見もの・読みもの日記

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関西旅行9月編(4):二条城、徳川博物館

2008-09-17 22:39:43 | 行ったもの(美術館・見仏)
○二条城(京都)~徳川美術館・蓬左文庫(名古屋)

 二条城は、京都の主要な観光名所の中で、私が唯一行ったことのない場所だった。長年、武家文化には全く関心が無かったのである。ところが、最近、幕府の御用絵師集団・狩野派に、少なからぬ興味が湧いてきた。先日、安村敏信さんの『もっと知りたい狩野派』(東京美術、2006)を読んで、二条城二の丸御殿の障壁画は、探幽率いる狩野派一門が総力をあげて制作した「狩野派最大の遺産」であることを知った。これは行ってみなくては…。

 二の丸御殿に入ると、遠侍三の間・二の間・一の間と、虎図の襖が続く。昨年、名古屋市博物館の特別展『本丸御殿の至宝』を見て、障壁画というのは、「走獣(虎)」「花鳥」「人物」「(水墨)山水」というふうに、画題の格が決まっていると知った。セオリーどおりである。続く式台の間には、恐るべき松の巨木が2本。二の丸御殿は、欄間(鴨居の上)が襖と同じくらい広いのだが、ここは鴨居の上と下の壁面をぶち抜きにして1幅の絵に仕立てている。右側面は、明り障子を挟んで、上部に松の枝、下部に群れ飛ぶ鶴・鴨が描かれている。凡庸な画家なら逆にしそうなものを、面白い。現場には「探幽25歳の作」とあったと記憶するが、安村さんの本では、作者=狩野山楽説が採られている。どうなんでしょう?

 大広間三の間も探幽筆。岩山のような松の巨木と、その幹にふわりととまった孔雀の細い脚が対照的だ。やけに金ピカだと思ったら、近年つくられた復元模写なのだそうだ。黒書院三の間は明らかに筆が違う。最近、私が気に入っている狩野尚信の作品。尚信は、鴨居の上の空間に、下とは異なる遠景(松林の海岸)を描くことで、室内に広がりを持たせている。

 それから名古屋に出て、徳川美術館へ。企画展示『神仏に祈る-尾張徳川家伝来の仏教美術』を開催中である。小ぶりな念持仏が多い。精巧な造りは、尾張七宝や瀬戸染付を生んだ工芸好きの土地柄を感じさせる。「三河仏壇」「名古屋仏壇」という言葉もあるそうだ(→あいちの伝統的工芸品)。高麗の仏画や紺紙金字経に惹かれた。

 棟続きの蓬左文庫では『妖怪絵本-もののけ・お化けの世界-』と『源氏物語千年紀「源氏物語」の世界』を開催中。個人的にいちばん楽しめたのは『軍記物-歴史とものがたり-』である。徳川家康旧蔵の「保元物語」「源平盛衰記」なんて、おお~聞くだけで興奮。本人が触ったものかどうかは分からないが。家康蔵「源平盛衰記」は、見てすぐ分かる古活字版だった。青表紙あり、丹表紙あり、四つ目綴じあり、朝鮮綴じあり(五つ穴)で、造本の見本市みたいだったし、多巻物をドッサリ積み上げた展示も迫力があってよかった。何より、「歴史と物語はちがうんですか?-ちがいます」みたいな、語りかけ口調のQ&A解説が秀逸。地味な文献資料も、こんなふうに展示すると面白くなるのだな。

コメント
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