見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

運慶の大日如来、そのほか(東京国立博物館)

2008-06-17 23:33:00 | 行ったもの(美術館・見仏)
○東京国立博物館・本館 常設展示を中心に

http://www.tnm.go.jp/

 本館11室(彫刻)では、今年3月、ニューヨークのオークションで落札され、話題になった『大日如来坐像』(宗教法人・真如苑蔵)が公開されている。力強くて、隙のない、いい仏像である。慶派の仏像は、みなぎる力感と緊張感が魅力だが、見るからに武闘派っぽい不動明王や毘沙門天よりも、かえって静かな如来や観音像のほうが私は好きだ。全身に薄く残った金箔も、内側から出づる光のような効果をかもし出している。

 東博のサイトには、さすがに値段は載っていないけれど、みんな「12億円の仏像か!」と思って見ているのは間違いない。でも、同じ室内に飾られている『十二神将立像 未神』(これも慶派)とか、他の仏像だって、もしオークションにかけられたら、そのくらいするんだろうな。山下裕二先生が「美術館の展示品に値札をつけてみたらどうか」という提案をしていたけれど、やってみたら面白いと思う。

 2階の2室(国宝室)では『華厳宗祖師絵伝』(高山寺蔵)の「元暁絵」を展示中。めずらしい。同絵巻は、華厳宗の2人の高僧の事跡を絵にした「義湘絵」と「元暁絵」から成る。最近、よく出るのは、留学僧の義湘に恋した善妙が、龍に変身するドラマチックな「義湘絵」で、私もこっちのほうが好きだ。しかし、縹渺とした味わいのある「元暁絵」もなかなかいい。

■参考:月刊京都史跡散策会 第5号「華厳宗祖師絵伝」
http://www.pauch.com/kss/g005.html#emaki

 続く3室(仏教の美術)は、どうやら北野天神絵巻の小特集らしい。弘安本の甲巻・乙巻(胸もあらわに、緋の袴で託宣する巫女の姿あり)に加えて、別の断簡には、口から瞋恚の火を噴く恐ろしい天神像が描かれている。また、『後三年合戦絵巻』にも注目。色彩のカスレ具合が、鮮血の流れる合戦シーンを、どぎつさから救っている。『北野天神絵巻』(承久本)や『当麻曼荼羅縁起絵巻』と同様、料紙を縦長に継いでいるので、妙にデカい絵巻である。

■参考:北道倶楽部:武士の発生と成立「奥州後三年記」に見る義家像
http://www.geocities.jp/ktmchi/rekisi/cys_43_20.html

 16室(歴史資料)の特集陳列『日本を歩く-奥羽・東北-』には、『後三年合戦絵巻』の明治時代の模写が出ていることも付け加えておこう。今回、16室は、あれもこれも詰め込みすぎて、ちょっと散漫な印象。

 心ひかれたのは、8室(書画の展開)に進んで、狩野常信筆『龍・鳳凰・麒麟図』の三幅対。中央の龍の顔が、小言を言いたそうな老人に見えて、先日、京都国立博物館で見た『李白観瀑図屏風』の李白を彷彿とするのである。同じ作者かな?と思ったら、『李白観瀑図』の狩野尚信は常信のお父さんだった。なるほど。
コメント
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