見もの・読みもの日記

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遷都1300年祭大詰め(4):正倉院展2010

2010-11-04 00:02:04 | 行ったもの(美術館・見仏)
奈良国立博物館 特別展『第62回正倉院展』(2010年10月23日~11月11日)

 正倉院展も通い続けて9年目になった。むかしは日中とか夕方に来たこともあったが、このところ、混雑を避けて「朝一番に並ぶ」ことを通例にしてきた。ところが、最近は、開館と同時に入るためには、1時間以上前から並ばないといけないし(すぐ入館規制に引っ掛かる)、開館と同時に入っても、あっという間に満員になってしまって、「朝一番」の恩恵が全く感じられない。そこで今年は「日曜の夕方」ねらいに作戦を変更。

 10/31(日)の16時過ぎ、都合よく(?)雨の降りも強くなり、奈良町を歩く人の姿も減ってきた。携帯サイトをチェックすると、入館は「30分待ち」程度らしいので、そろそろ奈良博に向かう。夕闇の中に無人の白いテントが伸びていた。入館待ちの列は、奈良博新館のピロティ程度で、すいすい進み、20分ほどで館内に入れた。

 ただし、今年の目玉、『螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)』のまわりには、最前列でこれを見るための列が作られていて「立ち止まらずにお進みください」と促される。会場には、芝祐泰(しば すけひろ)氏による試験演奏のテープが流れていて、あれ?どこかで聞いたことがある、と思ったら、昨年、『紫檀木画槽琵琶(したんもくがそうのびわ)』が展示されたときも、同様のテープが流れていたのだった。正倉院宝物の琵琶って、全て録音が取られているのかな。

 なるほど、と思ったのは、すでに場内混雑のため、観客が速やかにバラけて、先頭の『山水夾纈屏風(さんすいきょうけちのびょうぶ)』や『鳥草夾纈屏風(とりくさきょうけちのびょうぶ)』を、ゆっくり見ることができたこと。これはラッキー。朝一番に並ぶ人って(私も含めて)根が真面目だから、最初の宝物の前で滞留しやすいのである。のちの山水画や花鳥画に通ずる構図が面白かった。

 大仏開眼会ゆかりの品として、伎楽面の『酔胡王』『迦楼羅』が出ていた。大きく色鮮やかで、舞台の広さ、観客の多さがしのばれる。ところで、展示室の隅につつましく控えているのに、どうしても人目を引いていたのは『獅子』面の模造復元品。先日、特別展『仏像修理100年』で見て、同行の友人と「なんだこれ~」と言い合った、もふもふの獅子頭である。復元のもとになった原品も展示されているが、耳が取れ、色彩も植毛も剥落して、炭のかたまりのようになった姿が痛々しい。よみがえって、よかったと思う。

 今年いちばん気に入ったのは『銀壺』。素っ気ない饅頭型(火鉢型)の大きな壺で、遠目には何も面白くない。ところが近づいてみると、十二人の騎馬人物が弓矢を手に右へ左へと駆け巡り、カモシカ、獅子、猪などを追っている図が刻まれている。さらに飛鳥、蝶、獅子、虎なども。疾走するメリーゴーランドのようで、見とれた。後半には『雑札(ざっさつ)』が登場。地中にもぐらなかった木簡である。未使用の紙がたくさん残っていることも初めて知った。そのまま現代の紙問屋でも売っていそうな『色麻紙(いろまし)』一式など。

 閉館(19時)30分前くらいになったところで、最初の展示室に戻ると、どのケースの前もガラガラ。琵琶のまわりも20人程度に減り、ゆっくり四方から見ることができた。側面や糸巻の螺鈿も完璧に美しい。しかし、つい工芸的な美に眩惑されてしまったが、「世界唯一の古代の五絃琵琶の遺例」なのだから、録音(特に第五絃の音)をよく聞いてくればよかった、と思っている。

 当日中に東京に戻ることもできないではなかったが、この日はまた友人と落ち合って夕食(奈良の地酒・百楽門で乾杯)。奈良(新大宮)に後泊し、月曜日の昼には、まっすぐ職場に戻った。うん、今後はこの参観スタイル、いいかも。

 補記。雨天の正倉院展にあたったのは初めてだと思うが、ビニール袋に入れただけで会場内に濡れた傘を持ちこめるって、大丈夫なんだろうか…と、ちょっと心配になった。

※参考:これまでの正倉院展参観記録

第61回(2009):振替休で月曜朝
第60回(2008):金曜に名古屋前泊して土曜朝
第59回(2007):土曜に奈良前泊して日曜朝/2回目は11/3夕方
第58回(2006):金曜の夜行バス(早めの便)で土曜朝
第57回(2005):金曜の夜行バスで土曜朝
第56回(2004):金曜の夜行バスで土曜朝
・2002、2003年も行っている。

コメント (2)
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