見もの・読みもの日記

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今年もたのしい/中国書画精華(東博)

2008-09-28 08:24:02 | 行ったもの(美術館・見仏)
○東京国立博物館・東洋館第8室 特集陳列『中国書画精華』前期

http://www.tnm.go.jp/

 毎年、秋に行われる『中国書画精華』。私は2004年から皆勤している。4年も通っていると、だんだん目新しさがなくなってくるので、5年目の今年は、まあ行かなくてもいいかな、くらいに思っていた。ところが、ふらりと行ってみたら、やっぱりすごい。

 この『精華』展には、東博の所蔵品ばかりでなく、他所からの借り物が数点混じるのだが、今年(前期)は、知恩院の『蓮池水禽図』(南宋・重文)が楽しい。お寺の什物とは思えない、あでやかな蓮の花。下地に使われた胡粉の白が、ピンクを引き立たせる。風にあおられたように大きく靡く蓮の葉。小さすぎる水鳥(鴨、白鷺)のびっくりした顔が可愛い。

 けれども、もっと可愛いのは、伝石恪筆『二祖調心図』。2005年に見ているので、個人的には3年ぶりだ。モップを丸めたみたいなトラが可愛すぎる(2枚目の画像ね)。月餅みたいにまんまるの顔は、離れて見ても、よく目立つ。梁楷の『六祖截竹図』は、刃物を手に、しゃがみこんで、竹を切ることに集中している男を描いたもの。思わず知らず引き込まれる。因陀羅の『寒山拾得図』(禅機図断簡の一部)は、見れば見るほどヘンな絵だ。――このへんは旧知の画家・作品が続いたのだが、隣りの『四睡図』に驚いてしまった。ペンによる細密画みたいなタッチで、厚みや重みを感じさせない、不思議な空間を描き出している。作者の平石如砥(ひんせきにょし)は、元代後期の禅僧だそうだ。

 あんまり刺激的な作品が続いたので、夏珪の山水画(これは万人向け)で精神的に一服。平ケースには、団扇形の初見(?)の作品が3点。また、有名な『雛雀図』は、顔を近づけてよくよく観察したら、籠の中に正面向きの子雀がいることに初めて気づいた。

 今年は、チラシを作って広報にも力を入れている様子。展示目録を見ると後期のラインナップも期待できるので、また来よう。八大山人の書を見つけて嬉しかったことも付け加えておこう。

 本館もひとまわり。六波羅蜜寺の仏像が去ったあとの11室(仏像)がどうなっているかと思ったら、これまで何度も見たことのある『文殊菩薩騎獅像および侍者立像 文殊菩薩像』(康円作、興福寺伝来)の彫刻群を、1ケースに1体ずつ分けて展示している。え、これって水増し策じゃない?と苦笑したが、いつも遠目に見ていた童形文殊菩薩、近づいてしげしげ見ると、悩める少年の表情が美しい。5つに結い分けた髷のそれぞれに、5体の小さな化仏が載っていることに初めて気づいた。「五髷文殊」って必ずこうなっているのだっけ。獅子を引く従者の于闐(うてん)国王の鼻筋の通った顔立ちもいいが、獅子の姿がないのが気になる。修復中かしら。

 追記。ミュージアムシアターでVR(バーチャル・リアリティ)映像『江戸城―本丸御殿と天守―』を見た。前回は東大寺・不空羂索観音の宝冠をテーマにした作品を見たのだが、やっぱりVR技術は、建築や街並みを再現するほうが向いていると思う。面白かった。東博はあまり宣伝に力を入れていないようだが(公式サイトTOPにも記載なし)週末はいつも満席である。
コメント (2)
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