見もの・読みもの日記

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最後はノーサイド/のぼうの城(和田竜)

2008-09-26 23:58:08 | 読んだもの(書籍)
○和田竜『のぼうの城』 小学館 2007.12

 若い女性の間で「戦国ブーム」が起きているそうだ(→アサヒ・コム2008年9月13日記事)。若い女性に同調するのは面映いが、私も「戦国」がマイブームで、以前は関心がなかった時代小説にも、ときどきチェックを入れるようになった。本書は、近所の書店でずっと平棚の好位置をキープしているのが気になって、パラパラめくってみたら、舞台は行田の忍城(おしじょう)だという。おや、地元(埼玉県)ではないか。昨年の大河ドラマ『風林火山』にもチラリと登場したが、長尾景虎(上杉謙信)に帰順した成田長泰の居城である。

 物語は、謙信の忍城攻めからおよそ30年後。天下統一をめざす秀吉は、関東攻略に乗り出す。当主・成田氏長は、北条氏に加勢すべく小田原城に参じたが、実はひそかに豊臣方に内通していた。石田三成の軍勢が忍城に迫る。留守を預かるのは、成田長親。家臣や領民からは「でくのぼう」を略して「のぼう様」と呼ばれていた。智も仁も勇もないが、不思議な人気だけはある総大将「のぼう様」のもとに結集した、百姓を含む二千の軍勢は、三成率いる二万の大軍を相手に、絶対的不利の中で持ちこたえる。しかし、本城・小田原城の落城が伝えられ、忍城の人々は抗戦する意味を失い、開城を受け入れる。

 最後は「ノーサイド」の笛が鳴って、勝負が決着したスポーツみたいだ。敵も味方も、あまり人が死なないので、深刻な恨みツラミがなくていい。戦国時代小説とは思えない、妙にさわやかな読後感が残る。(結果は敗戦なのに)「スター・ウォーズ」第1作のラストシーンを思い出したりした。敵役の石田三成、大谷吉継が魅力的に描かれているのもよい。ネット上には「映画化企画進行中」の噂も流れているが、ぜひとも映像化してほしいと思う。

 忍城、一度行ってみなくては。石田三成が水攻めのために築いた長大な堤防の址「石田堤」も残っているそうだ。 
コメント (2)
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