|
おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
アドラーの本の紹介の第1回目は、最新訳書の『教育困難な子どもたち』(アルテ、1,800+税)です。
この本は、ドイツ語の“Indivudualpsychologie in der Shule”(『学校における個人心理学』1929)からの『生きる意味を求めて』(アルテ、2,000円+税)に続く岸見一郎さんによる翻訳です。
アドラーが1928年に教師を対象にウィーン市の教育研究所で行った講義を収めたもので、その時の講演テーマは「学校における教育困難な子どもたち」でした。
アドラーは、序言で「個人心理学を学校生活に導入するのを容易にすることを目的にしたもの」だと書いています。
構成は、以下のとおりです。
序言・序文 第1章 最初の5年 第2章 問題行動の前史 第3章 子どものライフ・スタイル 第4章 運命の一撃 第5章 本当の早期回想と嘘の早期回想 第6章 子どもの早期回想と夢 第7章 早期回想・空想・夢の意味について 第8章 夢の理論 第9章 概括 共同体感覚 第10章 4つの症例 付録 図と質問表 訳注・解説
この本が出版された1929年は、翌年の1930年とともにアドラーのゴールデン・エイジの真っ只中で、『個人心理学講義―生きることの科学』(“The Science of Living”、岸見一郎訳、一光社、1929、1,800円+税)、『子どもの教育』(“The Education of Children”、岸見一郎訳、一光社、1930、1,800円+税)、『アドラーのケース・セミナー』(“The Pattern of Life”、岩井俊憲訳、一光社、1930、2,850円+税)がアメリカで続々出版されています。 しかし、この本は、アドラーがウィーンでドイツ語で講演した内容をもとにしているだけに、他の本よりいっそうアドラーがライフ・スタイル、早期回想、夢の理論について流暢に、平易に語っている感があります。 アドラーが学校の課題を次のように語っているのを読むにつけ、アドラーが教育にかけた理想が今の日本でもまだまだ実現していないことを痛感するのは、私だけでないでしょう。
「学校の課題は、次のようなものです。『人生で、自立して働き続け、避けることができない課題を、自分には関係がなく他の人が解決することであると考えるのでなく、それを解決するために、自分の問題として見るような人間をどのようにして育てるか』ということです。[このような]国民の理想は、家庭の中までも及んでいます。[それゆえ]学校を終えた後、共同体に有用な(岩井注:「建設的な」)人間となるように、家庭と学校で何らかの処置を取らなければならないということは明白です」
(注)この文章は、私がヒューマン・ギルドのニュースレター(2008年5月号)用にほぼそのまま使用します。
教育困難な子どもたち (アドラー・セレクション) アルフレッド・アドラー アルテ

このアイテムの詳細を見る
|