○永青文庫 夏季展『白隠とその弟子たち』
http://www.eiseibunko.com/
江戸中期の禅僧、白隠慧鶴(はくいんえかく、1685-1769)は、当時衰退していた臨済宗を復興し、「五百年に一人の名僧」とまで謳われたそうだ。へえー。Wikipediaの記事を読んで、はじめて知った。私が白隠を知ったのは、むろん画僧として。山下裕二さんの美術講座がきっかけだったと思う。2004年に京都文化博物館で行われた『白隠・禅と書画』展も見に行った。このとき、一緒だった友人から「白隠の作品って、あの、早稲田のなんとか文庫にたくさんあるんだよね」と聞いた記憶がある。ふたりとも、永青文庫の名前がすぐには浮かばなかった。
実は、永青文庫の設立者である細川護立公は、生来、病弱に悩んでいたが、白隠の著『夜船閑話』に書かれた内観法(心身のリラックス方法)によって、健康を回復し、その後、白隠の書画を精力的に集めるようになったのだという。当時は、白隠に注目する人は他にいなかったそうだ。収集の苦労と楽しみは、今回の展示資料(護立公の講演速記録など)からも、少しうかがうことができる。
さて、白隠の描く人物は、どれも魅力的だが、とりわけ観音さまは愛らしい。『蓮弁観音図』では、蓮の花弁のゴンドラに、しどけなく寝そべる。確かに、中国でも宋代の観音像は世俗化するが、ここまで生々しく人間的ではない(と思う)。『蓮池観音図』(上記サイトに画像あり)は、よく見ると、両脚の組み方がものすごく変。人体デッサンが全然なってない。でも、切れ長の目、笑みを浮かべた小さな口元など、大切なパーツは、とことん丹精込めて描かれている。そのアンバランスさは、どこか、いまどきの美少女フィギュアに通ずるようだ。
この展覧会は、白隠のほかに、東嶺円慈(とうれいえんじ)、遂翁元盧(すいおうげんろ)という2人の弟子も併せて紹介されている。私は、遂翁元盧の絵画に、けっこうハマった。ひとつは『蛤蜊観音図』(上記サイトに画像があるが、これは原寸大でないと、魅力が伝わらないと思う)。ハマグリからすぃ~っと上方に伸びた、観音さまの示現。谷岡ヤスジのマンガみたいにシュール。『隻履達磨図』は、迷いのない描線が小気味よい。極端に少ない線に、大胆な肥痩の別や滲みを用いて、最大限の効果を出している。小さな黒目を引き立たせるため、白目の部分に胡粉を塗っているように思う。
なお、最近、館内が整備されて、細川護立公の蔵書の一部をガラス扉越しに眺めたり、まるでお客に招かれたように、ソファでくつろぐこともできるのは、この永青文庫ならではの愉しみである。
※本日から、ブログパーツ「対決 巨匠たちの日本美術」(提供:東京国立博物館)貼ってみました。読み込みなおすと、対決が変わります。お試しください。
http://www.eiseibunko.com/
江戸中期の禅僧、白隠慧鶴(はくいんえかく、1685-1769)は、当時衰退していた臨済宗を復興し、「五百年に一人の名僧」とまで謳われたそうだ。へえー。Wikipediaの記事を読んで、はじめて知った。私が白隠を知ったのは、むろん画僧として。山下裕二さんの美術講座がきっかけだったと思う。2004年に京都文化博物館で行われた『白隠・禅と書画』展も見に行った。このとき、一緒だった友人から「白隠の作品って、あの、早稲田のなんとか文庫にたくさんあるんだよね」と聞いた記憶がある。ふたりとも、永青文庫の名前がすぐには浮かばなかった。
実は、永青文庫の設立者である細川護立公は、生来、病弱に悩んでいたが、白隠の著『夜船閑話』に書かれた内観法(心身のリラックス方法)によって、健康を回復し、その後、白隠の書画を精力的に集めるようになったのだという。当時は、白隠に注目する人は他にいなかったそうだ。収集の苦労と楽しみは、今回の展示資料(護立公の講演速記録など)からも、少しうかがうことができる。
さて、白隠の描く人物は、どれも魅力的だが、とりわけ観音さまは愛らしい。『蓮弁観音図』では、蓮の花弁のゴンドラに、しどけなく寝そべる。確かに、中国でも宋代の観音像は世俗化するが、ここまで生々しく人間的ではない(と思う)。『蓮池観音図』(上記サイトに画像あり)は、よく見ると、両脚の組み方がものすごく変。人体デッサンが全然なってない。でも、切れ長の目、笑みを浮かべた小さな口元など、大切なパーツは、とことん丹精込めて描かれている。そのアンバランスさは、どこか、いまどきの美少女フィギュアに通ずるようだ。
この展覧会は、白隠のほかに、東嶺円慈(とうれいえんじ)、遂翁元盧(すいおうげんろ)という2人の弟子も併せて紹介されている。私は、遂翁元盧の絵画に、けっこうハマった。ひとつは『蛤蜊観音図』(上記サイトに画像があるが、これは原寸大でないと、魅力が伝わらないと思う)。ハマグリからすぃ~っと上方に伸びた、観音さまの示現。谷岡ヤスジのマンガみたいにシュール。『隻履達磨図』は、迷いのない描線が小気味よい。極端に少ない線に、大胆な肥痩の別や滲みを用いて、最大限の効果を出している。小さな黒目を引き立たせるため、白目の部分に胡粉を塗っているように思う。
なお、最近、館内が整備されて、細川護立公の蔵書の一部をガラス扉越しに眺めたり、まるでお客に招かれたように、ソファでくつろぐこともできるのは、この永青文庫ならではの愉しみである。
※本日から、ブログパーツ「対決 巨匠たちの日本美術」(提供:東京国立博物館)貼ってみました。読み込みなおすと、対決が変わります。お試しください。