見もの・読みもの日記

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2012秋@関西:小浜「みほとけの里 若狭の秘仏」再訪

2012-10-10 23:21:54 | 行ったもの(美術館・見仏)
○「みほとけの里 若狭の秘仏:平成24年度秋の文化財特別公開」小浜西組(正法寺、常高寺など)~加茂神社~圓照寺~妙楽寺

 先々週に続き、再び東京から小浜を訪ねたのは、この「みほとけの里 若狭の秘仏」企画を成功させて、ぜひ来年度も実施してもらうためである。せちがらいようだけど、このごろ、大人の応援は、口だけでなく、自らお金(と時間)を使うことだと考えるようになった。

 もっとも、10月7日午後の秘仏めぐりツアー「D1:千手観音菩薩と北陸随一の日大如来をめぐる」は、私が最後の21人目で、ツアーに参加できなかったご家族が、自家用車で同じルートをついてまわっていたほどの盛況だったので、要らぬ気遣いだったかもしれない。

 先々週、教わったばかりのJRバス若江線を利用。10:30頃に小浜駅に到着し、午前中は駅周辺を歩いて観光することにした。小浜に到着する直前から雨が降り出してきたので、駅の売店でビニール傘を買い、「小浜西組」と呼ばれる重要伝統的建造物保存地区を散歩する。街並みには風情があるが、ほとんど人の姿がなくて寂しい。同地区には、今回の「特別公開」の対象となった誓願寺・極楽寺・高成寺などがあるが、いずれもこの日はひっそりと扉を閉ざしていた。栖雲寺は、おや本堂に灯りがついている、と思ったのだが、どうやら法事らしかったので、近づいて中を覗くことはやめにした。



 この日「特別公開」をしていたのは正法寺1ヶ所だけ。寺務所に人の姿があったので、声をかけてみると、おばあちゃんの尼さんが「いま団体さんが帰って(法衣を)脱いだところやわー」と笑いながら、法衣をつけて、本堂に来てくれた。中年のご夫婦が、内陣の明かりをつけようとして「つく?」「つかん」と話している。暗くて、ご本尊が全然見えないのでガッカリしかけたが、「こっちへいらっしゃい」とお厨子の真正面に案内いただき、お嫁さん(?)が懐中電灯で照らしてくれた。50センチくらいの金銅製の半跏思惟像が浮かび上がった。

 あとで解説を読んだら「鎌倉時代後期の復古金銅像」だという。おばあちゃんの話では、海の中からあがったという言い伝えがあるそうだ。「どこから来たの?」と聞かれて「東京からです」と答えたら驚かれた。ちょうど雨が激しくなったので「遠くから来ていただいて、観音さんの嬉し涙やわ」と言われて恐縮した。こうしてご家族だけで文化財を守っていくのは、いろいろご苦労のあることだと思う。今回の特別公開について「来年もやるという話を聞いていますが…」と水を向けたが、お嫁さんは「いやあ、うちはもう勘弁してほしいわあ」と及び腰でいらした。

 ご朱印をいただきながら、拝観料を求められていなかったことに気付いて、お釣りだけお納めしてきたけど、ほんとはもう少しお包みすべきだったんだろうか。悩む。先々週のご朱印を見ながら「○○寺はご住職の字やね」など話がはずんだ。立ち上がったときは、また雨が小降りになっていて「心がけがいいね」と誉められた。機会があったら、また来年も立ち寄りたいお寺である。もう1ヶ所、常高院(お初)の墓所のある常高寺も拝観。


↑正法寺さん

■加茂神社(為星寺)

 午後はツアーバスに乗車。雨はあがって、雲が切れてきた。先々週と同じガイドさんだったが、バスはひとまわり小さい。山道や集落内の細道を行くので、申し込み者が増えても、21人乗り以上のバスは出せないのだそうだ。
 
 加茂神社の(正確には、加茂神社が管理している為生寺本堂の)本尊・千手観音菩薩立像は平安時代の作。腰が細く、顔立ちも美しい。今年は33年に1度の本開帳にあたり、9/15~9/17は大勢の参詣者で賑わったという。このほか、9/30、10/6、10/7は文化財めぐりツアーのために公開されたが「たぶん皆さんが最後のお客さんです」という。「午前のツアーで、今日は本開帳最後の日なので、特別にひとり1枚だけ写真を撮ることを許可していただきました」とガイドさん。うわー感激。

 扉の横に立っていたおじさん(地区長さん?)に「また33年間は開けないんですか」と聞いたら「いや、たぶん来年も…。本開帳の前後はね」とおっしゃっていた。実際は17年目に中開帳もするらしい。正法寺さんも33年に1回が正式だが、17年に1回は開けないと次に伝わらないから、とおっしゃっていた気がする。


↑控えめの画像で載せておきます。(※小浜観光協会サイトに写真あり

 拝観のあと、なぜか駐車場でバスを乗り換える。最初のバスの調子がよくなかったらしい。ひとまわり小型の車両だが席数は変わらず(やや多め?)。ただしマイク設備がないので、ガイドさんは地声で喋る羽目に…。もう何でもありだなあ。



■圓照寺(円照寺)

 2.5メートルを超す大きな大日如来坐像を安置。江戸時代に金箔を施されてしまったが、よく見ると、定朝様式の面影の感じられる優品。物知りな住職さんの話が面白かった。このご本尊、某先生は10世紀の作というが、別の文化庁の技官さんは12世紀の作と言っており、200年の開きがあるとか。

 また、昭和30年代、のちに奈良国立博物館長をつとめる倉田文作先生が「秘仏展」開催準備のため、小浜の仏像を調査に見えた。そのとき注目されたのが、羽賀寺の十一面観音と多田寺の薬師如来で、前者は33年に1度ご開帳の秘仏だったのが、以後、公開されるようになった。後者、多田寺の薬師如来は、田舎風の顔立ちで「地方の駄仏」だと思われていたが、「顔から下」のシャープな衣文は神護寺の薬師如来に匹敵すると評価され、一躍、名をあげた。…なので、みなさんの中にも、うちの仏さまを評価してくれる方がいらっしゃらないかと思うのですが、というのが話のオチである。

■妙楽寺

 鎌倉時代初期建立の本堂は、若狭における最古の建造物。湿り気を含んだ桧皮葺が美しかった。本尊は、顔の左右の菩薩面をあわせて24面、大小あわせて実際に千本の手を持つ異相の観音さま。平安中期作。背後の別室に彩色塑像の二十八部衆が祀られているのを見て、ここ、むかし来たことがある!と20年以上前の記憶がよみがえった。ガイドさんの話でも、ここは「国宝めぐり」バスツアーの定番コースであったらしい。地蔵堂のお地蔵さん、薬師堂のお薬師さんもいいなあ。朱印所でみうらじゅんのサイン色紙を発見。


 
 以上でツアー終了。ガイドさんの話では、以前の「国宝めぐり」ツアーと違って、今回は、観光客の受け入れに慣れていないお寺さんも組み込んだので、「正直、九月中は大変でした」とのこと。ようやく慣れてきたところで、この企画が終わってしまうのは残念だが、「どうやら来年度も実施にむけて動き始めたようです」とおっしゃっていた。万々歳。来年もぜひまた来たいと思う。次回こそは小浜泊まりでお金を落とします。

(10/13写真追加)
コメント (2)
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