぎわのトットちゃん」が大ベストセラーになりました。表紙や挿絵には独特の風合いを持ついわさきちひろの作品が使われています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/c2/a61b8b5dca67ce0918f7553d82a1720d.jpg)
トットちゃんの幼少期はとにかく好奇心旺盛で破天荒。ゆえに通っていた小学校を1年で追い出されてしまい、「トモエ学園」という私立の学校に転校します。自由教育を旨とする同学園で彼女の才能は磨かれていくわけですが、その中に登場する、廃車になった電車を利用した教室を再現したのがこの2両です。周囲に広がる広々とした柵のない芝生広場などとともに、子どもの個性を尊重し自由に伸び伸びと育てるというトモエ学園の教育方針をテーマに整備されたということです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/5b/b34ab7c78fd162c725d80aa3f95d6774.jpg)
さて「モハとデハニ」と紹介されるこの2両、いったいこんな古豪がどこに眠っていたのかと思えば、同じ県内を走る長野電鉄に保管されていたものだそうです。これまで大正、昭和初期の電車はあまり興味がなくてノーマークでしたが、最近は少しずつこうした車両への興味が湧いています。言うまでもなくトシのせいです。突っ込まれる前に言っちゃいます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/45/4a3dec6f91d9634f296ee7cff11b464c.jpg)
1両ずつ見ていきましょう。北側に位置するのがデハニ201。1926年(大正15年)汽車製造(汽車会社)製。運転室後方の荷物室と大ぶりのパンタが印象的です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/66/c9f91af450c8d12c4fd535519982081c.jpg)
半鋼製車ですが床下にはトラス棒があります。木造から鋼製へ移行する過渡期の設計が見て取れます。床下機器も標準化された旧型国電のものとは趣が違います。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/39/ac129635380adec79bfc37c40226795b.jpg)
台車はボールドウィンタイプで汽車会社製のコピー台車だそうです。釣り合いバリの曲線が優雅ですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/ba/9c6932d0f153fa2d81424ae810c39e1e.jpg)
簡素な運転台。マスコンには「WESTINGHOUSE」の刻印がビシッと刻まれています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/c7/64914a1468350db5632faf5729974f4f.jpg)
頭上に並ぶ数々のカノピスイッチ群もいい味出してます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/b5/ca39ae62490f317e93644fd974798612.jpg)
客室は入れませんが荷物室は立入り可能。仕切り扉や白熱灯など装備はそのまま保持されています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/e3/812509f6474d7ce7d243d95d17ad2ac1.jpg)
客室は教室に改造されています。これがまさにトットちゃんが学んだトモエ学園の電車教室を再現したものだとか。机の上をよくみると昆虫観察だったり、読書だったり、理科の実験だったり、2人として同じものがありません。各自が自発的に勉強をしてわからないところを先生に聞く。これがトモエ学園の日常だったそうです。奥の黒板の日付は4月21日(訪問日)になっていました。演出が細かいですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/bf/d388e29ce52ab0108cd47ac0ee52fa18.jpg)
次にお隣の車両をみてみます。こちらはモハ604とされています。1927年(昭和2年)川崎造船製。屋根が深く前面やドア上のカーブした水切りが特徴の「川造型」といういわば規格型ボディだとか。もともとはデハ350型として竣工し、改番を経てモハ604として活躍したのちに廃車。上田交通へ転籍し、電装解除されてクハに。廃車後は長電に戻って保存されました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/43/cbb8a6844e080c354a09954e14d01ee6.jpg)
こちらもボールドウィンタイプの川造製コピー台車だそうですが、釣り合い梁の弓の形が汽車製とやや異なるようです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/6e/eea897ec35767e37a5952066498ff14e.jpg)
上述のように上田交通時代にクハ化されているので、モハを名乗るもののモーターはありません。こちらもトラス棒つき。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/6d/d2fdc0334a19e7a5c8afa0ec15c0e881.jpg)
床下機器もクハらしく簡素です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/dc/147cca09ed1f93856d8509be8dd6bf08.jpg)
運転台はメーターとマスコンの間が少し空いているもののデハニと酷似しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/6a/16d747f3246a413158fc4539a4ac4438.jpg)
カノピスイッチ群もほぼ同じ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/6a/68bcb2fcb9e9e777dd6080baab84fa96.jpg)
車内は図書室に改造されていて、こちらは実際に本を読むことができます。管理人(司書?)の方が常駐していて、いろいろトモエ学園についてのお話をうかがいました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/c8/d41c5eb10dfd9602a4626b7aac6e072a.jpg)
ヨロイ戸式の日よけが何ともレトロモダンな雰囲気を醸し出しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/bf/d0e4676bd59d14a594622c77fcdd03c3.jpg)
ところでこの2両は長野電鉄から譲渡され、トレーラーで運ばれてきたのですが、その方法がよくある保存車両の搬入とは違っていました。「窓ぎわのトットちゃん」の中で、トットちゃん達は、夜遅く(恐らく未明に近い時間?)に教室となる電車が運ばれてくるのをかたずをのんで見守ったそうです。それを丸ごと再現するため、希望者を募って「お泊まり会」を開いて翌朝に備え、一方抽選にもれた子どもたちは早朝に起きて合流し、大人も子どもも一緒になって盛大に電車の到着を迎えたのだそうです。
その時の様子が動画に収められています。(YouTubeへ飛びます)
トットちゃんの電車の教室がやってきた!
トットちゃん広場ができるまで 計画発表からオープンまでの793日
どうです、ほっこりしたでしょ?こうした夢とストーリー性のある車両保存活動がもっともっと増えてほしいなと思います。
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