おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
「私の好きな言葉」の6回、7回は、私がいちばん好きな本『どうすれば幸福になれるか 上・下』(W.B.ウルフ著、岩井俊憲監訳、一光社、写真)からご紹介しました。

8回目の今回も同じ本からです。
「私の好きな言葉」のご紹介の前に、なぜ私がこれほどまでに『どうすれば幸福になれるか』にこだわるかを明らかにします。
理由の第1は、ウルフが『どうすれば幸福になれるか』を書いた1931年当時と現代の抱える問題点に共通点があるからです(詳しくは、同書の「監訳者はしがき」をお読みください)。
理由の第2は、この本が歴史的にアドラー心理学の本で世界中でいちばん売れていた(世界的にはペンギンブックス、日本では岩波新書で)のに、絶版になってしまったことが惜しくてたまらなかったからです。
理由の第3は、この本を読むことによって、私以外にも救われる人がたくさんいるだろうと確信していたからです。
私は、当時師事していた野田俊作先生を介して、シカゴのアドラー心理学大学院に留学中の中島弘徳さんに原典(ペンギンブックススや岩波新書は部分訳)から全部コピーをしていただき、それをもとに一光社の鈴木大吉社長に出版を依頼し、バベル・インターナショナルに所属するプロの翻訳家2人に全文を下訳してもらい、さらには監訳者の立場から原典と訳文を一字一句チェックし、3年近い年月を経て上梓したものです。
それだけに強い思い入れがあるのです。
出版までの長いいきさつを書いてしまいました。
さて、今回のテーマは、「笑いとユーモア」です。
ウルフは、『どうすれば幸福になれるか』の下巻第7章「訓練―夢、ユーモア、哲学」の「ジョークの精神力動」の部分で、「笑えば世界は君とともに笑い、泣けば君は1人で泣くのだ」という古いことわざを紹介し、「ユーモアは、文明人が孤独から自分たちの身を守るための最も重要な考案物」だとし、次のように書いています。
笑いとユーモアのセンスを養うことは、よい人生のためのすばらしい訓練である。自分自身と仲間の人を結びつけるためには、なごやかでユーモラスなパーソナリティを養うのが一番である。かなりの安心感と達成感を持っている人だけが、笑うゆとりがある。
勇気とよいユーモアは、よい人生のためのビタミンである。
笑いとユーモアをよい人生のための訓練になり、人と人とを結びつける作用をもたらすことと説いていることがウルフとアドラー心理学の特徴です。
アドラーは、感情(emotion)を2つ―「人と人とを結びつけるもの」(conjunctive)「人と人とを離反させるもの」(disjunctive)ーに区分し、笑いを前者の代表格としています。
○予告:ぺルグリーノ博士の「ユーモアと笑い」のワークショップ
10月11日(土)、12日(日)にヒューマン・ギルドでジョセフ・ぺルグリーノ博士(モントリオール個人心理学協会理事長)をお招きして、「カウンセリングとセラピーにおけるユーモアと笑い」のワークショップを開催します。
博士は、お人柄といい、学識といい「ユーモアと笑い」に最も適した講師です。
ご予定ください。
写真は、2006年7月にヒューマン・ギルドで行われたワークショップのものです(写真中央が博士)。
