おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
アドラーの本の紹介の3冊目は、アドラーの1932年の著書『人生の意味の心理学』(高尾利数訳、春秋社、2,600円+税)です。
ただ、残念ながら絶版になっています。古書店でお求めください。

原題は“What Life Should Mean to You”でしたが、今は、下の写真のように“What Life Could Mean to You”として出ています。
構成は、以下のとおりです。
訳者まえがき
第1章 人生の意味
第2章 心とからだ
第3章 劣等感と優越感
第4章 初期の記憶(早期回想)
第5章 夢
第6章 家族の影響
第7章 学校の影響
第8章 思春期
第9章 犯罪とその予防
第10章 職業
第11章 人間とその仲間
第12章 愛と結婚
訳者あとがき
この本の出だしは、次のように格調があります。
「われわれ人間は、もろもろの意味の領域を生きている。われわれが経験するのは、決して純粋な事実などというものではなく、常に人間にとって有意義な事実というものである。・・・・(中略)・・・・いかなる人間も、意味なしには生きられない。われわれが現実を経験するのは、常に、われわらが現実に付与する意味を通してであり、われわれは、現実そのものではなく、すでに何か解釈されたものとして、それを経験するのである」
この本から読み取れる第1の大きなポイントは、人生の意味―それも人の認知を通して個々人が解釈する意味―です。
さらにアドラーは続けます。
「すべての人間は、3つの大きなきずな(ties)を持っている」
そしてアドラーは、仕事、交友、愛の3つ人生の課題(ライフ・タスク)に話を発展させ、第10章「職業」、第11章「人間とその仲間」、第12章「愛と結婚」でそれぞれ詳しく論じています。
このライフ・タスクこそが私がこの本から読み取る第2の大きなポイントです。
3つ目のポイントも指摘しておきましょうか。それは、アドラーの思春期に関する見解です。
アドラーは、思春期に入って、性格が変わったように見えることを次のように否定します。
「思春期には多くの危険があるが、それが性格を変えうるというのは本当ではない。それは、成長しつつあるこどもに、新しい状況と新しい試練を与えるものである」
「ほとんどすべての子どもにとって、思春期は、とりわけひとつのことを意味する、つまり、その子どもは、自分はもはや子どもではないということを証明しなければならないのである」
それでは、思春期の子どもたちとかかわりを持つ大人たちは、どう理解し、どのように関わったらいいのでしょうか? アドラーは、明快に答えます。
「もし、子どもが、自分自身を社会の平等な構成員であると感じ、他者に貢献するという自分の課題を理解するように訓練されてきたのであれば、そして特に、異性を平等な同僚と見るように訓練されてきたのであらば、思春期は、成人としての人生の諸問題に対して自らの創造的かつ自立的な解決を始めるひとつの機会を提供するに過ぎないものとなるであろう」
私は、こんなに迫力のあるアドラーの本が絶版になっているのが残念でなりません。
<お目休めコーナー> ヒューマン・ギルドの隣のマンションの花
(この花の名前をご存知の方教えてください)
